古い伊万里の器で、縁からいくつも三角形を垂らすように描かれるのは「雨降り文」。中皿はかなり精緻に描いたもの。小皿のほうも雨降りかと思いますが、どちらかというと軒先からの雨だれに見えますね。
かつて西洋の人々が、雨を線で表した浮世絵を見て大きなカルチャーショックを受けたというのはよく知られるところ。確かに、雨に降られる場面をストレートに描いた西洋画は、パッと思い浮かびません(ターナーの『雨・蒸気・速度 ―― グレート・ウェスタン鉄道』も、SLの絵といえばSLの絵)。輪郭線を使わない油彩画ならば、雨の中にあるものをぼんやり描くのがセオリーでしょうし、単色版画では陰影を表現するのに線を使う必要があるので、なかなか雨にまで回していられなかったのかもしれません。
そこへいくと、線描主体、陰影知らずの日本の絵は自由自在。雨が降る様子もそのままデザインにしてしまえるところに、ちょっとした幸福があります。
(編集B)