タフで明るく、いつも軽やかな高尾美穂先生! 大人が身軽になる心得、教えてください

がんばって迎えたアラフィーの今、なぜか身も心も重い……。この重さ、いったいどこからくるの? そして、いつかは自由になれる? 多くの女性たちの心身を見守ってきた高尾美穂先生が答えます。

“いい○○”は、もういらない。もう一度、自分を主役に

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重さは、不満と不自由さ、変われない自分への焦りから

「身軽じゃない、と感じてしまうのは、まず、自分につながる人の数が多いと感じるからなんでしょうね。そして、そこからくる不自由さも」

エクラ世代が感じる「重さ」の原因をピタリといい当てた高尾美穂先生。産婦人科医、スポーツドクターなどとして多くの女性たちの心身を見つめてきた洞察力に驚かされる。


「家族がいるかたなら、性別や育ってきた環境の異なるパートナーとの数十年の結婚生活、そして、育ててきた子供たちとの関係がある。その人に長年感じてきた距離感や、してあげたことへの感謝のなさなどの不満が、重さの原因になっているのかもしれません。まったくの他人や仕事上の付き合いなら、思いきって縁を終わらせることもできますが、それができないくらいの関係が、一番重いし面倒くさい。でも、いなくなったらいなくなったで寂しいし……というわがままな感情も捨てられないのが、私たちなんです」

それには社会における女性の立場の変化も大きく影響していると、高尾先生はいう。働いて経済力をもった女性、シングルで自活する女性も増え、SNSからは他者の生活の充実ぶりがいやおうなしに流れてくる現在。「それに比べて自分は……」と考えると、重圧はつのりがちだ。

「『自分も変われるかも?』という可能性が見えてきて、身軽になりたい人はとっくにそうなっている。そんな中で変われないことに焦ったり、自分を卑下したりするのも、重さの理由のひとつかもしれません。
でも、私たちは選ばなかったほうの人生を経験することはできない。結局、隣の芝生なんです。だから、これまで過ごしてきた時間が納得のいくものではなかったとしても、その時間もこれからの自分に生かすんだととらえれば、前向きになれる。50代はいろんな意味でいいタイミング。したいこと、なりたい状態が見えているなら、踏み出すチャンスです」

また、不自由だと感じるのは、多くの場合「自分で自分の体に鎖を巻いているから」だと、高尾先生。まずは“いい◯◯”をやめてみることから始めるべきだという。

「いい妻、いい母、立派な社会人……理想に近づこうとがんばるほど、自由な時間がなくなっていきます。不自由さは、時間の使い方に満足してない証拠。もうそろそろ、自分を主役にしていいんじゃないですか?
例えば、家族に食べることくらいは自分でやってもらって、2泊3日で旅行に行く。なんでもかんでもポイポイ手放さなきゃ身軽になれないわけじゃなく、重たい関係をもちながらでも、身軽でいることはできるはずです。そうして自分の時間への納得感が得られれば、人生の満足や自信にもつながる。ただでさえ、美しさや若さなど、女性としての自信が、カンナで削るように失われていく年代ですから。『自分にもできるじゃん!』という経験で自信をもつことは、すごく大事です」

「これが自分の人生」。そう思えば、責任だって負う覚悟ができるはず

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手放したら取り戻せない、本当に大事なものは何?

家事、子育て、キャリア。50代まで過ごしてきた女性の日々は「まるでジャグリングのような状態だったはず」と高尾先生。これまでの自分を認めつつ、肩の荷を下ろして生きるときに大事なことがあるという。


「たくさん回しているボールの中で、『どれがガラスのボールか?』ということ。ゴムのボールなら、たとえ落としても取り戻せるけど、ガラスのそれはもとに戻せない。その違いを、見極めているかどうか」


先生いわく、優先すべきは自分の心と体。そして、人との信頼関係。


「50代ならば、自分の時間自体は確保しやすくなっているでしょう。ダラダラ動画を見たりするのではなく、運動すること、睡眠時間をしっかりとることを、健康界隈にいる者としては、やはりすすめたいですね。そして、これまで一緒に過ごしてきた人との関係も……。例えば、夫や子供と20年、30年一緒にいられたことだって、思えば奇跡のようなもの。もう一度、その価値を見直してみてもいいと思います」

満足できる今日、明日が軽やかな人生をつくっていく

なにより、自分の人生は自分のもの――改めてそう思うことが、軽やかに生きることへの第一歩だと、高尾先生はいう。


「誰かのせいで自分がこうなってしまった!と後悔しても、命が終わるときにその人が近くにいなければ、結局は自分の責任になってしまう。でも、これが自分の人生だと自覚していれば、その責任も負おうって思うじゃない?

そうすれば何を手放すか、残すかを含めて、行動は変わってくる。これが大事、あれも大事とタンスの中にとっておいても、結局は全部、この世に置いていくもの。今日はいい日だった、明日もいい日になるという積み重ねで、いい人生になっていくんだと思います」


なにしろ、今は人生100年時代。ようやく折り返しを迎えた今なら、まだまだ時間はあるはずだ。

「今は過ごし方しだいで90歳くらいまで元気にいられますから、これからの10年、20年、誰かに頼って適当に暮らすか、自分の人生だと思って主体的に生きるかで、ずいぶん差がつきます。

もっとも、50代近くまで積み重ねてきたことは、すっかりくせになっているから、今から変えるのは相当に大変。身軽になりたい、なんてほんわかいっているうちは、絶対に変えられません(笑)。ひとつでもふたつでも具体的なアクションを探して、今から動きましょう!」

\運動と睡眠はくれぐれも大事にね!/

高尾美穂先生インタビュー

Jマダムから高尾美穂先生に質問

Q1. 先の不安にがんじがらめになって、行動できない性格です。克服の仕方を教えていただきたいです。(Akikoさん)

A.「自分はこう」と規定せず、手放せる不安は手放して

まず、「こういう性格です」と思うことから離れませんか? 青が好きだったとしても、たまには赤を選んでみたら新しい発見があるかもしれません。そして、不安だと思っていたことの中にも、今ならもう手放せるものもきっとあるはず。整理整頓をしてみましょう。

Q2. 悩みや問題に真正面から向き合いすぎて、自分が擦り減ったり、その問題にのみ込まれたりしてしまいます。(トモコさん)

A. 限りある自分の時間を悩みや他人に費やさない

まじめで、人のことを親身に考えるかたなんですね。でも、悩みすぎるのは、その問題や他人に自分のエネルギーを奪われているのと同じ。限りある人生、もったいないと思いませんか? しんどいときは無理をせず「申しわけないけど今度にしてくれる?」と伝えてみて。

高尾先生の「身軽に生きる心得」

☑ 「人生の主人公は自分」と、再認識する

☑  優先すべきは「心と体の健康」「大事な人との関係」

☑  思っているだけでなく、ひとつでも具体的なアクションを!

高尾美穂

高尾美穂

たかお みほ●医学博士、産婦人科専門医。婦人科スポーツドクター、産業医、ヨガ指導者としても活動。女性のための総合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。『こうしたらきっとうまくいく 心がフワッと軽くなる82のヒント』(扶桑社)ほか、著書多数。
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