そんななかで最近、私的に妙に目につくなあと感じるのが“バディ”ものです。男同士が二人一組で(女性が入る場合もありますが)タッグを組みつつ奔走する姿を描くもので、日本でも刑事ドラマなどでよく見かけますよね。まあ、今も昔もドラマの定番ちゃあ定番ではありますが、とはいえ、私のなかではあの伝説的名作『傷だらけの天使』(1974〜1975年日テレで放送)ほどワクワク高揚するような、心にど〜んと重く響くような、そんなバディ作品に出会うことはめったになく……。
チョン・ヘインが骨太な演技で魅せる!『D.P.−脱走兵追跡官−』【見ればキレイになる⁉韓流ドラマナビvol.16 前半】
エクラの美容記事でもおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ。16回目の今回は、軍隊文化を描いたチョン・ヘイン主演の社会派ドラマ『D.P.−脱走兵追跡官−』をご紹介!

「D.P.」に任命された兵士の、秀逸な“バディもの”
韓国ドラマ、ジャンルで言えば何がお好きですか? 本数的には、やっぱり男女の恋愛を描いたロマンス系がまだまだ圧倒しているように思われますが、ここ数年はサスペンスもヒューマン系も社会派ドラマも見ごたえある作品が続々。
そんななかで最近、私的に妙に目につくなあと感じるのが“バディ”ものです。男同士が二人一組で(女性が入る場合もありますが)タッグを組みつつ奔走する姿を描くもので、日本でも刑事ドラマなどでよく見かけますよね。まあ、今も昔もドラマの定番ちゃあ定番ではありますが、とはいえ、私のなかではあの伝説的名作『傷だらけの天使』(1974〜1975年日テレで放送)ほどワクワク高揚するような、心にど〜んと重く響くような、そんなバディ作品に出会うことはめったになく……。
そんななかで最近、私的に妙に目につくなあと感じるのが“バディ”ものです。男同士が二人一組で(女性が入る場合もありますが)タッグを組みつつ奔走する姿を描くもので、日本でも刑事ドラマなどでよく見かけますよね。まあ、今も昔もドラマの定番ちゃあ定番ではありますが、とはいえ、私のなかではあの伝説的名作『傷だらけの天使』(1974〜1975年日テレで放送)ほどワクワク高揚するような、心にど〜んと重く響くような、そんなバディ作品に出会うことはめったになく……。

まあ、時代といえば時代。高度成長期のまだまだ貧困が圧倒する社会のなかで、一か八かを狙って必死でもがき続ける弱者たちの、怖いもの知らずに突き進む大胆さ。ほんのささいな夢さえも叶えられずに沈んでいく無力感。バカみたいな純粋が砕けて散ってしまう切なさ。物質的には豊かになった今の時代では、あのアウトローという存在の、強烈なまでの痛快さや胸締め付けられるような悲哀を紡ぎ出すのは、なかなか……。もちろん時代の郷愁も大きいのですが。
そんななかで、この作品です。タイトルの「D.P.」とはDeserter(脱走兵) Pursuit(追跡)の略で、軍から脱走した兵士を捕まえる特殊な任務のことを指すのだそう。ドラマは、そのD.P.に任命された兵士2人組が、それぞれに事情を抱える脱走兵たちを追跡するというお話です。そう、バディもの。

主人公となるのは、兵役によって軍に入隊したばかりのジュンホ(チョン・ヘイン)。彼が配属したのは、軍隊でも最も閉鎖的とされる憲兵隊で、ドラマ冒頭、先輩兵士から暴力的なイジメの洗礼を受けるという、初っ端からかなり刺激的なスタートです。そんなイジメの横暴にも物怖じせずに冷静に対処するジュンホは、上官のボムグ(キム・ソンギュン)からD.P.に任命され、ソンウ(コ・ギョンピョ)という先輩兵士と脱走兵逮捕のため街へと向かうのですが、慣れない任務で勝手がわからず大失態を犯す事態に。失意に沈むジュンホですが、再びD.P.に任命され、上等兵のホヨル(ク・ギョファン)と新たなバディを組んで、任務を遂行するのですが……。

脚本は、原作のウェブ漫画を描いた作者で、実際にD.P.だった人!
脚本を担当したキム・ボトンは、原作のウェブ漫画を描いた作者で、軍隊で実際にD.P.として任務に就いていた人。ご存知の通り、韓国の成人男子には、兵役に就くという義務が課せられていますが、20歳から28歳までの間の1年半って、私たち世代とはまた違った意味でかなり貴重な時間。
その大切な期間をそれまで生きてきた平穏無事な世界とは全く異なる未知なる社会に身を投じなければならないという現実。一度入隊すれば、もちろん自由に外に出ることはできないし、上官の命令には絶対に背くことができないという閉鎖された特殊な社会。日本に暮らす私たちには想像すらできない世界ですが、それゆえに、かなり深刻な問題も抱えていると言われているようです。
その大切な期間をそれまで生きてきた平穏無事な世界とは全く異なる未知なる社会に身を投じなければならないという現実。一度入隊すれば、もちろん自由に外に出ることはできないし、上官の命令には絶対に背くことができないという閉鎖された特殊な社会。日本に暮らす私たちには想像すらできない世界ですが、それゆえに、かなり深刻な問題も抱えていると言われているようです。

ドラマの舞台となるのは2014年。実は、この年の韓国では江原道高城郡兵長乱射事件という脱走兵がらみの衝撃的な事件が起こったのですが、それは、当時、若干22歳だった兵長が同僚の5名を射殺して逃走するという韓国中を震撼させた事件で、まだまだ年若い兵長をそこまで追い詰めてしまったのも、同僚からの執拗ないじめであったとされています。そして、その後の公判で22歳の兵長に下されたのは情状酌量の一切ない、死刑宣告……。
そんな実際に起こった事件をモチーフに、さまざまな脱走兵がそれぞれに抱える、ひりつくような事情と、権力主義に傾倒する軍の体制自体に焦点をあてて、D.P.経験者である作者自らが綴っていくのがこの作品。
そんな実際に起こった事件をモチーフに、さまざまな脱走兵がそれぞれに抱える、ひりつくような事情と、権力主義に傾倒する軍の体制自体に焦点をあてて、D.P.経験者である作者自らが綴っていくのがこの作品。
あのチョン・ヘインが、骨太・硬派なキャラクターで魅せる!

主人公のジュンホを演じるのは、以前、この連載でも紹介した『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』で年下彼氏のムーブメントまで巻き起こしたチョン・ヘイン。
以来、『ある春の夜に』『半分の半分』と主演作が続いていますが、これまではそのちょい甘めなルックスからか、ロマンスものがほとんどでしたが、今回の作品で一変。優男風ビジュアルの下に見え隠れしていた、骨太・硬派なキャラクターを抑制の効いた演技で全面に押し出しながら、たっぷりと魅せてくれていて、『あなたが眠っている間に』のサブキャラ時代から追いかけている韓流仲間のヘイン・ペン(ファン)の間では、待ってましたの拍手喝采の嵐。

そんな彼のバディ役となる上等兵ホヨルを演じるのはク・ギョファン(私の周囲ではロンブー淳と呼んでいる人も。確かに似ている……)。
映画『新感線半島 ファイナル・ステージ』やNetflixオリジナル作品の『キングダム:アシンの物語』などで、脇役ながら強烈な味のあるキャラを演じていましたが、それでもかなりな韓流ドラマフリークでも、なじみ浅い俳優さん。なのに、年齢はすでに38歳という中堅どころという。
聞けば、ずっとインディーズ映画で活躍してきた人だそうで、2016年の『夢のジェーン』という作品で数々の賞を受賞しているかなりな実力派(韓国インディーズ界ではスーパースター的存在だそう)。この作品では、ひょうひょうと軽妙にして人情味あるD.P.の組長という役どころを演じているのですが、ヘイン演じるクールなジュンホとのバランスも絶妙で、彼の登場によって、その味わいや幅がぐっと広まり、一気に作品の面白みが増していきます。
映画『新感線半島 ファイナル・ステージ』やNetflixオリジナル作品の『キングダム:アシンの物語』などで、脇役ながら強烈な味のあるキャラを演じていましたが、それでもかなりな韓流ドラマフリークでも、なじみ浅い俳優さん。なのに、年齢はすでに38歳という中堅どころという。
聞けば、ずっとインディーズ映画で活躍してきた人だそうで、2016年の『夢のジェーン』という作品で数々の賞を受賞しているかなりな実力派(韓国インディーズ界ではスーパースター的存在だそう)。この作品では、ひょうひょうと軽妙にして人情味あるD.P.の組長という役どころを演じているのですが、ヘイン演じるクールなジュンホとのバランスも絶妙で、彼の登場によって、その味わいや幅がぐっと広まり、一気に作品の面白みが増していきます。

さらに、2人の上司でパク・ボムグ軍曹を演じるキム・ソンギュン(権力体質の上からの命令に憤怒しながら、だまって従うしかない自分の不甲斐なさも感じている、味あるいいお役)、D.P.司令官のイム・ジソプ大尉を演じるソン・ソック、大将役のヒョン・ボンシク、ジュンホの先輩兵士で気弱な優しいチョ・ソクポンを演じるチョ・ヒョンチョル、イジメを首謀するファン・ジャンス兵長を演じるシン・スンホなどなど、2人のまわりを固める重要キャストもそれぞれに絶妙のハマり方で、上手い、上手すぎる。

映画『コインロッカーの女』のハン・ジュニ監督の初ドラマ作品
そして、演出は私の愛してやまない映画『コインロッカーの女』のハン・ジュニ監督(ドラマ演出は初めてらしい)。
軍という不条理な世界のなかで無力にならざるを得ない若者たちの重苦しいリアルを、アイロニカルなコミカルさもスパイス的にはさみながらスピーディかつ重厚に描き出していく手腕はさすがです。追跡劇&サスペンスタッチのエンタメとしての痛快さと、社会派ヒューマンドラマとしてのずっしりと胸に残る後味と。抵抗不能な闇のなかで生きていくしかない若者たちの刹那。時代の郷愁なくしても久々に時間を忘れて夢中になれる作品。
軍という不条理な世界のなかで無力にならざるを得ない若者たちの重苦しいリアルを、アイロニカルなコミカルさもスパイス的にはさみながらスピーディかつ重厚に描き出していく手腕はさすがです。追跡劇&サスペンスタッチのエンタメとしての痛快さと、社会派ヒューマンドラマとしてのずっしりと胸に残る後味と。抵抗不能な闇のなかで生きていくしかない若者たちの刹那。時代の郷愁なくしても久々に時間を忘れて夢中になれる作品。

全6話で1話50分程度と、韓国ドラマにしてはかなり短めなので、観始めたらあっという間です。ドキュメンタリーのように映像をつなげたタイトルバックも粋。それにしても韓国の軍社会が抱える暗部をここまで浮き彫りに表現してしまう韓国エンタメ界の懐の深さにはマジで感服しきりです。
■Netflixシリーズ『D.P. -脱走兵追跡官-』独占配信中

山崎敦子
旅行記事に人物インタビュー、ドラマ紹介、実用記事から、着物ライターとさまざまな分野を渡り歩き、今では美容の記事を書くことも多くなったさすらいのライター。襲いかかるエイジングと闘いながら、ウキウキすること、楽しいことを追い求め続ける日々を送る。
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