「『まだ親が元気だから』と先送りにしている人が多いようですが、相続の話題は、親が元気なうちでないとできないもの。親が、病気になったり体が弱ってきたりすると、気が引けて口に出せなくなるだろうと思います。病状によっては、それどころではなくなる場合もありますしね」と、一橋さん。
ましてや、認知症の兆候が表れてしまったら、相続について、正しい情報や判断が得られない可能性もある。
「実際、高齢の親に財産を確認したところ、正確に把握しておらず、親戚に『祖父から継いだ山があったはず』と指摘されて、山林を所有していたことが判明したことがありました。こういったケース、実はとても多いんですよ。登記簿謄本が手元にあったり、固定資産税の通知が毎年きていたりすれば、遺された家族が確認できますが、なかには、評価額が低いなどの理由で固定資産税がかかっていない土地もありますからね。また、本人がふだん利用しておらず、存在すら忘れてしまった銀行口座も少なくありません」
本人が亡くなっても、家族が届け出ないかぎり、銀行側が知る術はない。その口座は休眠口座となり、故人の預金が家族に渡る可能性は低いのだとか。「財産を調べるのと同時に、誰が法定相続人になるかを確認しましょう。そのうえで、親がどうしたいと思っているのか、気持ちの棚卸しをすること。法定相続人がひとりなら迷うことはないでしょうが、複数いる場合は誰に何を遺すのかも想定を。それが公平でない場合は、相続人みんなが納得できるように対策をとらなければなりません。また、親の老後をどうするかも、相続にかかわる問題なので、あわせて考えておきたいですね。特定の子供が面倒を見るなら、それを考慮した財産分けがベターですし、介護施設を利用するつもりなら、その費用を除いた金額で、財産分けをする必要があります」