『マダム・マロリーと魔法のスパイス』×「ルイ・ロデレール クリスタル」/品格と優しさ。マダムの人柄を物語る、歴史に彩られたシャンパーニュ【シネマに乾杯!vol.4】

ワインを知ると映画はもっと楽しい!エクラでもおなじみのワイン&フードジャーナリストの安齋喜美子が、映画の中に登場するワインやシャンパーニュを楽しく解説!第4回目は映画『マダム・マロリーと魔法のスパイス』をご紹介!
 マダム・マロリーと魔法のスパイス
 幸運の扉は、いつ、どこで開くかわからない――。カダム一家は、故郷インドでの暴動から逃れ、新天地を求めてヨーロッパへと向かう。火事で家も一家の中心だった母も失い、失意の底にいた。一家はポンコツ車でフランスにやってくるが、途中、とうとう車が故障し、田舎町のサン・アントンに足止めされる。だが、実はその街にこそ、幸運の扉があったのだ。
 その扉を開けたのが次男のハッサンだ。彼には母親譲りの料理の才能があった。父親(以下、通称パパ)は「ル・ソール・プリョルール」というミシュラン1ツ星のフレンチ・レストランの向かい側に空き家を見つけ、ここでインド料理の店を開くことを決意する。とはいえ、フランス人にとって馴染みのないインド料理の店には一向に客が入らない。
 マダム・マロリーと魔法のスパイス
 パパは店を盛り上げようと大音量で音楽を鳴らし、店の前で客の呼び込みを始めるのだが、これが「ル・ソール・プリョルール」のマダム・マロリー(ヘレン・ミレン)の逆鱗に触れた。オーナーであった夫亡き後、この格式ある店を守るのは自分。著名人の客も多いことから”街の顔”として品格を保たなくてはならないという使命感も持っていた。

 だから、街の雰囲気にそぐわない異文化のレストランの存在が気に入らず、早速パパに苦情を訴えたのだが、豪気なパパが屈するわけもなく、“フランス料理vsインド料理の仁義なき戦い”が始まったのだった。
 マダム・マロリーと魔法のスパイス
 一方で、ハッサンには新たな人生が始まっていた。車が故障した時に修理工場を教えてくれたマルグリットと交際していたのだ。彼女はマダムの店のスーシェフ(副シェフ)で、二人は会うたびに料理や食材のことを語り合っていた。ハッサンは次第にフランス料理に興味を持つようになるのだが、自分がパパの店でシェフを務めていたことから、家族には言いだせないでいた。マルグリットはハッサンに、彼の料理をマダムに味見をしてもらうよう勧め、そしてある日、現実となったのだ。
 マダム・マロリーと魔法のスパイス
 ハッサンの料理をひと口食べたマダム・マロリーは、彼が天才であることに気づく。とはいえ、彼は“異文化”。プライドが高い彼女にとっては素直にそれが認められない。当然、パパも息子の夢には大反対。だが、ある日、悶々としていたマダムは彼をシェフとして迎えるため、“敵陣”に乗り込み、こう言うのだ。「道を1本挟んだその店は“彼の未来”!」と。
 マダム・マロリーと魔法のスパイス
 その後、ハッサンのスパイスを使ったフランス料理は評判となり、店はますます繁盛していく。そして「ミシュラン」の発表の日。レストランで電話を待つのはマダムと、なんとパパ! ふたりは、互いに理解し合える関係になっていたのだ。この時、マダムが“2ツ星”に昇格したらお祝いに開けようと準備していたのが「ルイ・ロデレール クリスタル」だ。
 ワインファンの憧れともいえるシャンパーニュで、その味わいは、まさに”エレガンスの極み“。「ルイ・ロデレール」のシャンパーニュをこよなく愛したロシア皇帝アレクサンドル2世が、暗殺から身を守るために、平らな瓶底のクリスタル製のボトルを特別に作らせたことからこの名がつけられた。透明のボトルで、瓶底にくぼみがなければ爆薬を隠すことはできないからというのがその理由だ。”クリスタル“は歴史を彩ったシャンパーニュでもあるのだ。
 マダム・マロリーと魔法のスパイス
 この“クリスタル”の登場シーンが何とも微笑ましい。ミシュランからの連絡を電話の前でじっと待つマダムに、パパは「やつらにかまわず開けて飲むんだ!」と言って、ボトルを開けようとする。マダムは「ダメよ、開けないで」と懇願するが、後の祭り。パパは「星なんか! スターはあなただ!」と、ポンッとコルクを抜いてしまうのだ。“2つ星に昇格“の連絡が来たのは、まさにその時。彼らは無事、”クリスタル“で祝杯を挙げたのだ。そして、これをきっかけにマダムはハッサンをパリへ送りだす。「世界が彼を待っているのよ」と周りを説得して。
 マダム・マロリーと魔法のスパイス
 映画では、他のシーンでも“クリスタル”が登場することから、マダムの店のハウスシャンパーニュが“クリスタル”であることがわかる。それがあまりにも彼女にぴったりで、感動してしまった。“クリスタル”は「格」のあるシャンパーニュだ。店の格の高さをさりげなく物語るのは当然ながら、マダム自身も誇り高く、品格を重んじる。加えて、広くは知られていないことだが、“クリスタル”は最新の2012年ヴィンテージから完全なビオディナミで造られ、ナチュラルで優しい味わいを持つ。これもまた、愛に満ちたマダムの人柄と重なるのだ。
 最後に、パリで大きな成功を収めたハッサンがマダムの店に戻ってくるのだが、この時のセリフが感動的だ。「3つめの星は、あなたたちと取ります」――。それはおそらく夢ではない。そしてその幸福の瞬間を見守るのも、きっと「ルイ・ロデレール クリスタル」なのだろう。
マダム・マロリーと魔法のスパイス
©2015 DreamWorks II Distribution Co., LLC

マダム・マロリーと魔法のスパイス

ブルーレイ+DVDセット ¥3,800+税
DVD ¥3,200+税
発売元/ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
ルイ・ロデレール クリスタル

「ルイ・ロデレール クリスタル 2012」(ボックス付き)

 フランス・シャンパーニュ地方。ピノ・ノワールとシャルドネをブレンド。1776年創設の歴史あるメゾンで、エリゼ宮などでも使用されている。「ルイ・ロデレール クリスタル」の誕生は1876年。現在では、ビオディナミ農法で育てられた自社畑のブドウで造られる。白い花、ハチミツ、トースト、スパイスの香り。シルキーな舌触りで余韻も長い。750ml \38,000
■「ルイ・ロデレール クリスタル」のお問い合わせ先/エノテカ 0120-81-3634(フリーダイヤル)
取材・文/安齋喜美子
ワイン&フードジャーナリスト。女性誌を中心に多くの媒体で執筆。ふだんごはんからスイーツ、星つきレストランまで幅広くカバーする。映画が大好きで、登場するワインは必ずチェック。最近は海外の醸造家とオンラインでワインテイスティングの日々を過ごす。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ。

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