肖像画で学ぶ英国史。

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現在、上野の森美術館では、『ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展―名画で読み解く 英国王室物語―』が開催中(〜'21年1/11、日時指定制)。15世紀から現在に至るまでの英国史に輝いてきた王たちの肖像画、肖像写真が来日しています!

先日の内覧会では、本誌で『絵の中のモノ語り』をご寄稿いただいている中野京子さんが、展覧会ナビゲーターとして出席されていました。ロイヤルブルーのジャケットが実に鮮やか。暗がりでは青いニトリル手袋がちょっと高貴に見えたりも…。

ギャラリートークでは、ビフォア・アフターとしては難問の部類に入る、チャールズ2世が描かれた2つの絵を取り上げてお話しされました(子供の集団肖像画では中央の赤い服の美少年)。

国王たるもの"運"も重要です。チャールズ2世は贅沢三昧の亡命生活中に王政復古と相成り、帰国。ポルトガル王女との結婚によって、多額の持参金とともに紅茶や砂糖、後のインド支配につながるムンバイを獲得します。その後、ロンドンはペストに見舞われ、さらに大火が起こりますが、この火災によってペストは沈静化。さらには、木造建築がひしめく街が焼けたことで、石造建築による大規模な都市計画に着手するなど、凶事が凶事に終わらない治世でした。ただし、正妻にはついに子が出来ず、今わの際には宗教上のスキャンダル発覚。嫡子不在&宗教トラブルという、英国の王位継承問題における二大あるあるによって混乱を招きます。

ちなみに、会場で懐かしく写真を拝見した故ダイアナ妃のご先祖は、チャールズ2世の子のひとりなのだとか。そう聞くと、必ずしも人相がいいとはいえないこの王様についてもいくらか興味が湧いてくることでしょう。

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そのあたりの本格的な解説は、展覧会の公式参考図書となっている『名画で読み解く イギリス王家12の物語』でお楽しみ下ください。ショップで「お立ち読み」とあったのも、そこはかとなくロイヤルな感じがいたします。表紙絵の怖さも、帯のおかげでずいぶん和らいで見えますね。しかし、決してスイカ割りをしているわけではないのが王家の歴史の恐ろしさであります。

「ナショナル・ポートレートギャラリー、つまり肖像画だけの国立の美術館というのは、日本、あるいはフランスでもちょっと想像がつかないですよね。イギリスは、"物語の国"なんです。物語が好きだし、人が好き。歴史好きの国民性で、書店に行くと人物の評伝も多い。絵に描かれた人物についてある程度の知識を持っているから、肖像画だけの美術館も楽しむことができるんだと思います。もちろん日本人の私たちも人相からどんな人だったんだろうと想像したり、時代ごとのファッションの変遷を追うことはできますが、あらかじめ英国史の大枠を頭に入れておくと、会場で作品を見るのがもっとおもしろくなるはずですよ」と中野京子さん。

現在発売中の『エクラ』12月号では、ヘンリー8世やエリザベス1世ら、テューダー朝の5人の王たちとジェーン・グレイについて中野さんに解説していただきました。この王朝、現在の英国の土台にして展覧会の導入部分にあたりますので、最低限の予習にお役立て下さい。
(編集B)

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