「長編小説を書くときは最初に登場人物の情報、例えば性格や誕生日や身長などを細かく考えておきますが、先の展開は何も考えない。人物が勝手に動くのを待つんです。ただ礼那の家は、彼女がいない時間と空間ができると両親がうまくいかなくなるのでは、という予感がありましたね」“子はかすがい”というが、それが急になくなることは夫婦にとってひとつの試練。娘から楽しそうな手紙が届いたりしたことで理生那は落ち着いていくが、潤は行方がつかめない状態が耐えられない。現実の受け止め方が違う夫婦がお互いに抱く疑問を、エクラ読者なら理解できるのではないだろうか。「若いころは、結婚式でよく聞く“結婚したら片目をつぶって相手を見よう”というあいさつが大きらいでした。“もし自分があいさつを頼まれたら、両目を開けたまま相手から目を離すなといってやる”と思っていたくらい(笑)。
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家族って、人生って何? 江國香織が選ぶ「人生を考える家族小説」 五選
いつの時代の話でも、どんな国のものでも、どこか他人事とは思えないのが家族小説のおもしろさ。今回は家族の物語が大好きという江國香織さんに、たくさんの候補の中から選りすぐりを紹介していただいた。