舞台は1972年、本土復帰が目前に迫った沖縄。100万ドル強奪事件が発生し、琉球警察は特別対策室を編成する。班長として事件の捜査に当たるエリート刑事・真栄田を演じる高橋さんは、高校の同級生の刑事・与那覇(青木崇高)に「昔から何を考えているのかわからなかった」と言われる。そんな真栄田に高橋さんは「シンパシーを感じた」という。
「僕も、よくそう言われていたので(笑)。真栄田本人はそんなつもりはなく、多分言うのが照れくさいとかあまり説明したくないという性格的な部分も根底にはあると思うんですけれど。受け手がどう思うかということは考えてはいても、どうでもいいと思っているんでしょうね。だから演じながら、他人に語っても理解されないだろうという彼の達観したような姿に、僕もそういう時期があったかもしれないなと自分を重ねる部分もありました」
真栄田は八重山諸島の石垣島出身であること、また当時としては珍しかった東京の大学を卒業し警視庁を経て帰郷した刑事であることから、周囲からは「内地の人間」と揶揄される。特に沖縄本島出身で叩き上げの与那覇から真栄田への嫌悪はあからさまで、アイデンティティが揺れ動く真栄田の複雑さと与那覇との軋轢が本作の肝でもある。
「真栄田という人物像を思い浮かべたときに、これはある意味で日本の縮図のようなものが彼の中には詰まっているんじゃないかと思ったんです。言ってしまえば、日本国内の問題だけではなく、当時の世界情勢における日本の立ち位置の複雑さや思想のぶつかり合いで、日本という国そのもののアイデンティティが揺れていた。一方で、与那覇にはしっかりとしたキャラクター性があって、その上で激動の時代を生きる中で揺れていく。そういう人たちと真栄田とは決定的に違う人間なんです。その部分を青木さんとお芝居を通して会話していくことができていたので、僕自身、毎シーン毎シーン迷いなくできていた気がします」