海外のファッションブランドも採用!世界が認めた”尾州織物”【Made in Japan 愛知・尾張一宮】

肥沃な濃尾平野が広がる尾州地域は、繊維産業とともに発展し、毛織物の世界3大生産地と称される。世界が認める“尾州織物”を一丸となって地元から再発信しているこの地域をeclat 4月号でご紹介。
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伊勢湾に注ぐ木曽川を軸に、肥沃な濃尾平野が広がる尾州地域。この地域では、昔から桑や綿花などが栽培され、絹、綿、そして毛織物と転換しながら、繊維産業とともに発展。毛織物の世界3大生地産地と称され、世界的にも知名度が高い。そのクオリティのすばらしさから、多くの海外ファッションブランドも生地として採用している。
 尾州の毛織物産業の強みは、糸から織物になるまでの数多くの工程を、同じ地域の中で分業していること。紡績、撚糸(ねんし)、染色、製織、整理まで、工程ごとに多くの企業がかかわっている。それぞれに長い年月をかけ高い技術が培われているのが特徴で、この地域で国内生産量の約7割の毛織物が生産されているという。
 そんな尾州で1912年に創業したのが葛利毛織工業。紳士服のスーツ生地を中心に、生地の設計、提案、生産、販売を行う老舗機屋(はたや)だ。昭和7年建築の趣のある工場の中には、ションヘル織機という希少な国産シャトル織機が10台。低速で織ることで独特の手織りのような風合いをもつその生地は、膨らみと収縮力がありとてもしなやかだ。現在は数多くのブランドと取引を行っているが、同社の100年の歴史の中にはいくつもの荒波があったという。流通経路が変化し、世界的な競争環境の変化から売上減少が続き、「将来性が見出せず、いつか行き詰まるだろうと、廃業を意識していた」と4代目にあたる葛谷聰専務は語る。

ションヘル織機とともに歩む「葛利毛織工業」

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①大学院でもテキスタイルを学んだ水野太介さんは、次代を担う若手の中心。綜絖(そうこう)通しという、経糸(たていと)を一本一本通していく作業の名手 ②シャトルの中に収められた緯糸(よこいと)の種類によって内側の毛の量を緻密に調整
風向きが変わったのは’09年。海外ブランドのバイヤーに直接サンプルを見せる機会が訪れる。「こんな贅沢な織り方を尾州ではまだやっていたのか。もはやヨーロッパではここまでの品質の生地は生産できない」と絶賛されたことが専務の気持ちを変えた。
「時代遅れだと思っていた古いションヘル織機が、実は最高の宝物だった。それがきっかけで自分の使命に目覚めたんです。これまで100年続いてきたんだから、この先100年も続けていくと決めました」。この思いに導かれるように、同社にはものづくりに熱意をもつ若者が集まる。70 代のベテラン職人とともに30代の若手がションヘルの機械音の中、黙々と働く。「次の100年をつくる若手たちと尾州全体で一緒に栄えていきたい」と専務は語る。
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