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文章家 内田也哉子《後編》自分自身のために、誰かの役に立ちたい【エクラな美学 第7回】
女優の樹木希林さんとロックミュージシャンの内田裕也さんという異彩を放つ両親のもとに生まれた内田也哉子さん。也哉子さんの中にしっかりと根を下ろしていたふたりの美意識の種は、芽吹き、花を咲かせ、そして今、どんな実りをもたらしているのだろう。前中後編の後編では、夫婦や家族の在り方について伺った。
文章家 内田也哉子《中編》心の空白を満たすためにしたこととは?【エクラな美学 第7回】
心の空白を満たそうと一対一の対話をエッセーに

内田裕也さんからも、希林さんとはまた違う色合いの価値観を授かった。
「裕也は、大事な人と出会うときは常に精神的に対等で、一対一でありたいという人でした。だから何かのついでのように、“裕也さん、ちょうどよかった、こちらのかたを紹介しますよ”なんていうことがすごく嫌いでした。たとえ互いに多くは語らなくても研ぎすまされた一点でつながりたいと考えていたようです。例えばジョン・レノンと出会ったときのことも、自分だけのキラキラしたモーメントとして大事にしていましたね」
その母と父を立て続けに喪(うしな)った也哉子さんは、ぽっかりとあいた心の空白を、人と出会い対話をすることで満たしたいと思った。谷川俊太郎、小泉今日子、坂本龍一、ヤマザキマリ、マツコ・デラックスほか15人に会いにいき、その対話をもとにつづったエッセーが、’23年12月『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』という一冊の本にまとまった。同行者を伴わずひとりで出かけていき、父が好んだように也哉子さんも一対一の対話にこだわった。
「お話をうかがった場所も方法も相手によってさまざまでした。母の家で、あるいはカフェやお相手のアトリエなどで。坂本龍一さんとは電話でした。彼の息遣いをひとりじめしてしまい、なんて贅沢なんだろうと。シャルロット・ゲンズブールさんとは、パリの居間にPCを置いて“ちょっとコーヒーいれてくるわ”なんていいながら」
文章のスタイルもさまざまだ。エッセーだったり対談形式だったり。
「なるべく自然に出会ってお話を聞いて、そこで立ち上(のぼ)ってきたものを、できるだけそのまま持ち帰って書くようにしていました。文章のスタイルもあえて決め込まず。そのほうが対話していた時間がくっきりと浮き上がってくる気がしたんです」
読み終えてみると、一本のロードムービーを見たあとのように、胸にずしんとくる寂しさと不思議な清涼感に包まれた。すべて書き終えてみて也哉子さんの“BLANK”は埋まったのだろうか。
「ともすれば日常の中に隠されていく死というものに向き合えたことで生がより鮮やかになったし、これから先歩いていくための希望をたくさんいただきました。それに普通なら親の死は一人ひとりがそっと心の中で噛み締めていくものなのに、こういう形で多くの人に読まれ共有してもらえるのは本当にかけがえのないことだなと。今は、空っぽのすがすがしさとともに、この先も続くであろう旅に思いを馳せているんです」
「たったひとりで出かけていき、一対一で対話することにこだわりました」

(後編へつづく)

文章家 内田也哉子
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文章家 内田也哉子《前編》母亡き今、思うこと【エクラな美学 第7回】
女優の樹木希林さんとロックミュージシャンの内田裕也さんという異彩を放つ両親のもとに生まれた内田也哉子さん。也哉子さんの中にしっかりと根を下ろしていたふたりの美意識の種は、芽吹き、花を咲かせ、そして今、どんな実りをもたらしているのだろう。前中後編の前編では、幼少期の母娘の思い出について伺った。
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