しじまの世界、静けさとさびしさ。

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上野の東京都美術館で『ハマスホイとデンマーク絵画』(~3/26)が開催中です。点数もほどよく、目にも優しくという作品が並んでいますので、ぜひご覧ください。

"ハマスホイ"とは、19世紀末~20世紀初頭に活動したデンマークの画家、ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864~1916)。日本ではほぼ無名だったにもかかわらず、2008年の国内初回顧展開催中の「フェルメールみたい!」「静謐な世界」といった口コミから、一躍、人気となりました。

図録で振り返ると、そのときにも見ていたはずなのですけれど、今回初めて野の景色を描いた作品にときめきました。空虚な部屋を見るような眼で捉えられた緑の風景は静かで、あたたかくて、さびしい。

「さびしい」というのはマイナスイメージのようですが、どちらかというと身の安全が担保された状態で抱く感情であり、それなりの心地よさもあります。長らく人間をやってますと、時々は、ひとり"ぽつねん"と風景の中に観察者として佇むことが恋しくなるもの。

2枚目の写真は、数年前に訪れた北海道の落石岬付近。海沿いの崖まで草地が広がっていて、光は何とも優しく、空気は動かずほのあたたかく、ひたすらぼ~っとしていられました。この景色に出会ってからハマスホイの風景画を見直したことで、2008年当時よりも心に響いてきたのかもしれません。

もうひとり、こういう静けさやさびしさの豊かさを知っていただろうなと思うのは、ドビュッシー。人気のない穏やかな風景には、『前奏曲集 第2巻』の第5曲、「Bruyères」(「ヒース」もしくは「ヒースの荒野」)がとてもしっくりきます。彼の自筆譜も、ひとつの景色として好ましいですね。
(編集B)

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