50代の胸に響く!「心を動かす、言葉の力」第一線で活躍するアラフィー女性達の心を整え、前向きにしてくれた言葉とは?

経験豊富なアラフィーは"言葉"とどう対峙し、どんな言葉に心を動かされたのか。フェイクニュースや生成AIまで登場し玉石混淆な情報が飛び交うこの時代に、大切にしたい言葉のヒントがここに。多方面で活躍するアラフィー女性の君島十和子さん、大草直子さん、青木さやかさん、上野水香さんなど12人に心を動かされた言葉を聞きました。

 

ジェーン・スー×三浦しをん対談

言葉は「魂を養う」ためにある。ラジオを聞けば、本のページをめくればあふれる、言葉、言葉、言葉。その第一線で日々、格闘するふたりにとって、本当に大事な言葉とは?
ジェーン・スー

ジェーン・スー

じぇーん すー●’73年、東京都生まれ。コラムニスト、ラジオパーソナリティ、作詞家として活動。最近の著書に『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』(文藝春秋)、『おつかれ、今日の私。』(マガジンハウス)など。ポッドキャスト番組『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』『となりの雑談』も好評。

誰もが「いいよね」と感じる最大公約数の言葉より、自分だけに刺さるひと言との出会いを大事に(ジェーン・スー)

三浦しをん

三浦しをん

みうら しをん●’76年、東京都生まれ。’00年『格闘する者に○』でデビュー。『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞受賞。『舟を編む』『風が強く吹いている』など映像化、舞台化作も。最新刊は『墨のゆらめき』(新潮社)、エッセー集『しんがりで寝ています』(集英社)。

誰が発したのか、どんな状況で書かれたものなのか……、言葉には背景があることも忘れずにいたい(三浦しをん)

自分らしくいればいい。友の言葉に今も感謝

ジェーン・スー(以下・スー) 言葉を扱う仕事をしているので、もちろん人の言葉に支えられたことも、背中を押された経験もあるんですが、いわゆる偉人の言葉みたいなものは、あんまりピンとこない……かなぁ。だから、座右の銘に関しては、いつも「ありません」って答えています。

三浦しをん(以下・三浦) 私も。どうしてもといわれたら〈ナスがママならキューリはパパだ〉※1と答えてます。アニメの『平成 天才バカボン』の歌詞で、嘉門達夫(現・嘉門タツオ)さんの作。いい意味でくだらなくて、好きだなって。


スー アッハハ、人を食ってていい! 自分が影響を受けた言葉というと、最初に入った会社の友だちにいわれたことが印象に残ってますね。私、事務能力がまったくないので、完徹して必死にやってた経費精算の数字が、毎回違ってたんですよ。ついには経理の人から「何が書いてあるかわかりません」って戻されたり。

三浦 ひゃー。

スー そういうことばかりで落ち込んでたときに、友だちに「普通のことは普通の人にやらせておけばいいんだよ」といわれて……劣等感でいっぱいの私を励ますためにあえて乱暴ないい方をしてくれたんですけど、すごく救われました。思えば子供のころから、いわゆる「女の子らしいこと」が全然できなかったんですよね。気くばりとか控えめとか、学生時代はサラダの取り分け的なことに気が回らなかったりとか。

三浦 うんうん。

スー 大人になったらなったで、声は大きいし自己主張もするけど、相変わらず女性が得意な仕事とされることが全然できない。それがコンプレックスだったり、自分の可能性を見限る原因になったりしてたんですけど、そうか、餅は餅屋で、苦手なことを無理してできるようになる必要はなくて、私は私ができることを探せばいいんだって。あの言葉は、かなり自分の背骨をまっすぐにしてくれたように思います。

三浦 偶然だけど、私の場合もすごく似てて……。映画の勉強をしたくて大学の文学部に入ってたころ、このままだと就職もできないだろうから何か資格でも、と思って、教職に必要な授業をとろうとしたんですよ。そうしたら女友だちが「そんなのとって、どうすんの? あんた先生とか絶対向いてないし、今、自分がやりたいことに時間割いたほうがよくない? もしどこにも就職できなかったら私が食わせてあげるから」って。

スー すごい!


三浦 でしょう? 自分が好きなこと、やりたいことをやったほうが絶対人生楽しいし、それでうまくいかなくてのたれ死んでもいいじゃん、何を恐れることがあったんだって、すごく腑に落ちたんですよね。以来、そういうモットーで生きてます。

スー お互い、いい友だちがいてよかったですね。その言葉をいった本人がまったく覚えていないというのがまた、あるあるなんですけど。

三浦 アハハ。私はその友だちとは疎遠になっちゃったけど、今でもその言葉はありがたかったなと思う。そもそも私、人の話をあんまり聞いていないし、記憶力もすごく悪いから、自分がいったことも聞いた言葉もほとんど忘れてるんですけどね(笑)。

※1 嘉門達夫作詞・作曲『その日は朝から夜だった』より

ジェーン・スー×三浦しをん対談

誰もが求める「正解」をあえていわない勇気

スー ふだん、ラジオで相談にお答えしているとき、「言葉をください」といわれることが多いんですが、「〜についてどう思いますか?」という質問に関しては、自分の意見はいうけど、「背中を押してほしい」「活を入れて」というものには、あえて答えないようにしてるんです。

三浦 それって、実はすごくむずかしいことですよね。誰が何をいってほしいか、どんな回答を求めているか、なんとなく見えるじゃないですか。

スー リスナーの最大公約数が喜ぶことをいったり、聞いている人がスカッとするように怒ったりしておけば、一気に私の人気は上がると思う。でもそれって、考えることの代行運転をしているだけなので……。その人が自分で考えるための潤滑油になるのであれば言葉はつくしますけど、私のいったことが誰かの思考停止につながるのはいやなんです。

三浦 そう思って実行しているスーさんは非常に誠実だし、優しいと思いますね。相手が求めていない言葉をいうのって、嫌われる危険性もあるし、勇気がいるじゃないですか。私なんて、本当に身近な人以外には、相手が求めている言葉を調子よくペロペロいえる派ですよ? だから、SNSもいっさいやらないし。まわりの人には、そういう人間だと織り込んだうえで付き合ってほしいです(笑)。

スー アハハ。SNSと言葉でいうと、以前はX(旧Twitter)に作家やアーティストの名言とかがよく流れてたじゃないですか。Instagramにも同じようなものがあって、それを見ていると、多くの人が「なるほど」と思えるひと言を求めているんだなぁと感じます。

三浦 短いフレーズにピンとくるのは、感受性がみずみずしいままだともいえますよね。

スー ただ、「すごく響いた」「グサッときた」と思える言葉は、そのときの自分との相性が前提としてあるはずなので、どんな状況のときにも刺さる言葉っていうのは、実はあまりないんじゃないかな。

三浦 そうですね。そして、それがどういうシチュエーションで発せられた言葉なのか、どんな内容の本からの引用なのか、そこまで知ったうえでの「なるほど」ならありだけど、全部すっ飛ばして鵜(う)のみにするのはちょっと危険かも。

スー 雑談のプロ・桜林直子さんとやっているポッドキャスト番組『となりの雑談』の中で、最近、ポン!と膝を打った言葉があったんですが、それは「自分の人生を、他人からされたことで定義している人がいる」※2というもので。

三浦 ありますね、そういうこと。

スー 「あの人は優しくしてくれた」「あの人にいやなことをされた」と、自分の輪郭が全部、人からされたことでできている。それは、言葉にもいえることなんじゃないかと思うんです。ある言葉を信じすぎると、結局は誰かの言葉で生きることになってしまう。「いいよね」とある程度の人数が合意できる言葉があるとしても、それは最大公約数なだけかもしれないし、だったらそうではない、自分だけに刺さる言葉に出会えることのほうが、私には大事だなぁと。

※2 ジェーン・スー×桜林直子『となりの雑談』(TBSラジオポッドキャスト)’24年5月21日配信EP.71「反応で生きること」より

言葉に触れ、魂を豊かに。私たちはそうして生きている

三浦 好きな言葉でひとつ思い浮かんだのが、杉本亜未さんのマンガ『独裁者グラナダ』。その中に登場する人物の台詞に〈魂を養うこと/それこそ人間にとって一番大切なことだ〉というのがあるんです。ある創作活動をしている人物が、生きる喜びと苦しみについて語る台詞なんですが、作り手だけでなく、創作物を味わうのが好きな人もきっと同じように魂を養っているんだと思うんですよね。小説やマンガ、映画が好きな自分をあえて言語化するなら「魂の養いヲタ」だし。

スー そうですね。言葉に触れて魂をふくよかにしていく、それこそが幸せで、そのために生きているといっても過言ではないと思う。

三浦 うん。そのことだけは見失わないようにしたいなと思ってます。

※ 杉本亜未作『独裁者グラナダ』新装版(ナンバーナイン)より

【ジェーン・スー×三浦しをん対談】言葉は「魂を養う」ためにある

スー 自分の指針になっている言葉では、もうひとつ……。この間、やっぱりラジオの相談コーナーで、相手に注いだ愛情に見返りがないことを悩む人に答えていたときに「愛情なんて、くれてやれ」っていう言葉が口から出たんですよ。いった自分でも、それは本当にそうだなと。

三浦 カッコいいじゃないですか! 愛情って、本来タダなんだし。

スー ね。それを回収しようとしたり、どっちの愛情の質が高い低いと比べようとするのはあさましいんだよと……。でも、自分で自分の言葉に元気づけられるって、自己発電がすぎるだろって気もしますけど(笑)。

三浦 フフフ。すごく愛しているから相手も私を愛してくれるといいなという期待を誰かにもてて、それをあきらめていないというのも、また、愛なんでしょうけどね。

【ジェーン・スー×三浦しをん対談-】言葉は「魂を養う」ためにある

スー 愛といえば、うちの母が亡くなる前に、なぜか私にじゃなく私の友だちに託した言葉があって。それが、「結婚は、その人を愛した記憶とお金があれば続く」。

三浦 確かに! 激烈な愛情が何十年も続くわけはないですよね。お金も、共同生活には大事だし。


スー そんなの私にいってよって感じですけど、この年齢になると、どれだけ愛されたかよりも、どれだけ好きだったかのほうが大事なんだろうなと思いますね。どれだけ愛されたかで自分を測る人もいるでしょうけれども、私はそっちではないので……。もう蛇口全開で、流れるプールみたいに、愛をジャーッ!!と。

三浦 激しすぎる(笑)。


スー 愛は言葉じゃなくて、行動ですよ。口ではなんとでもいえる……って、言葉の特集でいいにくいんですが(笑)。とにかく、言葉ってすごく強いものなので、取り扱いも対峙の仕方も要注意。「大事なものだけど信じすぎることなかれ」で、あとは三浦さんのように忘却することですね。

三浦 うん。私の場合、そもそも聞いていないし(笑)。

スー アハハ! いつか『聞かない力』っていう本、出しましょう。

自分を変えてくれた言葉、自分を支える言葉

君島十和子さん、大草直子さん、青木さやかさん、上野水香さんなど12人聞きました!

さまざまな経験を重ね、多方面で活躍するエクラ世代の女性たち。起伏に富んだ人生を歩み、これからも前に進んでいく彼女たちは、自分を変えてくれた言葉、自分を支える言葉を胸に秘めている。

「今を生きる」バレエダンサー・上野水香さんほか3名の心動かされた言葉

君島十和子さんの心動かされた言葉

「今、何ができるか」だけを考える

この言葉は、郵便不正事件で無実の罪に問われながら、虚偽の調書にサインをせずに164日間勾留され、それに耐えぬいて無罪を獲得した元厚生労働省の官僚・村木厚子さんが執筆した『あきらめない』(日経ビジネス人文庫)という本にありました。49歳のときにこの本を読んだのですが、そのころの私は、仕事と家庭の両立でパニック寸前になることがあり、どちらも中途半端になっているようなジレンマも抱えていました。そんなときにこの言葉に出会ったのです。それからの私は、やらなければならないことに優先順位をつけてやれるようになったのでストレスが減り、自己肯定感も上がりました。私は素朴な言葉が好きです。日本語の表現力をもっと勉強して、磨きたいと思っています。

 FTC クリエイティブ ディレクター、美容家 君島十和子

FTC クリエイティブ ディレクター、美容家 君島十和子

’66年、東京都生まれ。雑誌専属モデルや女優として活躍後、結婚を機に芸能界を引退。その後、美容への意識の高さに注目が集まるように。ふたりの娘の母。最新作は『アラ還十和子』(講談社)。

大草直子さんの心動かされた言葉

自由に楽しく仕事したほうが、あなたの可能性を発揮できる

シングルマザーだった30歳のとき、フリーランスを続けていくか、会社に属するか迷っていました。ふと、そう漏らしたときに、女性誌の編集長が少し考えてから、「大草さんは、フリーのほうが向いている」と、この言葉をかけてくださいました。その瞬間に私の心は決まり、自分の責任で、自由な翼を手にがんばっていこうと決意を固めました。あのときの言葉がなかったら、今の私はいないと思います。

 

言葉には、「視覚から入る言葉」「音声での言葉」があり、それぞれとらえ方が異なり、よさがあります。日記を書く、交換日記をする、軽井沢に住む祖父と文通をする、本や雑誌を読んだりするのは視覚から、映画を見る、好きな友だちとおしゃべりしたりするのは音声から。自分を見つめたり、コミュニケーションをとったり、知識や世界を知ったり、励まされたりするのは、いつもそうした“言葉”でした。不思議とずっと、覚えている。感じ方も、そのつど違う。そして、時にそっと、記憶の引き出しから取り出すのが、とても好きです。

『AMARC』主宰、スタイリスト 大草直子

『AMARC』主宰、スタイリスト 大草直子

’72年、東京都生まれ。現ハースト婦人画報社へ入社し、雑誌『ヴァンテーヌ』の編集に携わったのち、独立。’19年に『AMARC』を立ち上げ。10月、更年期やおしゃれ、美容についてつづった新著を発売予定。

青木さやかさんの心動かされた言葉

嘘をつかない

悪口をいわない

優しい顔つきをする

悪い態度をとらない

ふてくされない

ていねいな言葉遣いをする

悪い感情を表に出さない

約束を守る

動物愛護の活動で知り合った、今は亡き友人が教えてくれた「八道」です。6年前に自分が病気にかかり、親が亡くなってとても苦しかった。そのときに教わったのですが、初めて聞いたときには八道はとてもできる気がしませんでした。3年たってスラスラといえるようになり、5年たつと少しずつ自分のものになってきた。それに伴って、自分が信頼できる自分になってきた気がする。言葉で傷つき、傷つけてきた。そのため、それを怖がって発言を躊躇するようになりました。しかし、この「八道」を身につけ、自分も他人も同様に大切にする強固な軸を自分のものにできれば、誰かの言葉で傷つくことも減り、口をつく言葉は堂々としたものになる。そう願っています。

タレント、俳優、エッセイスト 青木さやか

タレント、俳優、エッセイスト 青木さやか

’73年、愛知県生まれ。’96年に芸人デビュー。出産、離婚、パニック障害、2度のがん、母の看取りなどを経験。その場所で会いたい人をゲストに招き、繰り広げるトークショー「with青木さやか」を各地で開催中。

上野水香さんの心動かされた言葉

今を生きる

バレエでは、目の前にあるものが舞台であったりします。それに集中するためのモチベーションとして、自分の中で自然に生まれた言葉です。先のことが不安で心配になったり、過去のことを悔やみそうになったりするとき、自分ではコントロール不可能なことを考えるより、今を大事にすることに気持ちをもっていったほうがいい未来をつくれるはず。だから、自分の中でこの言葉を常に言い聞かせています。「言霊」という言葉のように、「いえば現実になる」といわれていますが、言葉を発するのはあくまで外側の部分であり、自分の中で何を信じるかということが、物事を実現にもっていくのだと思います。言葉はコミュニケーションツールとしてなくてはならず、言葉をもつのは人の特権ですが、大切なのは、その奥にある思い。言葉は時に人を振りまわすこともあるだけに、発する言葉は大切に扱うべきだと思っています。

バレエダンサー 上野水香

バレエダンサー 上野水香

神奈川県鎌倉市生まれ。’93年、15歳でローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップ賞を受賞。’23年4月、東京バレエ団 ゲスト・プリンシパルに就任。同年、紫綬褒章を受章。代表作は「ボレロ」。写真/筒井義昭

羽田美智子さんの心動かされた言葉

自分の生きる道を愛しなさい。そして愛することを自分の人生に

「自分のすること、やらなくてはならないことがあるとすれば、それをどうしたら愛せるか心をつくせ。そして愛する人や物、事を自分の人生に取り入れていけばいい」という恩師の言葉で、私も素直にそうしようと思いました。私は、最初に放つ言葉がその後の成り行きを変えると思っています。「動物の中で言葉をもつのは人間だけ」と考えると、楽しく言葉を使いたい。美辞麗句ではなく、心から出てくる言葉には人の心を動かす力があると感じずにはいられません。

俳優 羽田美智子

俳優 羽田美智子

’68年、茨城県生まれ。映画『RAMPO』で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。多くの映画やドラマに出演。「本当にイイ!」と思ったものだけを紹介、販売するwebセレクトショップ『羽田甚商店』の店主も務める。

内澤旬子さんの心動かされた言葉

座って半畳、寝て一畳

仏僧の言葉と記憶していましたが、諸説あるようです。これを、贅沢を戒める言葉として使われるかたも多いようですが、私は不安に陥った自分を落ち着かせるときに唱えるようにしています。悩んでいることがたいしたことではないと思えてくるからです。言葉の力は、とても大きいです。同じ行為についてでも、名づけ方によって傷つく人を生んだりしますし、言葉を被せることによって大きな気づきを得られる場合もあります。そして時代とともに変わっていくものでもあるので、人生の後半期にあっても「これまでの常識」にとらわれずに常に学んでいきたいと思っています。

 文筆家、イラストレーター 内澤旬子

文筆家、イラストレーター 内澤旬子

’67年、神奈川県生まれ。『世界屠畜紀行』(角川文庫)など、リアルな体験と綿密なイラストを生かした作品を発表。’14年より小豆島に移住し、ヤギと暮らす。最新作は『私はヤギになりたい ヤギ飼い十二カ月』(山と渓谷社)。

久保純子さんの心動かされた言葉

なせば成る、なさねば成らぬ、何事も

これは、母がよくいっていた言葉です。母は“行動を起こさなければ、何も始まらない。当たって砕けろ!”精神を地で行く人。アナウンサーから中高の英語の教師になり、英語学校を建て、生徒たちを海外のホームステイに連れていくなど、アクティブに行動してきました。仕事以外でも、60歳を過ぎてからダイビング、バタフライ(水泳)、太極拳、スキーなど、あらゆることに挑戦。母は常に、「なんでも挑戦したほうがいい、やり続けることが大事」と話しています。

 

言葉には、不思議な力が宿っていると思います。いい言葉を発していくと、そのとおりいい道が開けていく。そして、自然と心も穏やかになっていく。私も常にポジティブな言葉を発していこうと心がけています。

フリーアナウンサー 久保純子

フリーアナウンサー 久保純子

’72年、東京都生まれ。10代はイギリス、アメリカで過ごす。NHKを経てフリーアナウンサーに。現在はニューヨーク在住。’22年、念願のモンテッソーリの幼稚園教諭に。子供たちとの日々を楽しむ。

辛酸なめ子さんの心動かされた言葉

やればできる

音大附属の幼稚園に通っていて、楽器がへたでコンプレックスに悩んでいたところ、見かねた園長先生にこの言葉をかけられました。昭和っぽい言葉ですし、それで急に楽器がうまくなったとかはないのですが、ポジティブな言霊を植えつけられた気がします。ちなみに木魚だけは相性がよかったみたいで、一生懸命叩いていたらほめられました。言葉には、ひとつひとつになんらかの価値が宿っているように感じます。10代20代は「お金がない」が口癖で、それでお金がない状況を引き寄せていたように思います。私は自分はダメだと思いがちなので、表面的にも「自分は大丈夫」とポジティブな言霊をかけて自分を励ましています。

漫画家、コラムニスト 辛酸なめ子

漫画家、コラムニスト 辛酸なめ子

’74年、東京都生まれ埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。恋愛や皇室など幅広いテーマで執筆。最新作は『川柳で追体験 江戸時代 女の一生』(三樹書房)。

松本千登世さんの心動かされた言葉

よくできました、100点満点。でも……、つまんない

友人のスタイリスト・中里真理子さんが師匠にいわれた言葉で、私も心に響いたものです。彼女はいわれたとおり、忠実に行ったら、「200点か、20点か、どっちかにして、私を驚かせてほしいの」といわれたそう。大人になればなるほど、誰も傷つけない、自分も傷つかない、安心安全なコンファタブルゾーンに自分を収めがち。でも、自分の枠を、常識の枠をはみ出してみる、そんな小さなチャレンジに、新しい自分が見つかる気がするんです。ことあるごとに、この言葉を思い浮かべて、未体験を体験してみよう、もっと高みを目ざそう、と思っています。言葉には目に見えない力があります。いや、言葉が顔を変える、言葉が顔をつくる。だからこそ、選ぶ言葉、使う言葉は、見た目に表れると信じています。

エディター、ライター 松本千登世

エディター、ライター 松本千登世

鳥取県生まれ。美容や女性の生き方について執筆。著者に『顔は言葉でできている!』(講談社)など。’24年、自ら立ち上げた出版レーベル「BOOK212」より初の絵本『ピンクのカラス』を刊行。

高尾美穂さんの心動かされた言葉

たいていのことはどうにかなる

この言葉は、私がこれまでの人生で実感してきたそのもの。私たちは日常生活において、さまざまなことに対し「気に病む」経験をします。人のことが気になったり、SNSの投稿が気に入らなかったり、新しい仕事に気負いを感じたり、電車に間に合わなそうで気が急いたり、パワーカップルを見て気おくれしたり。でも、それらはすべて私たち自身の「気の持ちよう」なんですよね。人には、いつもたどりがちな思考回路があって、それを変えることはとてもむずかしい。でも、ふだんから接する言葉や発する言葉を変えていけば、気がつけば考え方のパターンを変えられているかもしれないと思うのです。

産婦人科医 高尾美穂

産婦人科医 高尾美穂

愛知県生まれ。東京慈恵会医科大学大学院修了。’13年から「イーク表参道」副院長。近著『こうしたらきっとうまくいく 心がフワッと軽くなる82のヒント』(扶桑社)など著書多数。

中江有里さんの心動かされた言葉

50歳を過ぎて 努力した者が伸びる

俳優の児玉清さんが、画家の中川一政さんから聞いた、という話とともに教えてくださった言葉です。晩年になって仕事の幅が広がったという児玉さんが、「人間は人生の先が見えると、努力するのをやめてしまう。だからいくつになってもあきらめなければ成長する」と教えてくれました。この言葉を聞いた当時の私は30代。今、50代を迎えて、あのときの児玉さんのメッセージがしみてくる。言葉は知ったその時ではなく、適切な時期を迎えて効いてくると感じています。

 

私は読んだり書いたりすることを長年続けていますが、言葉にならない思いを言葉にしています。そうすることで、心がその言葉を、状況を、相手を、受け止められるようになる、そんな気がするのです。

俳優、作家 中江有里

俳優、作家 中江有里

’73年、大阪府生まれ。’89年にデビューして以来、多くのドラマや映画に出演。小説、エッセー、書評なども手がける。NHK BS2『週刊ブックレビュー』で長年司会を務めた。最新作は小説『愛するということは』(新潮社)。

ウー・ウェンさんの心動かされた言葉

さあ、何か作って⾷べましょう

⽂化⼤⾰命の影響で⽗と離れ農村暮らしを余儀なくされた⺟。どんなにつらいときでも「さあ、何か作って⾷べましょう」と、少ない材料を⼯夫して温かいごはんを作ってくれていた。いつも前向きな⺟のこの言葉と、家族の食事に向き合う姿勢は、私の原点です。

 料理家 ウー・ウェン

料理家 ウー・ウェン

’63年、北京生まれ。’90年に来日し、中国の家庭の味を日本の素材で手軽に作れる工夫を多数紹介。雑誌、新聞、テレビなど幅広く活躍。最新刊は『ウー・ウェンの 蒸しもの お粥』(高橋書店)。
君島十和子さん、大草直子さん、青木さやかさん、上野水香さんなど12人聞きました!

アラフィ―女性の心を動かした「映画」「ドラマ」「本」の言葉

人は本や映画、ドラマなどからハッとするような言葉に出会うこともある。多方面で活躍するアラフィー世代の女性たちが影響を受けた「ドラマ」や「映画」「本」の言葉をご紹介。

心を動かした「映画」「ドラマ」の言葉

夢中になってください――『新プロジェクトX〜挑戦者たち〜』

夢中になってください――『新プロジェクトX〜挑戦者たち〜』
NHKで’00〜’05年に放送された、無名の人々の知られざる活躍を紹介するドキュメンタリー番組。今年からは『新プロジェクトX〜挑戦者たち〜』がスタート。「番組の立ち上げ時にMCを務めました。日本を築き上げた人々の言葉には説得力があり、パワーをもらっています。この言葉は、最も心に残る放送回でもある、国際規格VHSを作った日本ビクターの髙野鎭雄さんの言葉。どんな困難にあっても、夢を追い続けることのすばらしさを説いており、この言葉が私の背中を押し続けてくれています」(久保純子さん)。
『新プロジェクトX 〜挑戦者たち〜』NHKオンデマンドで配信中

I LOVE YOU,BUT I LOVE ME MORE――『セックス・アンド・ザ・シティ シーズン5』

I LOVE YOU,BUT I LOVE ME MORE――『セックス・アンド・ザ・シティ シーズン5』
HBO® and related service marks are the property of Home Box Office, Inc.
ニューヨークに住む30代独身女性4人の生活や恋愛模様をコミカルに描き、世界的に大ヒットした名作ドラマ。「PR会社のやり手社長で異性にも積極的なサマンサが、役者を志す年下のイケメン、スミスに別れを伝えたときのセリフです。しびれるほどかっこよく、そしてなんとせつない言葉だろう! 対“人”、について考えるとき、異性にかぎらず、この言葉をいつも心にとめています。このドラマを見るときは、基本的に字幕、吹き替えなし。彼女たちの英語はとてもわかりやすく、すっと入ってくるからです。それも全世界でヒットした理由かな、と勝手に思っています」(大草直子さん)。
『セックス・アンド・ザ・シティ シーズン5』 U-NEXTにて配信中

そんなに面倒なら、死ね――『梨泰院クラス』

そんなに面倒なら、死ね――『梨泰院クラス』
ソウルの飲食店激戦区・梨泰院(イテウォン)を舞台に、飲食業界での成功を目ざして仲間とともに奮闘する若者たちを描いたドラマ。「つらさのあまり、たまに人生をあきらめたくなるときがあります。このドラマで、フォロワー70万人を超える人気ブロガーで、天才的な頭脳をもつイソが『死にたい』といったときに、主人公のパク・セロイがいったセリフです。今死んでいいほどすべてやりきったのか?と問われているようで……。すごく強いけれど、すごく思いやりのある言葉で、逆に生きる力になると思うんです。言葉って不思議だな、と思って印象に残りました」(上野水香さん)。
『梨泰院クラス』 Netflixシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中

人生を恐れてはいけない。人生に必要なものは勇気と想像力と少々のお金だ――『ライムライト』

人生を恐れてはいけない。人生に必要なものは勇気と想像力と少々のお金だ――『ライムライト』
老芸人と若きバレリーナの交流をつづった、チャップリンの名作映画のひとつ。老芸人カルヴェロは、人生に絶望して自殺を図ったバレエダンサーのテリーを助け、献身的に世話をする。再び踊ることができるようになったテリーは、カルヴェロとの幸せな未来を夢見るが……。「無声映画なのに、名言のような人生の教訓に出会えるのがチャップリンの世界だと思っています。このセリフもそのひとつ。チャップリン自身にも名言がたくさんあり、『失敗したほうが人生はおもしろい』や『人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ』など、心が軽くなる言葉を遺されていて好きです」(羽田美智子さん)。
『ライムライト』U-NEXTにて配信中

心を動かした「本」の言葉

『話せば、うまくいく。50代からの人生を機嫌よく生きるヒント』

『話せば、うまくいく。50代からの人生を機嫌よく生きるヒント』

青木さやか 鈴木秀子 時事通信社 ¥1,650

 

人間の成功は約束されていないけれど、成長は約束されている。――『話せば、うまくいく。』

50歳の青木さやかが91歳のシスターに教わった、人生後半を機嫌よく生きるヒントを集めた一冊。「91歳のシスター鈴木秀子さんに日々の悩みや思考のもち方を聞きました。手前味噌ですが、良本で何度も読み返しています。50代は、経験があり、体力があり、自分の取り扱い方がわかってきた、すばらしい年代。これからをもっと楽しく生きるコツは“感謝”をもつことだ、といわれたことが特に印象に残っています」(青木さやかさん)。

『幸福論』

『幸福論』

アラン 神谷幹夫/訳 岩波文庫 ¥1,078

 

幸福になることはまた、他人に対する義務でもあるのだ。これはあまり人の気づいていないことである。人から愛されるのは幸福な人間だけである、とはいみじくも喝破したものだ。――『幸福論』

具体的な対象に基づく独自の思索を追究した哲学者アランが記した、幸福に関する93のプロポ(哲学断章)。「幸せになることは他人のためにすべきことだ、という考え方を説いています。幸せは伝播し、まわりの人を幸せにするからです。同時に、幸せな人は別の幸せを人に届けることができる。そういう考え方に惹かれます」(高尾美穂さん)。

『あるがままの自分になる』

『あるがままの自分になる』

相川圭子 幻冬舎 ¥1,430

 

過去や未来に心をつなげるのをやめましょう。時間にとらわれず、「今」にいるのです。――『あるがままの自分になる』

ヨガと瞑想を教えているヨグマタ相川圭子さんが、生きる目的や幸せについて説いた最新刊。「相川さんの本は名言だらけ。私は不安になりやすいので、この人の本を読むと心が安定します。相川さんが講演会で“すべてはイリュージョン”とおっしゃっていて、当時ひどかった花粉症もイリュージョンと思うようにしたら症状が軽減しました。また"宇宙には主語がない" というお話も心に残っています。ネガティブなことをいうと、それには主語がないので自分に戻ってきてしまうそう。悪口などはつつしもうと思いました」(辛酸なめ子さん)。

『悲しみの秘義』

『悲しみの秘義』

若松英輔 文春文庫 ¥825

 

人生の困難に直面したとき私たちは、もがき、苦しみ、うめく。

悲痛に打ちのめされて、身動きができなくなる。(中略)

そこから抜け出すために、さまざまなことを試みる。

そんなとき人は、無意識に言葉を探す。(中略)わらをもつかむ思いで探すのは言葉なのである。――『悲しみの秘義』

宮沢賢治、須賀敦子、リルケ、プラトン、ユングらの、死者や悲しみ、孤独について書かれた文章を読み解き、人間の絶望と癒しをそこに見出す26編。「若松英輔さんは、私にとっては学校の先生のようにいろんな教えを授けてくださいます。私の母は’20年に病死しましたが、本書には若松さんが奥さまを亡くされたときのことが書かれています。大切な人を亡くす、というところで重なる心情がありました」(中江有里さん)。

『自分の中に毒を持て〈新装版〉』

『自分の中に毒を持て〈新装版〉』

岡本太郎 青春文庫 ¥814

 

よく、あなたは才能があるから、岡本太郎だからやれるので、凡人にはむずかしいという人がいる。そんなことはウソだ。やろうとしないから、やれないんだ。それだけのことだ。もう一つ、うまくやろう、成功しようとするから、逆にうまくいかない。――『自分の中に毒を持て〈新装版〉』

芸術家・岡本太郎さんが記したロングセラーの人生論。“常識人間”を捨て、興奮と喜びに満ちた自分でいるための生き方を説いている。「私が岡本太郎さんを好きだということもありますが、この本を何度も読み返してしまうのは、“ぶれないすごみ”を感じたいから」(青木さやかさん)。

『一切なりゆき』

『一切なりゆき』

樹⽊希林 ⽂春新書 ¥880

 

⾃分の変化を楽しんだほうが得ですよ――『一切なりゆき』

名優で人生の達人でもある樹木希林さんが活字で遺した、数多くの言葉を集めた一冊。「特にこの⾔葉に、ぱっと⽬が覚めた思いがしました。すっきりとした気分になり、『⽣きていくことは楽しい!』と思えたのです」(ウー・ウェンさん)。

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