コロナ禍を生き抜く力を得られる!女性の評伝「ノンフィクション・エッセー」5選

年齢を重ねてから読むとおもしろみが格段に増す「評伝」のうち、今回はノンフィクション・エッセーをピックアップ。事実中心のこのジャンルには、生涯を丹念に追ったものからテーマにふさわしい人物を集めたものまで、多彩な味わいが。

1.「溶姫/鍋島胤子/池田絲ほか」の評伝

姫君たちの明治維新

『姫君たちの明治維新』

岩尾光代 文春新書 ¥1,078

地下足袋で荒れ地に入植した姫君もいた!

将軍家や大名家、公家の姫君など31人の数奇な人生を歴史ジャーナリストがまとめた一冊。幕末の動乱に巻き込まれた熾(たるひと)親王をひたすら待ち続けた水戸徳川家出身の貞子。嫁ぎ先の前田家が現在の東大赤門をつくって迎えるなど丁重な扱いを受けたが、晩年は寂しかった将軍家出身の溶姫。旧佐賀藩主の夫とともにイギリスで社交界デビューした公家出身の鍋島胤子……。多種多様な人生だが、すべての女性から感じられるのはある種の覚悟。人生を運・不運のせいにしてはならないと思えてくる。

2.「石井桃子」の評伝

ひみつの王国

『ひみつの王国 評伝 石井桃子』

尾崎真理子 新潮文庫 ¥1,034

子供の本の第一人者・101年の人生

『ノンちゃん雲に乗る』の著者、『クマのプーさん』などの翻訳者として有名だが、素顔はあまり知られていなかった石井桃子。彼女が87歳のときの自伝的小説を読んで強い関心を抱いた文芸記者が、石井の晩年に行ったロングインタビューなどをもとに書いたのが本作。児童文学への愛、昭和の青春の光と影、戦後の農村暮らしへの苦い思い……。石井を形成するエピソードを積み上げて完成した労作を読むと、“好き”を続けることや子供の読書の大切さを胸に刻み、次世代に伝えたい気持ちに。

3.「森瑤子」の評伝

森瑤子の評伝

『森瑤子の帽子』

島﨑今日子 幻冬舎文庫 ¥913

あの大きな帽子は“鎧”だったのか

38歳でデビューして専業主婦から流行作家になり、52歳で亡くなる直前まで書き続けた森瑤子。もう若くない女の愛と性などをテーマに旺盛な執筆欲を見せ、バブル期には華やかなファッションでも注目されたが、背後には大きな葛藤が。彼女への取材経験のあるジャーナリストによる本作は、保守的な英国人の夫との確執など葛藤の正体に迫っているが、一方で見えてくるのは今も関係者の記憶に残る森の存在感。彼女を知る世代ならその理由を考えてみたくなるノンフィクション。

4.「島尾ミホ」の評伝

島尾ミホの評伝

『狂うひと「死の棘」の妻・島尾ミホ』

梯久美子 新潮文庫 ¥1,210

ミホは嫉妬に狂うだけの妻ではなかった!

昭和の名作にして私小説の傑作といわれる島尾敏雄の『死の棘』。夫の日記を見て不倫を知った妻が彼を糾弾するうちに神経に異常を来すという内容だが、ノンフィクションを手がける著者は作家でもあった妻・ミホに取材を重ね、その死後は資料を読み込んで衝撃的な事実にたどりつく。巻末の謝辞によると島尾夫妻の長男は著者に「きれいごとにはしないでくださいね」といったという。それに応えた本作はふたりの“書くひと”の狂気に迫ると同時に謎の多いミホの人生を明らかにしている。

5.「レディー・ ガガ/紫式部/向田邦子ほか」の評伝

この年齢だった!

『この年齢(とし)だった!』

酒井順子 集英社文庫 ¥528

27人の有名女性、転機の年齢は?

誰にでも転機はあるものだが、エッセイストの酒井さんいわく〈彼女達(女性偉人達)は皆、転機を利用することが上手〉だとか。古今東西の有名女性の人生を「転機」を切り口に読み解いた本作は、驚いたり感動したりしながら凡人の自分を見つめ直したくなる。レディー・ガガが「怖いもの知らず」になったのは11歳で名門女子校に入学したのがきっかけ!?、亡くなる前に死の準備をしていた向田邦子51歳の自立心など、読みやすいエッセー集だが27人の個性を鋭くとらえている。

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