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今、最も読んでほしい本が決定! 女性が女性のために選ぶ「第2回文芸エクラ大賞」 五選
昨年初めて開催して、大好評を博した文芸エクラ大賞。第2回となる今年も、エクラ世代の本の目利きたち――文芸評論家、書評ライター、書店員が選考に参加。読者の皆さんに最も読んでほしい本が決定しました!
大人の女が気高く生きていくための哲学書!ミシェル・オバマの『マイ・ストーリー』
これは成功者の物語ではない。大人の女が気高く生きていくための哲学書である—。
Michelle Obama
’64年1月17日、アメリカ合衆国・シカゴ生まれ。夫の大統領任期終了後も、女子教育の向上などに向けた活動を精力的に行っている。
●世界で1000万部を突破した大ベストセラー、待望の日本語版。『マイ・ストーリー』 集英社 ¥2,300
一方的な夫の賛美などではない、極めて冷静な回顧録
でもそれは感情移入からでも、悲劇的な結末へのカタルシスからでもない。むしろ一方的な夫の賛美ではないこの回顧録を読むだけで、自分の中で眠っていた“何か”が目覚めるから。人はいかにして生きるべきか? まるで中学校の道徳や倫理の時間に学んだことの正解が、今更のように細胞の中に染み込んでいくからなのだ。
NYに住む日本人から、バラク・オバマがいかに“完璧な人間か”をいやというほど聞かされた経験がある。軽々しく完璧という言葉を使いたくはないが、少なくとも国を治める人間としては完璧だったとその人は言った。アメリカに合っていたか否かは別として、と。
知性の有無や人間性は、話す言葉のニュアンスで読み取れるが、語学が苦手な自分などは、オバマ演説をいくら聞いてもその人格はまるで読めず、まさに雰囲気だけで彼を捉えてきた。興奮気味なネイティブが語った彼の素晴らしさを、この本は極めて冷静な妻の分析で見事に裏付けたのだ。だからこれを読むうち、私ですら強力に覚醒できた。“正義感”という美しい感情の目覚めを覚えたのだ。
バラク・オバマとの出会いは果たして「強運」だったのか
こんな一節がある。まだ結婚前、夜中に目を覚まして、わずかに曇った表情で天井を見つめている彼に、一体何を考えているの?とたずねた。すると彼は、「世の中の所得の不平等について考えていただけさ」と照れながら言ったという。もちろんそこそこ立派な人間は社会問題を十分に気にかけてはいる。でも結局優先するのは“自分のキャリア形成”と“より良い暮らし”。しかしバラク・オバマは違った。成功の階段を登ろうとしたり、他人の進歩と自分を比べたりせず、人生という巨大で激しいレースもそっちのけで、いかなる大きな問題も自分でどうにかできるはずという、ひどく無茶にして極めて前向きな考え方を持つ男だったのだ。まぁそのくらいでなければ、アメリカ史上初の黒人大統領にまで上り詰めはしない。黒人大統領誕生! が奇跡なのではなく、バラク・オバマ自身が奇跡だったのだ。
そして女性の多くは、人も羨むパートナーとの出会いを“強運”と捉えがちだが、ミシェルにとってそれは運の良さではなく、100%必然。バラクのような男に愛されるべき全ての魅力と能力を持ち合わせた極上の女性だった。そして私たちが思い知るべき真実は、お互いの知性の高さが、実は深い深い愛情を生むこと。永遠に濃密な会話をし続けられる知性あるもの同士が、限りなく愛し合えるという、揺るがない法則をこの二人が教えてくれたのだ。
常に問い続ける女性。努力と結果が繰り返される
ミシェルもまた、ただの優秀な少女ではなかった。人はどうして朝食に卵を食べないといけないのか? そんなソクラテス的な問答を自らに課し、自分は充分な人間なのかを問い続けた。いつも脳内にも“やることリスト”が存在し、努力と結果が繰り返される。何かを達成すれば、もう次の試練に対峙してる。だから充分と思ったことはない。
社会に出ても、自分はどんな人間になるべきか、どう社会の役に立つべきか? を問い続ける日々から、個人や企業の利益のために働く弁護士に自分は向かないと思うに至り、かつて小児科の医者を目指そうとしたこともある自分の精神的ルーツに立ち戻り、病院の副院長を務めた後、若者のキャリア形成を支援する非営利団体の理事となる。
ただ人々が自分の発言よりファッションを重視しているらしいこと、ショートパンツ姿を隠し撮りされ、品がないとバッシングを受けることに、落ち込むこともしばしばだった。でもこの状況さえ成長するチャンスと考え、黒人大統領の妻として、周りが見劣りしない程度に自分が目立ち、周囲に溶け込みながらも埋没しない黒人女性の装いを模索した。高級すぎても、逆にカジュアルすぎても批判される。だから、マイケル・コースの高級スカートにGAPのTシャツを合わせるという、時代のトレンド、ミスマッチを自ら生み出し、大型スーパーの服を着た次の日に、ダイアン・フォン・ファステンバーグのドレスを着た。根底に洗練がある人なのだろう。バランス感覚こそが命という絶対の法則に自ら気づき、そして好感度を高めていったのだ。
「大人の女性」を形作るあまりに尊い手引書だ
今振り返れば、いつも満面の笑顔だった印象しかない。努力と結果を繰り返す人は、ファーストレディーという数奇な運命を得て、とてつもない進化を遂げたのだろう。すでに充分に完成している女性が、なおも進化していくすさまじいドラマがここにある。どんな些細な事でさえ、国民が納得する自分でいなければいけないという正解探し。それは、限界まで物事がよく見えている「大人の女性」が作られていく手引書として、あまりにも尊い内容だ。
にもかかわらず『マイ・ストーリー』は“あってはならない国民の選択”という悲劇で幕を閉じ、人生の不可解さを見せつける。ただ逆に、実話ゆえにそこでは終わらない。自らを犠牲にしても、心底社会の平和を考える戦友のような夫婦は、決して諦めはしないのだ。今日も二人、この上なく前向きな議論を繰り返しているのだろう。自分たちに今、何ができるのか? これは成功者の物語ではない。心を洗い整え、気高く生きていくための哲学書である。
特別寄稿
美容ジャーナリスト齋藤 薫
美容のみならず、女性の生き方や精神性にまつわる記事を数多く執筆。近著に『キレイはむしろ増えていく。 大人の女よ! もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)。
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