富岡佳子×坪井節子と考える「私たちが、子ども達のためにできること」とは?

虐待・いじめ・非行・貧困・生活困難……解決困難な問題を抱える子供や若者たちのニュースは少なくない。モデルとして活躍する富岡佳子さんも、そんな問題に関心を寄せるひとり。そんな彼女が講演を聞いて感銘を受けたという、子供の人権救済の活動を続けている坪井節子さんに富岡さんが直接お話を伺いました。子供の問題の現状や、私たち大人が彼らにできることとは?

富岡佳子×坪井節子(弁護士・「カリヨン子どもセンター」理事長)

「私たちが、子供たちのためにできること」

弁護士・「カリヨン子どもセンター」理事長 坪井節子さん
早稲田大学第一文学部哲学科卒業。’80年、東京弁護士会にて弁護士登録。’84年、坪井法律事務所開設。’87年11月から、東京弁護士会子どもの人権救済センター相談員。東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会委員などを歴任。’04年6月から、NPO法人カリヨン子どもセンター、’08年3月から、社会福祉法人カリヨン子どもセンター理事長。
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救うのではない。子供に寄り添うことが大切

想像を超えるほどの子供たちの過酷な状況
富岡 
私、数年前、坪井さんの講演を聞きにいったことがあるんです。最近も児童虐待のニュースは多いですが、やはり増えているんですよね。

坪井
今は、虐待は通告しなければならないという流れもあって、報告数が増えています。また、虐待の定義も拡大しています。心理的虐待に「面前DV」が追加されたり。子供の前で夫婦ゲンカをして、暴力をふるうのは子供に対する心理的虐待である、と。

富岡
発生件数というより、種類や報告数が増えているんですね。

坪井 はい。親が自覚しにくい教育虐待というのもあります。教育熱心なあまり厳しい体罰を加えたり、どんなに子供ががんばっても認めないとか。

富岡
そういう虐待やいじめなどで追いつめられた子の緊急避難場所として、子供のためのシェルター「カリヨン子どもの家」をつくられたんですよね。そもそもどんなきっかけで子供の問題に取り組まれたんですか?

坪井 
私は’80年に弁護士になって、子供の人権問題を始めたのが’87年。最初は子どもの人権救済センターの相談員でした。そこで聞く子供たちの実体験はあまりにも壮絶で、私は何も答えられないし、解決策を示すこともできない。最初はあっけにとられ、次に無力感におそわれました。

富岡 それで、どうされたんですか?

坪井 
とにかく話を聞きました。そうしたら当時担当した中学3年生の男の子が、「こんなに一生懸命聞いてくれた大人は初めてだよ」といってくれて、はっと気がつきました。子供が求めているのは解決策じゃなく、話を聞いてくれる大人なのかもしれない、と。

富岡 
そばにいることが大事なんですね。講演でうかがった生徒さんのコメントには涙が出ました。「死ぬ勇気があったらいじめに立ち向かえという大人がいるけど、立ち向かう勇気がないから死ぬんだよ」って。その子はひとりぼっちなのに、大人にはそれが見えていない。そして、実は私も大人の見方をしていたと気づかされました。

坪井 
その子がさっきの男の子です。人が人を救えるなんていうのは思いあがりで、子供には寄り添うだけです。

児童相談所での児童虐待相談対応件数

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※厚生労働省発表。相談対応件数とは、児童相談所が相談を受け、援助方針会議の結果により指導や措置等を行った件数。※平成29年度の件数は、速報値のため今後変更がありうる。平成22年度の件数は、東日本大震災の影響により、福島県を除く46都道府県で集計した数値。
相談件数が圧倒的に増えているように見えるが、すべてが発生件数増加に起因するのではなく、児童虐待への意識が高まり、通告が増えていることも大きい。

児童相談所での虐待相談内容の内訳

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心理的虐待は言葉の暴力、存在の無視や拒否、子供の前で配偶者へのDVを行うことも含まれる。身体的虐待は直接的暴力、戸外に閉め出すなど。ネグレクトは養育保護の拒否・怠慢をいう。食事や入浴の機会を奪う、病気でも病院に行かせないなど。「性的虐待は比率が小さいですが、心も体も傷つけられるので深刻です」と坪井さん。
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