熊谷は文化服装学在学中の1968年に、第24回装苑賞に輝きます。1970年に渡仏し、カステルバジャックのアシスタントを経て、ロジェ・ヴィヴィエ、フィオルッチのための靴のデザインをフリーランスとして手掛けるようになり、1981年にパリに自身のシューズプティックをオープン。1983年からは日本でも靴とプレタポルテを展開し、亡くなる87年には第5回毎日ファッション大賞を受賞しています。
履物としての機能だけでなくオブジェのような美しさをあわせもつ、熊谷登喜夫の靴。動物や植物、果物、レーシングカー、さらにはカンディンスキー、ブランクーシ、ポロックなどのアートまで、インスピレーションソースは実に多彩です。現実を飛び越えた「食べる靴」のアプローチは古びることがなく、そのアーティスティックな発想は、たとえば'22年春夏のロエベの奇抜なヒールデザインにも通底しているかもしれません。
京都服飾文化財団に附属するKCIギャラリーで開催される本展では 熊谷氏が自身のブランド「トキオ・クマガイ」で発表した靴を中心に、財団の収蔵する18世紀から現代までの靴を展示。靴デザインの歴史的変遷もあわせて紹介する内容となっています。