「2拠点」居住で失敗しないコツを建築家がレクチャー!

都会と自然豊かな地方との「2拠点」をベースにした暮らしなど、昨今、1カ所にとどまらない暮らし方が増えている。でも、50歳からの土地の選び方や家の仕様、管理の仕方など、「2拠点」移住には分からないこともたくさん。そこで、失敗しないコツを建築家の鈴木宏之さんに教えていただきました。
50歳からの土地の選び方、家の仕様、管理の仕方は?

建築家に聞きました!「2拠点」居住の失敗しないコツ

教えてくれた人
建築家 鈴木宏幸さん

建築家 鈴木宏幸さん

アトリエ137一級建築士事務所主宰。軽井沢や熱海など自然の中のセカンドハウスの建築を数多く手がける。
www.atelier137-archi.com

土地選びは四季を知ることから

軽井沢をはじめ数多くのセカンドハウスを設計している鈴木宏幸さん。かつて「別荘」と呼ばれ、セレブたちの夏の長期休暇用だった住宅が、ここ数年で「セカンドハウス」「週末住宅」と、よりカジュアルなスタイルに。その変化の理由とエクラ世代にも増えつつある「2拠点」居住の成功のポイントを聞いた。

「別荘からセカンドハウスに変化した理由のひとつが、交通の利便性が向上したことです。特に軽井沢は長野オリンピック以降、都心からの新幹線や高速道路のアクセスが格段によくなり、週末にラクに行ける場所になりました。昔の別荘のような長期滞在ではなく、週末にパッと行けることで、多くの人にとって2拠点居住がしやすくなったと思います。今住んでいる場所から2時間程度なら、足を運びやすいと思います」

土地を選ぶときのポイントや、気をつけることは?

「自分たちにとって愛着のある場所、好きで何度も訪れていたり、行き慣れている場所がおすすめです。そして、その土地のいい季節だけ、いい天気の日だけしか知らずに決めてしまわないこと。例えば夏の軽井沢は気持ちがいいですが、冬の寒さはとても厳しい。そんな冬も好き、と思えると一年を通して楽しむことができるのではないでしょうか。勢いで決めず、その土地の四季を知り、こんなふうに過ごしたいという目的があれば、きっと失敗しません。目当ての場所が決まったら、条件を整理しながら、いろいろな土地を見てみましょう。相場観もわかり、いい土地が出たときにタイミングを逃さず決断することができます。地元の不動産屋さんと仲よくなれれば、いい情報を早く入手できるかもしれません」
ゆったりとした平屋
軽井沢・H邸。ゆったりとした平屋。自然を室内に取り込む大きな窓、広々としたワンルームで開放的な間取り。
自然を室内に取り込む大きな窓
広々としたワンルームで開放的な間取り

テラスと駐車場は屋根つきがいい

毎週末訪れるとなると、必ずしも天気がいい日ばかりとはかぎらない。そこで、提案しているのが屋根つきのテラスだという。

「雨の日でも外の空気を感じることができ、そこで過ごす楽しみも増えます。また敷地周辺の環境がよければ、半露天のような開放的なお風呂もいいですね。体を洗って出てくるだけならいつもと同じ。自然を感じながらリラックスして長い時間を過ごせるお風呂は、2拠点目の住居の醍醐味でもあります」

エクラ世代が暮らしやすい、おすすめの間取りは?

「ワンルームに近いプランがおすすめです。大きな空間をつくりやすく、ゆったり過ごせます。アイランドキッチンがあると子供や孫、友人が集まったときも楽しいですよね。ただ、将来的な移住を視野に入れると収納スペースも確保しないといけませんし、より一般住宅のプランに近づいていくと思います」

もうひとつ、特に寒冷地でのセカンドハウスを設計するとき、鈴木さんが提案するのが屋根つきの駐車場。

「軽井沢や富士五湖周辺など、雪が降るエリアは特に。行きは晴天でも帰りは大雪ということもあり、慣れない雪かきをして車を出すのは本当に大変です。屋根つきの駐車場から玄関や勝手口に直接アクセスできるつくりは、将来の移住を考えている場合には絶対におすすめです」
リビングキッチンなど人が集まりやすい空間
君津・S邸。屋根つきのテラス、リビングキッチンなど人が集まりやすい空間。いずれも設計はアトリエ137。軽井沢の土地相場は1坪50万円程度、君津は15万円程度。建築費の目安は1坪100 〜200万円程度(設計料別)。
一戸建ての室内

一戸建ては10~20年ごとにメンテナンスが必要

気になるのが、2拠点目の住宅にかかる維持管理。

「管理の仕方にもよりますが、一戸建ては外壁や屋根のメンテナンスが10〜20年ごとに必要になります。落ち葉が積もったままになってしまうと屋根が腐食しますし、薪ストーブがあれば煙突掃除も必要。リゾートマンションのように管理費の中でメンテナンスをしてくれないので、その点を考えておく必要があります」

いわゆる管理別荘地には管理事務所があり、道をきれいにしたり、木を剪定したり、日常の管理を行ってくれるケースが多い。そのような事務所がない場合、個別に管理会社に頼んだり、建築した工務店に依頼するケースも。

「年数がたってからの修繕はもちろん、日々の管理をお願いできるか、建ててくれた工務店さんに相談してみるといいでしょう」

いいことも悪いことも含め、その土地での暮らしをしっかりイメージすること。それが失敗しない2拠点居住のスタートといえそう。
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