【玉木宏さんスペシャルインタビュー】今この時、だからこそ戦争映画で伝えたいことがある

新しい役を演じるたびに、観たことのない彼がそこにいる。デビュー以来、過ごしてきた年月は魅力の幅を広げ、重ねた経験はその表情を深いものに変えてきた。人生の新しい局面を楽しみながら、40代の今を生きている。
玉木宏
 相変わらずカッコいい! もともとスリムでシャープな印象だけど、近年はドラマで重厚な役を演じたり、CMでコミカルな表情を見せたり。40代半ばを迎えた今、骨太であたたかみのある魅力が加わった。映画『雪風 YUKIKAZE』では、駆逐艦「雪風」の先任伍長・早瀬幸平を演じている。
戦後80年という節目の今年、終戦記念日に公開される本作の舞台は、駆逐艦「雪風」。第二次大戦中、輸送護衛や沈没した艦船の乗員を救助するなど〝海のなんでも屋〟と呼ばれた、小型で軽量の艦船だ。竹野内豊さん演じる沈着冷静な艦長のもと、玉木さんは下士官・兵をとりまとめ、現場で汗まみれになって軍務に就く先任伍長を演じた。
「僕が演じた先任伍長というのは、乗員たちのリーダーであり、人間臭くて、泥まみれになって働きながら、みんなの成長を見守る母のような立場です。撮影現場で例えたら、チーフ助監督のような役割です」
今、日本では、戦争の記憶を持たない人ばかりになりつつあるけれど、演技とはいえ、戦争というものを何度も疑似体験してきた玉木さんだからこそ、痛切に感じることがある。
「命の大切さ、です。戦場で命を落とすことは、本人が無念で苦しいだけでなく、残された人たちにとっても、とてつもなく大きな悲しみになる。ですからこういう映画、エンタテイメントを通じて戦争を描き、命の大切さを若い人たちにもしっかりと伝えたい。何があっても生きていかなくてはいけないんだというメッセージを、残していくべきだと思います」
玉木宏
世界の各地では未だに、戦争や紛争が止まない。きな臭い世界情勢を思うと、本作からは絵空事ではないリアリティが伝わってくる。
「僕も家族を持つようになって、子どもに何を残すか、次世代に何を繋げるべきなのか、強く考えるようになりました。子どもが大人になる頃には、もっと平和で安全な世界になっていてほしいです」
 子どもを持ったことで、意識の上だけでなく、生活そのものも大きく変化した。
「今日も子どもを幼稚園に送り届けてから来ました。東京にいるときは毎朝必ず、送ります。今朝は幼稚園の入り口で、子ども達に『あ、俳優だ!』と言われました(笑)。弁当作りも僕の担当です。今日はこの取材が終わったら、子どもと一緒に遠出するんです。一度、田植えを経験させたいと思って」
玉木宏
その一方で、ブラジリアン柔術の鍛錬も、欠かさない。数年前からハマり、連日通い続け、その実力は今や、世界大会に出場するほど。
「子育てとか家事とか、自分ができることは全部やって、そのすき間に自分の時間を作って練習しています。負けると悔しいし、勝ちたいから。そういう原動力は、何においてもすごく大事だと思うんです」
 さらにもうひとつ、MVの監督など、映像制作者の顔も持つ。
「ずいぶん前からカメラの趣味があって、全部つながってます。クリエイティブという面では撮る側も撮られる側も一緒だと思います。監督という立場になると、意図を汲んで演じてくれる演者はありがたい。僕も俳優として、察しが良いほうだと思ってやっています。でも、どうでしょう(笑)」
 あれもこれも全力で。日常のいろんな顔が俳優・玉木宏の魅力の幅を広げ、奥行きの深さになっていく。
シャツ¥35,200・パンツ¥44,000/PARKING (MARKAWAR) シューズ¥64,900/エスディーアイ(FERRANTE)
玉木宏

玉木宏

たまき ひろし●1980年1月14日、愛知県生まれ。’98年俳優デビュー。’01年『ウォーターボーイズ』で注目を集め、’03年にNHK連続テレビ小説『こころ』でブレイク。以来ドラマ、映画、舞台で活躍。また写真家として写真展で作品発表を重ね、映像の分野でもMVの監督を務めている。さらにボクシングやブラジリアン柔術など格闘技で心身の鍛練を重ねている。

『雪風 YUKIKAZE』

映画 雪風のポスター
©2025 Yukikaze Partners.
駆逐艦『雪風』は、小型で軽量ながら第二次大戦中、真っ先に魚雷戦を仕掛け、艦隊護衛や沈没した艦船の乗員を救助していた。新たな艦長・寺澤一利(竹野内豊)を迎え、先任伍長・早瀬幸平(玉木宏)は彼の独特な戦法と操艦術に舌を巻く。『雪風』には次々と指令が下り……。出演:竹野内豊、玉木宏、奥平大兼、當真あみ、田中麗奈、中井貴一ほか。8月15日(金)全国公開。
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