韓ドラのプロが選ぶ!2023年上半期 韓国ドラマ大賞 ベスト10を発表!
動画配信サービスもより充実し、ますます盛り上がりをみせる韓国ドラマ。2023年上半期に日本で配信された韓国ドラマで一番面白かった作品は? 雑誌やラジオ、配信番組などのメディアで活躍する韓国ドラマウォッチャーのプロ5人が本音で選んだ作品、ベスト10をドドーンと紹介!
第1位「財閥家の末息子~Reborn Rich~」
ライター 中川薫
設定の圧倒的面白さに加え、人間離れしたソン・ジュンギの存在感に飲まれる。財閥家にいいように利用された挙句、ぼろ雑巾のように殺された会長の側近ユン・ヒョンウ(ソン・ジュンギ)が、なぜか1980年代に時代をさかのぼって、前会長チン・ヤンチョル(イ・ソンミン)の末息子の末息子(つまり末っ子孫)であるチン・ドジュン(ソン・ジュンギ)に乗り移り、自らの死の真相と財閥の乗っ取りを目論むという、時空を超えたサスペンス復讐劇。設定だけでも十分魅力的ですが、作品を輪をかけて面白くしているのは、時代設定とドジュンが財閥一族に仕掛けるパワーゲーム。ヒョンウは1980年代という激動の時代に、記憶を持ったままドジュンとしてリボーンしているため、まるで預言者のようにビジネスを成功させていくんです。褒美を選べと言われて二束三文の土地をねだったり(江南土地開発バブル)、前会長に飛行機の便を変えろと警告したり(大韓航空機爆破事件)、サッカーとタイアップすれば業績は回復するとして万年赤字部門の売却に待ったをかけたり(2002年ワールドカップ韓国ベスト4進出)して、周囲の信用と個人資産をどんどん増やし、財閥の跡取りたちの保有する株を“買い”、追い詰めていく。未来を知っているドジュンの圧勝かと思いきや、そこは財閥の創始者チン・ヤンチョル。天性の鋭い嗅覚でドジュンの一手を潰す。ゲームは欺き、欺かれ、まったく先が読めない。驚きの展開は最後まで続くので気が抜けません!
ライター/コラムニスト 渥美志保
みんな挙げるんだろうなあと思ったんですが、選ばざるを得ませんでした、めっちゃ面白いので。大学生を演じても全然平気のソン・ジュンギの奇跡のアラフォーぶり、彼の作品という観点ばかりがフィーチャーされてますが、本来は韓国の民主化からの歴史の中で成り上がった実業家のめっちゃエキサイティングな一代記ってところがあり、そりゃ韓国人は熱狂するよなって感じなんですが、エクラ世代こそ楽しめる!と思うのは、リボーンしたソン・ジュンギがほぼ同世代ってこと。江南バブルに大韓航空機事件、IMF危機からワールドカップ、NY同時多発テロに……とその裏側で動く金の世界は、「応答せよ」シリーズの実業界版って感じで、個人的にはものすごく血沸き肉踊りました。
ライター 山崎敦子
ソン・ジュンギの「ヴィンチェンツォ」以来の作品。財閥会社の汚れ仕事の部署で頭角を現していた叩き上げのジュンギが、財閥家の誰かに殺され、目覚めたら、時代を遡って1980年代のその財閥家の末息子に生まれ変わっていたという、時空超えミステリー。ドラマに登場する財閥家は、日本人の私たちも知る実際の韓国の財閥家がモデルだし、大統領も実名だし、韓国が目まぐるしく変わっていく時代設定なだけに、今の韓国を築いたその礎を紐解く面白さも。そして、百想芸術大賞の最優秀演技賞を受賞したイ・ソンミンが素晴らしすぎる。ソン・ジュンギは本当に作品選びが上手い。
ライター 小田香
どんどん見進めたくなるスピード感あふれる展開で、とにかく面白かった! この時代の韓国の出来事を知っていればより面白いかもしれないが、知らなくても十分楽しめる。主役だけでなく登場人物一人一人の思惑や心情が丁寧に描かれており、ドラマを重層的なものとしていた。アクの強い俳優たちの演技合戦も堪能できる。中でも、キム・ナムヒの声の良さを認識させられた。
■Leminoにて日本独占配信中
第2位「医師チャ・ジョンスク」
ライター 桂まり
専業主婦歴20年で病気をきっかけに自分と向き合うことになる主人公が、レジデント1年目の研修医となり奮闘する姿に共感。前のめりで応援したくなる! 不倫や子育て、淡い恋、友情、義母、家族……話題てんこ盛りでセリフがウィットに富んでいて、ベタなストーリーなのに全く飽きない。笑って、泣いて、これぞ韓国ドラマ。全員絶妙なキャスティングで役者がとにかく上手い。主演の実年齢53歳の韓国のマドンナ、オム・ジョンファと、70代という設定の彼女の母役のヤン・ミギョンの実年齢61歳というのにも驚き!! ヤン・ミギョンの出ている作品も好きなので。
ライター 山崎敦子
学生時代に予期せぬ妊娠から、医者になる夢を諦めて、貞淑な妻として生きてきた40代のヒロインが、とあることからもう一度、医者になるために奮戦する成長物語をコメディタッチで綴るヒューマンドラマ。韓国のマドンナと称されるヒロイン役のオム・ジョンファの安定のコメディエンヌぶりは言わずもがなですが、妻が生体肝移植をしなければ死ぬというのに自分がドナーになることを躊躇したり、長い間不倫していて外に子供まで作っていたり、なのに妻には優しい言葉一つかけずにいばり腐っているゲス野郎夫を演じたキム・ビョンチョルが絶品。ドラマを観ているとあんな嫌な夫はいない!とつい激昂してしまうのですが、それでいてなんか憎めないところもあって、だからよりドラマが複雑にぐんぐん面白くなっていく感じ。40代でレジデントとなるヒロインには、仕事的にも家族的にも様々な壁と難題が降りかかるのですが、それでも前を向いて頑張るオム・ジョンファの姿に、もはや同じ女性として自分を投影しながら応援せずにはいられなくなります。ちなみにオム・ジョンファの医者になる夢を応援するロイ・キムという医師役を演じたミン・ウヒョクはミュージカル俳優で、そのバリトンの歌声も素晴らしく、以来、追っかけ始めました(笑)
ライター 中川薫
爽快でユーモラスにアラフィー女性のセカンドキャリアの在り方を提示してくれる。二人の子を持つ専業主婦チャ・ジョンスク(オム・ジョンファ)。20年間、家族に尽くしてきた彼女は、医学部在学中の妊娠、出産のため、医師免許はあるけれど、医師の経験はゼロ。ある日、46歳で医師になるためのレジデント試験を受けるが……。不倫、隠し子、病、家族の不仲といった、韓国ドラマにありがちかつ泥沼になりそうなテーマが軸になっているのに、思わず笑ってしまう不思議な爽快感のある作品です。それはきっと、「夢を追うのに年齢は関係ない」というヒロインの強さ、そして、人はどんなに呆れるような現実に直面しても、最後には笑える生き物だということを思い知らされる展開が眩しく思えるからかも。子育てがひと段落した人、今のキャリアをリタイアする人、スキルアップを目指したい人など、自分の“今後”を思い描く素敵な材料になるかもしれません。
■Netflixシリーズ「医師チャ・ジョンスク」独占配信中
第3位「良くも、悪くも、だって母親」
ライター 山崎敦子
母と息子の物語、復讐、ミステリー、ロマンス、人々の絆。それぞれのモチーフがバランスよく組み込まれた笑えて泣ける良質なヒューマン復讐劇。ナップン(悪い)母役のラ・ミランさんの演技に魅せられるのはもちろんですが、主演の息子を演じたイ・ドヒョン、その幼馴染役のアン・ウンジン(「賢い医師生活」)、そして、田舎町の隣人たち、さらに、敵役に至るまで、全てが上手い、上手すぎる。ラストは号泣です。
ライター 中川薫
貧困と無知という負の連鎖を断ち切るために“悪い母”という苦渋の選択をしたヨンスン(ラ・ミラン)と、母親の思いを背負って有能な検事になった息子ガンホ(イ・ドヒョン)。悲しい過去と現在を背負った二人が、リセットされた母子の絆を結び直し、新たな幸せを見つけていくヒーリングコメディ。実はそれだけではなく、ヒューマン、ミステリー、ロマンスや法廷といった様々な要素がギュッと詰まった本作は、序盤から母子の演技合戦に魅せられたら最後、怒涛のジェットコースター展開に引き込まれ、最終回まで喜怒哀楽の感情フルスロットル! 特に一話と最終回は爆泣きすること請け合いです。村のアジュマ(おばさん)&アジョシ(おじさん)たちは暑苦しいほどにいとおしいし、ガンホと幼馴染みであるミジュ(アン・ウンジン)の悲喜こもごもな感情を乗せた演技など、登場人物全員が良い仕事をしているんですが、中でも主演母子の演技は絶品中の絶品。実力派女優のラ・ミラン演じる凄みの効いた“オンマ”の懺悔と成長は涙なくしてみられないし、愛情ゆえの厳しい躾に耐える“一人息子”の忍耐と愛情深さを、「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」で大ブレイクしたイ・ドヒョンがその眼差しで見事に表現。特にイ・ドヒョンの無表情と無邪気な笑顔のギャップから、複雑に絡み合う母子の愛情と思いの深さが伝わってきました。子を思う親と親を思う子の愛情。ここで描かれる愛情に関しては賛否両論でしょうが、母子の愛情の本質が胸に刺さることでしょう。
■Netflixシリーズ「良くも、悪くも、だって母親」独占配信中
第4位「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」
ライター 小田香
チョン・ドヨンとチョン・ギョンホの意外に思える組み合わせがよく似合っていて、ラブストーリーは主役カップルに好感が持てることが一番大事だと再認識。教育問題やサスペンス要素などを盛り込んでいるが、「ああ、私の幽霊様」の監督&脚本家コンビだけあり、あくまでラブストーリーに徹しているのがいい。除隊後復帰作となったシン・ジェハや、若手のノ・ユンソ、イ・チェミン、イ・ミンジェらの存在も光っていた。
ライター 桂まり
主人公がお惣菜屋さんを営んでいるところからすでに好き。衣装やセットもカラフルで楽しく、そしてミステリー、恋、家族、受験戦争、成果主義など社会派な要素もあって。チョン・ドヨン、チョン・ギョンホなどキャストが最高なのは言わずもがな、新人賞を受賞した娘役のノ・ユンソにも注目。化粧品のCMモデルでデビュー、なんと梨花女子大学造形芸術学部西洋画専攻を卒業したばかりの才女!
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第5位「弱いヒーロー Class1」/「愛だと言って」
「弱いヒーロー Class1」
ライター/コラムニスト 渥美志保
学校のいじめを発端に、無力な3人の高校生たちの、彼らなりのサバイバルを描いた作品なんですけど、その背景にはネグレクト、貧困、虐待など、弱者を救わない大人の社会の歪みとかが見えてきて、彼らが強いられる苦い青春がかわいそうでかわいそうで、ラストは号泣しかない。親世代こそ見るべき作品。20代前半で最も有望な俳優チェ・ヒョヌク(『二十五、二十一』)とホン・ギョン(『悪鬼』)、さらに『未成年裁判』のイ・ヨン、『還魂』のシン・スンホなどなど、もう若手の俳優がみんなうますぎ。
■Huluプレミア「弱いヒーロー Class1」独占配信中
「愛だと言って」
ライター 山崎敦子
ここ数年で観たヒューマンロマンスの中でも確実にベスト3入り。不器用だけど、自分に誠実で、本当の優しさを持つ2人の愛が切なく、でも、見るほどになぜかジンジンと癒される傑作。物語はヒロイン(イ・ソンギョン)の復讐から始まるロマンスだけど、そのはずが、いつの間にか愛に変わっていく過程も丁寧に描かれていて、その表情、その呼吸の深さ、心臓の鼓動まで微妙に変化していく様が伝わるような演技も演出も絶品です。ヒロインに愛される主人公キム・ヨングァンの切ない孤独な存在感もチェゴ(最高)。
■ディズニープラス スターにて独占配信中
第7位「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」
ライター/コラムニスト 渥美志保
今年の上半期はこの作品に始まり、この作品に終わった感。「オールイン」に始まり「秋の童話」「その冬、風が吹く」など、ソン・ヘギョは暗い過去と不幸な境遇を背負ってなんぼということが証明された作品。悪役たちが「私/俺こそ最悪の悪党なんだよ!」って感じで嬉々として悪党を演じてたのがすごくよかった。ラストのイム・ジヨンの“刑務所のお天気お姉さん”なんて韓国ドラマ史に残ると思う。
■Netflixシリーズ「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」独占配信中
第8位「愛と、利と」/「離婚弁護士シン・ソンハン」
「愛と、利と」
ライター 小田香
リアルな職場恋愛の行方が描かれた、最近では珍しい直球ラブストーリーだが、純文学小説が原作と聞けば納得。直球ゆえにむしろ新鮮で、誰も悪くないにもかかわらず、ちょっとしたことでこじれていく4人の男女の恋模様に時にはイライラさせられつつも、ついつい引き込まれてしまった。ユ・ヨンソクのあまりに普通な感じに感服させられっぱなし。ムン・ガヨンもこういう役ができるのか、と見直した。
■Netflixシリーズ「愛と、利と」独占配信中
「離婚弁護士シン・ソンハン」
ライター 桂まり
ともすると暗くなる話も、どこかクスッと笑えるところを挟んでいて、ああいいなあ、と思わせてくれた作品。とにかくミュージカルスターたち、チョ・スンウ、チョン・ムンソンがうますぎる。感心したり、泣いたり、笑ったりの連続。キム・ソンギュンもいい。そして名作「朱蒙(チュモン)」のソソノ役のハン・ヘジン!
■Netflixシリーズ「離婚弁護士シン・ソンハン」独占配信中
第10位「カジノ」/「その恋、断固お断りします」
「カジノ」
ライター 山崎敦子
チェ・ミンシクの26年ぶりのドラマということだけでも見る価値あり。東アジアでカジノ王として上り詰めた男の波瀾万丈の人生を描くドラマなのだけど、その壮絶さとは裏腹な軽やかな音楽に乗せたウィットに飛びまくった演出が洒脱で、一気に観られます。マジでめちゃくちゃセンスいい。裏社会ものですが、チェ・ミンシク演じる主人公が飄々として熱い、人間臭さに満ちたチャーミングなキャラというのもミソ。5話からは待ってましたの俳優ソン・ソック登場なのですが、これまでとは、またまた違う、ピュアな正義感を持ったキャラで、これがめちゃ可愛い。この、ソン・ソックは見なきゃ損。
■ディズニープラス スターで独占配信中
「その恋、断固お断りします」
ライター 山崎敦子
男に意味なく一歩譲られなければならない理不尽が許せない女と、女は弱いふりしながらもみんなしたたかだと思い込んでいる男の、はちゃめちゃのラブコメではありますが、キャラの振り切り方が半端なく、無条件に楽しめます。特に、ヒロインのヨ・ミラン(役名)。今までもアクションものが多く、日本での知名度激低のキム・オクビンが演じているのですが、男に負けないために身につけた格闘技はプロ級の腕前で、弁護士なのについ手が先に出ちゃうとか、恋はワンナイトに限るという豪快さとか、もう最高です。そんなミランの恋のお相手となるのはトップスター俳優というキャラですが、演じているユ・テオはどちらかというと濃い顔系。私的にはどちらかといえば、苦手なタイプなのに、実は優しくて誠実という隠れキャラがどんどん出てくるにつれ、すっかり沼落ち。何も考えずに、最初から最後まで爆笑&大人の胸キュンを確約できる傑作。
■Netflixシリーズ「その恋、断固お断りします」独占配信中
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