【江國香織さんインタビュー】本について書くときは恥ずかしいくらい正直になる。新鮮な発見でした

エクラ読者と同世代でファンも多い江國香織さん。自身の読書体験を綴った、最新エッセー集『読んでばっか』を刊行。江國さんにとって「本を読むこと」「本について書くこと」とは?
江國香織さん

「熱のあるときにしゃぶる氷みたいな本が読みたい、という人(中略)は、さらにもっと、もうどうしたってこの本を読むべきだと思う」。こんな魅力的な言葉で一冊まるごと本について語られているのが江國香織さんの最新エッセー集『読んでばっか』。童話、小説、写真集など多彩な本が取り上げられているが、それを既読でも未読でも興味をかきたてられるのは、江國さんの着眼点に納得させられるからかもしれない。

「今までに書いた、本にまつわるエッセーをまとめたものですが、読み返して感じたのは“本について書くときは正直になっちゃうんだな”ということ。“この間こんなおもしろい本を読んで……”と話しはじめるといつも熱くなるのですが、ここにはそんな“なんとかして思いを伝えたい”という気持ちが赤裸々に出ている。ちょっと恥ずかしくなるくらいです。読者を意識して“続きはどうなるのと思われたい”と考えながら書くことも多かったですね」

“快適で安心で幸福な居場所を提供していただいた”という石井桃子さんの絵本や翻訳、“特別な中毒性がある”という庄野潤三さんの文学などたくさんの本を紹介しているが、複数取り上げているのが海外ミステリー。

「トリックがメインの小説がどちらかというと苦手だったので、読みはじめたのは20代後半。ただそのころから登場人物の私生活を重視した海外ミステリーが増えたんです。謎解きや犯人捜しだけでなく、刑事や被害者が家族や恋人と過ごす時間も読ませどころになっているような。彼らは必死に犯人を追ったり悲惨な目にあったりしますが、個々の日常も描かれることでそのかけがえのなさがいっそうきわだつ。普通の小説に近い感じがして、のめり込みました」

銅版画家・山本容子さんによる表紙も鮮やかで印象的。江國さんの小説『デューク』の犬や、何度も読み返したという『プラテーロとわたし』のロバ、そして裸で本を読む女性も描かれていて……。

「最初にこの絵を見たときはびっくりしました。お風呂で本を読むのが私の習慣だから!?(笑)」

エクラ読者と同世代で長年のファンも多い江國さん。最後に50代からの読書についてうかがうと、こんな答えが返ってきた。

「例えば私が今からバレリーナになることはないけれど、本を読めばそういう人生も味わえる。“人は1回しか生きられないのだからせめて本でいろいろな人生を”と思っています。それに本の中でなら冒険しても安心。怖がりの私でもギャングの抗争を目撃できるんです。本をたくさん読むと“ものの考え方はひとつではないし正解もない”とわかります。それはとても大切なことではないでしょうか」

江國香織

江國香織

えくに かおり●’64年、東京都生まれ。’92年『きらきらひかる』で紫式部文学賞、’04年『号泣する準備はできていた』で直木賞、’10年『真昼なのに昏い部屋』で中央公論文学賞、’15年『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で谷崎潤一郎賞など数々の文学賞を受賞。ほかにも『彼女たちの場合は』『川のある街』など著書多数。童話や詩の執筆、翻訳などでも活躍。

『読んでばっか』

『読んでばっか』

親交のあった瀬戸内寂聴さんとの思い出、金原ひとみさんの“勇敢さ”、ジョン・アーヴィング作品の濃密なおもしろさなど、独特の感性で作家の個性や本の読みどころに迫ったエッセー集。巻頭の江國さんの読書に関するアンケートも興味深い。筑摩書房 ¥1,980

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