【50代“離婚”の決断】実際どうなの?「卒婚」という選択

離婚したいわけじゃない。でも残りの人生を自分の好きなように生きてみたい。そう考える女性にとって魅力的に映る“卒婚”。そのメリットを二人の専門家が紹介。

教えてくれた人

夫婦問題研究家 岡野あつこさん

夫婦問題研究家 岡野あつこさん

公認心理師。33年前に離婚相談室を設立、相談件数は3万人以上。離婚カウンセラー養成講座で後進育成。マル秘テクニックを交えた的確なアドバイスが好評。近著に『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)。
弁護士 後藤千絵さん

弁護士 後藤千絵さん

30歳を過ぎて一般企業から弁護士に。フェリーチェ法律事務所代表。家族の事案を得意とし、なかでも離婚案件は年間約300件の相談に乗っている。著書に『誰も教えてくれなかった「離婚」しないための「結婚」の基本』(KADOKAWA)ほか。

戸籍上は夫婦のまま自分の人生を自由に生きる

イラスト

独身でもない、離婚でもない。新しい夫婦のかたち、卒婚。イメージはなんとなくわかるけれど、そもそも卒婚の定義って?

「婚姻関係を保ったまま、それまでの夫婦関係を見直して、妻と夫がそれぞれ自由にお互いの道を歩いていく、という生活スタイルのこと。価値観が多様化する今、時代的にも注目されています」と後藤さん。

生活形態は、同居しながらお互いを干渉しない関係、完全な別居、週末だけ同居などさまざまだ。

「たとえ別居をしていても離婚を前提としていないのが卒婚。卒婚は、夫婦の人間関係が壊れていないことが条件で、悪い人ではないけれど一緒に生活するのがストレスという場合にフィットします。逆に、夫が生理的にダメ、許せない、というのであれば、離婚のほうがいい。卒婚は夫婦であることに変わりなく、互いに扶養義務があるので、将来の不安は少なくなります。孤独な老後は避けたいけれど、妻や母ではなく自分自身の人生を生きたい、と思う女性には、メリットが多そう。親や子供を悲しませることもなく、もとの生活に戻ることも簡単です。ただし、男性側が卒婚の概念をしっかり理解してくれることが重要。一緒に暮らしているなら、今までとは生活が変わることをしっかり説明しなければならないし、別居をする場合、かなり自由になるので、離婚の意思がないことを1年おきくらいに確認したほうがいいでしょう」(後藤さん)

また、離婚するつもりが、財産分与でもめたり子供の反対があったりしてスムーズに進まない場合、離婚回避として卒婚にシフトする手も。「夫側からすれば、財産を分けなくてすむし、老後も安心。別れるより卒婚のほうがマシ、とすんなり納得するかもしれません」(岡野さん)

卒婚のメリットって?

面倒な離婚手続きがいらない

離婚をするとなると役所に提出する離婚届以外にも、名義変更や年金、保険など細かい事務手続きがいろいろあり、時間と手間を要する。卒婚なら、別居する場合の郵便物転送くらいで事務手続きがいらない。

いざというときにお互いを頼れる

50代以降は、病気や怪我のリスクが増える。具合が悪い! 動けない! となったときに頼れるのはやっぱり配偶者。手術の同意や面会も基本的には法律上の配偶者に限られる。孤独になりがちな老後の安心材料にも。

世間体が保たれる

姓も変わらず、形式的には夫婦のままなので、長く結婚生活を維持している円満な家庭を思わせる。また冠婚葬祭などのシーンでは夫婦そろって列席でき世間体も保たれる。どちらかというと、夫側のメリットかも。

相続権も失わない

何年別居をしようと、夫に別のパートナーがいたとしても、夫が死亡した場合、夫の財産は戸籍上の配偶者が相続。また義父母の介護を無償でしていた場合などは、相続の際に特別寄与料の請求ができることも。

財産を分けなくていい

今ある現金ならいいけれど、居住中の夫名義の不動産ローンが残っている場合や、将来もらう退職金などの共有財産の計算はかなり複雑。別居であれば、財産分与ではなく取り決めた婚姻費用を毎月もらえばいい。

親や子を巻き込まない

夫婦間の問題なのに、関係のよかった義父母と疎遠になったり、子供が親権者を選んで姓を変える必要があったり、離婚は家族にも負の影響を与える。でも卒婚なら親や子との関係も変わらず負担もかけない。

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