なぜ起こる?「夫の実家」問題について専門家が解説

「夫の実家」問題はなぜ起こるのでしょうか。その背景について専門家ふたりが解説。そこには、義両親の高齢化と、そこから始まる同居や介護、相続、そして義きょうだいとのトラブルがありました。
教えてくれた人
小谷みどりさん

小谷みどりさん

シニア生活文化研究所所長。奈良女子大学大学院修了。’19年まで第一生命経済研究所首席研究員を務める。専門は死生学や生活設計論。著書に『ひとり終活』『「ひとり死」時代のお葬式とお墓』『没イチ』など。
大美賀直子(おおみかなおこ) さん

大美賀直子(おおみかなおこ) さん

公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラー等の資格をもち、カウンセラー、講師など幅広く活躍。All About「ストレス」ガイド。『長女はなぜ「母の呪文」を消せないのか』ほか著書多数。

親世代(70代80代)の火種

持ち家率がとても高く、 相続などで争いが起きやすい

持ち家率がとても高く、相続などで争いが起きやすい

団塊から上の世代(70〜80代)は、人生最大の目標が「家を持つこと」という人が多く、持ち家率は80%を超える。「田舎の一軒家でなければかなりの資産になるので、相続問題が起こりやすくなります」(小谷さん)。

いわゆる団塊世代で、 自分のがんばりを 他人にも求めやすい

いわゆる団塊世代で、自分のがんばりを他人にも求めやすい

最近、「シルバーモンスター」の呼称が生まれるなど、社会問題にもなりつつある70歳以上の高齢者。「戦後の日本を自分たちがつくったという誇りがあり、自説に対するこだわりが激しく手ごわいです」(小谷さん)。

ネットに慣れない情報弱者。 コミュニケーションが とりにくいことも

ネットに慣れない情報弱者。コミュニケーションがとりにくいことも

「スマホを使えず、テレビなど従来のメディアに頼りがちな義両親世代は情報収集に疎く、視野が狭くなって自分の意見に固執しがちです。ここは子供世代が義両親をサポートして、世界を広げてあげて」(大美賀さん)
 

義きょうだい世代の火種

エクラ世代と同世代で、 マウントの取り合いになりやすい

エクラ世代と同世代で、マウントの取り合いになりやすい

家事に子育て、義実家との付き合いもがんばりたい、という『いい妻・いい嫁』志向が不要な緊張感を生む。「特に同性の義きょうだいがいると軋轢が起きやすいので、義姉や義妹、男きょうだいの妻に対して配慮が必要です」(大美賀さん)。

50代男性の 1/4は独身者。 親との同居による問題が起きやすい

50代男性の1/4は独身者。親との同居による問題が起きやすい

年金生活が始まって10年くらいたつと資金不足が緊急課題に。「義両親とニートの子供、両方の金銭的援助がのしかかることも。支援をするのか、するならいくらか、夫婦であらかじめ話し合っておきましょう」(小谷さん)。

 

死後離婚の増加=義実家問題に悩む人が増えている?

がんばり屋で、すべてにおいてパーフェクトを目ざしたいエクラ世代の特徴が、夫の実家問題を生んでしまうことがある。

「いい嫁になりたいという気持ちはわかります。でも、がんばりすぎると周囲に不要な緊張感を与えて、例えば義理の妹が『私も負けないようにがんばって子育てしなきゃ』と熱くなり、それが子育てマウンティングに発展する可能性もあります」(大美賀さん)


小谷さんは「死後離婚」というキーワードから、時代とともに義実家付き合いの状況がどう変化しているかを解説する。

「死後離婚とは配偶者(夫または妻)の死亡後に『姻族関係終了届』を提出して、亡くなった配偶者(夫または妻)の親族との姻族関係を終わらせることをいいます。ここ20年で死後離婚の数は2.5倍に増加。それはつまり配偶者が生きている間に、親族=義実家の人々と良好な関係を結べなかった人が増えていることを意味しています。死後離婚が決して悪いわけではありませんが、縁あって結んだ親族との絆を切るというのは重大な決断です。こういう社会現象があることも知ったうえで、義実家との付き合いを改めて考えてみてはいかがでしょうか」

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