その石本氏の故郷が、道後温泉で知られる愛媛県松山市の近郊、障子山の麓に位置する愛媛県砥部町。現在、松山市にある愛媛県美術館で企画展「石本藤雄展ーマリメッコの花から陶の実へ」が開催中だ(12月16日まで)。
「ふるさとで作品を見てもらってラッキーだと思っています。自由に見ていただきたい」と、石本氏は故郷での開催を喜んでいた。
この企画展では、400ほどの中から選んだというテキスタイルを、35本の筒にして設営しているエリアが面白い。「ひとつずつが主張せず、筒状にして展示することでイメージが生きてくるものもある」と話す石本氏。また、陶器作品を中心としたエリアでは「取り合わせの妙」として、愛媛県美術館コレクションと石本作品を合わせることで、新たな表情を見せている。例えば、三輪田米山「福禄寿」と、石本氏の、正月飾りの白い布の上に飾られた冬瓜に着目したという作品との取り合わせ。これは、奇しくも喜寿同士の作品となったという。
石本氏の作品は期間中、砥部町文化会館にも展示されている。石本氏は現在ヘルシンキで、イギリスなどヨーロッパの土を使いアラビアの電気窯で作陶しているが、故郷である砥部町は奈良時代から砥石で知られ、そこに登り窯が3つあったのを記憶していると話した。
青磁や白磁、日常使いの器として親しまれてきたのが砥部焼だ。砥部はまたみかんの名産地でもあり、作品にみかんのモチーフが多いのにも頷ける。この辺りは松の木を伐採してみかん畑にしてきたそうだ。
彼は子供の頃、松林の松の葉の風にそよぐ音によく耳を傾けていた。そんなふうに、故郷でも、フィンランドでもいつも自然に囲まれて、創作を続けている。