『たけくらべ』の装画、くらべ。

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「風の時代」なんてどこ吹く風、おそらく読まないであろう小村雪岱の装幀本を漁っていたときにビビビ!と来たのが、『樋口一葉たけくらべ評釋』(鈴木敏也=著、目黒書店)。

これ、安西水丸さんによる『日本の文学』シリーズ(市古貞次・小田切進=編、ほるぷ出版)の装画と発想が同じです。道具立てで象徴的に描く「留守模様」の延長線上にあると言えましょう。
 
雪岱のほうは時雨の情景を含んだ正統派。安西さんのは一歩進んでというべきか、いつものようにというべきか、あのあっけらかんとした空気が漂っています。後者に描かれた布は「紅入り友仙」ではなく「紅の絹はんけち」なのかもしれませんが、個人的に敬愛する二人による、同じ手法の、異なる味わい。いいですねえ。
 
1985年刊行の『日本の文学』は全集もののデザインとしては異色で、一見、子供じみた印象を受けるかもしれません。しかし、このゆるさと緊張が同居する色の世界、見れば見るほど大人っぽいなと感じ入ります。紙にされる木々には申し訳ないけれど、表紙の余白が焼けたり汚れたら買い替え可能な文庫版で再販されたらと秘かに願っている、美しい本のひとつです。
 
イラストレーターの安西水丸さんが亡くなって、もう7年。来たる4/24~8/31、世田谷文学館(世田谷区南烏山1-10-10)で展覧会が開催されるそうです。これはうれしい春のニュースでした。
(編集B)
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