「歌舞伎の楽屋でもよくお香を焚いています。鏡台の大きな引き出しひとつを全部お香に使っていて、『初日だから、集中力の高まるものにしよう』などと、楽しみながら香りを選んでいます」
なかでもお気に入りは山田松香木店のお香。「伽羅など、ちょっとスパイシーでピリッとする香りが好きなんですが、山田松香木店のお香は、品があってエッジがきいている。京都の本店にはずっと来てみたかったんです」と今年できた聞香サロンで伽羅を聞く姿は、とてもうれしそう。
「以前、市川猿之助さんに『薫習(くんじゅう)』という仏教用語を教わりました。かつて平安貴族たちが衣服に香を焚きしめたように、経験が人格に浸透していくことをいいます。歌舞伎の薫習が深まることを願って、これからも僕の香り修行は続きます」