作家・開高健ってどんな人? 3つのキーワードから読み解く人物像

亡くなって30年が経った今も多くの人の心を魅了し続けている、開高健。芥川賞受賞作「裸の王様」をはじめ、多くの作品を生み出し、その中にはエクラ世代に響く力強い言葉が紡がれている。これまで彼が残した作品や言葉から、作家・開高健のルーツを読み解く。
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1.戦場から釣り、食、街、ワイン…、人間すべての営みに興味津々<究極の“知りたがり”>

生涯「行動する作家」であり続けた開高健。’64年には新聞社の臨時海外特派員になってベトナム戦争へ。200人の部隊中17人しか残れなかった激戦で死にかけたのに、その後もベトナムを訪れ、ビアフラ戦争や中東戦争も視察。かと思えば、南米やモンゴルなど世界の秘境をめぐり歩いて釣りをしたり、〈食べれば食べるだけいよいよ食べられる御馳走はないものか〉と、フレンチの一流シェフに極上のフルコースを作ってもらい12時間食べ続けてみたり……。
飽くなき好奇心と行動力の源は、人のあらゆる営みを通して人間の本質に迫りたいという強烈な思い。自身の体験をベースに思索を重ね苦しみぬいて生み出すからこそ、その作品が心を揺さぶるのだ。

2.元祖コピーライター!? 時に強烈に、時に繊細に<言葉の錬金術師>

12歳で父を亡くした開高は、パン屋の見習い、旋盤工見習い、英会話学校教師などのアルバイトで家計を支えながら、むさぼるように本を読み、中学、高校、大学を卒業する。壽屋(現・サントリー)の宣伝部に採用されると、その博覧強記ぶりと文才を認められ大活躍。今も広告業界でお手本として語り継がれている〈「人間」らしくやりたいナ トリスを飲んで「人間」らしくやりたいナ 「人間」なんだからナ〉など、数々の名コピーを遺した。編集発行人を務めたPR誌『洋酒天国』は軽妙洒脱でエスプリに富み、大人気に。

作家になってからも希代のコピーライターぶりを存分に発揮。作品を手にすれば、忘れられないフレーズがわんさか見つかるはず。
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開高が愛し、よく色紙に書いた言葉。もともとは「Festina Lente」というラテン語で、直訳すると「ゆっくりと急いで」。一般に「急がば回れ」と意訳されるが、「悠々として急げ」としたところがさすが!

3.渡航した43カ国の中で一番のお気に入りはパリ!?<世界を歩いた作家>

貧困を極めた少年時代、学校に弁当を持っていけず、昼食の時間に水でおなかを満たしていた彼は、「国外逃亡」を夢見ていたそう。初めて海外に出たのは’60年、29歳のとき。中国訪問日本文学代表団の一員として中国へ、さらにルーマニアやチェコスロバキアなどを歴訪した帰りに長年憧れていたパリへ。

58歳で亡くなるまでに世界43カ国を旅したが、芸術と食と自由の都パリへの愛はひとしお。旅の帰途に必ず立ち寄り、カルチェ・ラタンの学生下宿に滞在するのを習慣にしていた時期もあった。今年9月に刊行された『開高健のパリ』では、ユトリロの名画とともに、猥雑でエネルギッシュだった’60年代のパリを堪能できる。
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ユトリロの絵と開高の作品紹介からなる’61年刊行の画集に、パリに関するエッセーを加えた新刊『開高健のパリ』。角田光代さんによる解説も読み応えがある。集英社 ¥2,000

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