【夏の文芸エクラ大賞】偶然の連鎖が紡ぎ出す衝撃作「心揺さぶる運命賞」4冊

’24年6月~’25年5月の一年間に刊行された文芸作品から、エクラ読者に読んでほしいと本音でおすすめできる本を選んだ「文芸エクラ大賞」。今回は偶然の連鎖が紡ぎ出す衝撃作「心揺さぶる運命賞」受賞作品を紹介。
【夏の文芸エクラ大賞】偶然の連鎖が紡ぎ出す衝撃作「心揺さぶる運命賞」4冊

『大使とその妻』

『大使とその妻』

“日本の美質”は消え去る定めなのか
水村美苗
新潮社 上・下 各¥2,200
軽井沢の山荘で暮らすケヴィンの隣人になったのは元大使夫妻。ケヴィンは古風な夫人に惹かれるが、やがて夫妻は消息不明に。「夫人の数奇な半生がわかる後半は驚きの連続。歴史と運命について考えさせられた」(山本)。

『富士山』

『富士山』

神のみぞ知る人生の岐路が衝撃的
平野啓一郎
新潮社 ¥1,870
「今の自分は偶然と選択の積み重ねでできていると痛感」(細貝)。5編のうち表題作は旅行中の加奈が偶然ある犯罪に気づき、とっさに連れの男性と別行動をとる話。それが彼の運命を変えたのかもという加奈の思いがせつない。

『熊はどこにいるの』

『熊はどこにいるの』

傷ついた過去からどう生きのびる?
木村紅美
河出書房新社 ¥1,980
山奥で暮らす女たちが拾ったのは男の赤ちゃん。その存在は彼女たちだけでなく、不穏な思いを抱えたほかの女性たちの運命も変えていく。「“熊”は動物ではなく、何かを暗示しているよう。読み返して考えたくなった」(K野)。

『逃亡者は北へ向かう』

『逃亡者は北へ向かう』

予期せぬ震災がもたらした犯罪の連鎖

柚月裕子
新潮社 ¥2,090
「逃亡劇だが警察という男性社会が見えるおもしろさも」(斎藤)。震災直後に殺人を犯すが、ある目的のために逃げる男。津波で娘を失いながらも彼を追う刑事。理不尽な運命の受け止め方についても考えさせられるクライムノベル。

文芸エクラ大賞とは?

私たちは人生のさまざまなことを本から学び、読書離れが叫ばれて久しいとはいえ、本への信頼度が高いという実感がある世代。エクラではそんな皆さんにふさわしい本を選んで、改めて読書の喜びと力を感じていただきたいという思いから、’18年にこの賞を創設。

選考基準は、’24年6月~’25年5月の一年間に刊行された文芸作品であり、エクラ読者に切実に響き、ぜひ今読んでほしいと本音でおすすめできる本。エクラ書評班が厳選した、絶対に読んでほしい「大賞」をはじめ、ほかにも注目したいエクラ世代の必読書や、書店員がおすすめのイチ押し本を選定。きっと、あなたの明日のヒントになる本が見つかるはず!

▼4人の選者
文芸評論家 斎藤美奈子
本や新聞、雑誌などで活躍。エクラで「オトナの文藝部」を連載中。文学や社会への鋭い批評が支持されている。

書評ライター 細貝さやか
エクラ書評欄をはじめ、文芸誌の著者インタビューなどを執筆。特に海外文学やノンフィクションに精通。

書評ライター 山本圭子
出版社勤務を経てライターに。女性誌ほかで、新刊書評や著者インタビュー、対談などを手がける。

書評担当編集 K野
女性誌で書評&作家インタビュー担当歴20年以上。女性誌ならではの本の企画を常に思案中。
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