「地味」でいい。土そのものの備前焼。

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前回に続いて岡山ネタです。取材帰りにお土産に買ったのは備前焼。土そのものという風合いが、春のお菓子に似つかわしく感じられます。

ちょうど今、北の丸公園にある東京国立近代美術館・工芸館では、『The 備前 土と炎から生まれる造形美』が開催中です。

備前焼は基本的に無釉の焼締陶で、古くから壺、甕、擂鉢など、日用の雑器が作られてきました。やがてその素朴な表情と薪窯の中で生じる「窯変」の景色が茶人に喜ばれるようになり、桃山時代には数多くの名品が誕生しています。これら茶陶としての注文品は、織部以降の「歪み」を尊ぶ造形感覚に基づくものでした。
現代の作家さんには、それら桃山以前の「古備前」に学ぶ人もあれば、土の美質を生かしたオブジェ的な作品を手がける人もあり、展覧会では備前焼の歴史と多様な現状を知ることができます。

料理の分野で「素材に手を加えすぎず」「素材の持ち味をいかして」などと言いますが、備前焼も、そんなふうに"素材"を尊ぶやきもののひとつ。出来上がりの計算はもちろんしますが、あくまで「窯で土を焼く」という行為の延長上。加飾要素もある程度、窯にまかせます。降りかかった薪の灰がガラス化して黄色く残った「胡麻」、灰などの中に埋もれたせいで還元焼成によって土の色が灰色になる「桟切(さんぎり)」、それらを別の器などで遮ることで生まれる「抜け」、器同士がくっつかないように差しはさんだ藁による線状の赤い呈色「緋襷(ひだすき)」などが、時に人為を超えた幽玄な表情を見せてくれます。


さて、下の画像スライダーには、合計8つの展示作品が出てきます。
その内訳は古備前が4つ、現代作が4つ。どうぞ、備前焼の目利きに挑戦してみてください(※答えは画像の下にありますので、スクロールしすぎないようご注意を)。


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なかなかイジワルなセレクト&順番にしてあります。ただ、古備前の作品は4つ中3つが有名なものなので、過去に展覧会でご覧になっていれば簡単ですね。また、「写真をよ~く見ればわかる」、ということもあるかもしれません…。一通り見てから決めていくなど、わかりやすそうなところから当たるのも手だと思います。


ぼちぼち文字数を稼げましたので、答えを以下に。
【掲載作品リスト】
写真1)『緋襷四耳茶壺』 16~17世紀 桃山時代 
写真2)金重陶陽『四方平鉢』銘「冬の月」 1953年
写真3)金重素山『緋襷重餅水指』 1993年ごろ
写真4) 森陶岳 『花入』 2015年
写真5) 『三角花入』 16~17世紀 桃山時代
写真6) 『緋襷鶴首徳利』 16~17世紀 桃山時代 MIHO MUSEUM 
 奥は『徳利』銘「トシワスレ」 16~17世紀 桃山時代  
写真7) 金重陶陽『耳付水指』 1958年 東京国立近代美術館
写真8) 『耳付花入』銘 「太郎庵」 16~17世紀 桃山時代

いかがでしたでしょうか。
順に区別を挙げれば、「古/現/現/現/古/古/現/古」となっています。最初の茶壺が端正で、胴の上下に変化を付けているのがモダンなので現代、その次の平鉢がプリミティブなので古備前…と、ミスリードするようにしてみました。すみません。陶陽さんの「冬の月」は出色の出来なので判別が極めてむずかしいのですが、展覧会で色々見ていくと、古備前の"作為"と現代作の"作為"にはどことなく差があるように思えるはずです。

なお、「写真をよ~く見ればわかる」というのは、今回選んだ古備前の作品には展示ケース内が「二段」になっているという思わぬ法則性があったからです…。そうした名探偵的視点から補助線を引いて正解された方もまた素晴らしいと思います(※たまたまで、展示意図ではありません)。

こうして何のヒントもなしに見るとなると、ふだんよりも作品をじっくり観察されたのではないでしょうか。備前焼が昔から地味であり続けるのは、焼かれた土の表情、「土味」に美点を見出すからなのです。焼き上がりは完全に人為の及ぶところではなく、なかなかに抽象的ですが、それを楽しむことが出来たらしめたもの。展覧会は5/6までの開催ですので、春の散策を兼ねてお出かけください。

(編集B ※内覧会にて撮影)

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