空也上人、半世紀ぶりに東京へ。
東京の中心で、「南無阿弥陀仏」と唱える空也さん。
現在、東京国立博物館の本館特別5室で、特別展『空也上人と六波羅蜜寺』(~5/8)が開催中です。極楽往生を願う身としては行かないわけにはまいりません。
空也上人といえば、日本史でも習う平安中期の「市聖(いちのひじり)」ですね。運慶の四男・康勝が手掛けたこの『空也上人立像』は、教科書に必ずといってよいほど登場しています。仏像界において本作はかなり奇抜に見えますが、これは上人にまつわる伝承を、没後200年以上を経てマジメに3D化した結果。表現自体はとてもリアルです。
その口から音符のように小さな6体の仏が出ているのは、唱えた「南・無・阿・弥・陀・仏」がそのまま阿弥陀如来に変じたという逸話の具現化。鉦鼓と撞木は念仏行脚のキーアイテム。そして杖の頭についた鹿の角と、ぬめっとした鹿革の衣は、空也上人が鳴き声に親しみを覚えていた鹿が猟師に仕留められたため、形見として譲り受けたものなのだとか。
そうしたディテールの写実性も見事ですが、足をしっかり開き、前傾姿勢で少し顔を上げたモデリングと、若干の陶酔感のある表情がこの彫像の魅力を支えていると思います。会場ではぜひ360度ぐるりと拝してください。
写真のフィギュアはグッズ売り場で販売されていたもの(※4/16に完売)。延々とフィギュアの写真で引っ張っているのは、内覧会に行けなかったからです……。いやはや残念至極。
現在、東京国立博物館の本館特別5室で、特別展『空也上人と六波羅蜜寺』(~5/8)が開催中です。極楽往生を願う身としては行かないわけにはまいりません。
空也上人といえば、日本史でも習う平安中期の「市聖(いちのひじり)」ですね。運慶の四男・康勝が手掛けたこの『空也上人立像』は、教科書に必ずといってよいほど登場しています。仏像界において本作はかなり奇抜に見えますが、これは上人にまつわる伝承を、没後200年以上を経てマジメに3D化した結果。表現自体はとてもリアルです。
その口から音符のように小さな6体の仏が出ているのは、唱えた「南・無・阿・弥・陀・仏」がそのまま阿弥陀如来に変じたという逸話の具現化。鉦鼓と撞木は念仏行脚のキーアイテム。そして杖の頭についた鹿の角と、ぬめっとした鹿革の衣は、空也上人が鳴き声に親しみを覚えていた鹿が猟師に仕留められたため、形見として譲り受けたものなのだとか。
そうしたディテールの写実性も見事ですが、足をしっかり開き、前傾姿勢で少し顔を上げたモデリングと、若干の陶酔感のある表情がこの彫像の魅力を支えていると思います。会場ではぜひ360度ぐるりと拝してください。
写真のフィギュアはグッズ売り場で販売されていたもの(※4/16に完売)。延々とフィギュアの写真で引っ張っているのは、内覧会に行けなかったからです……。いやはや残念至極。
さて、私は若かりし頃に六波羅蜜寺を何度か参拝し、2012年にも輪行ついでの記念撮影↑をしているのですが、信心が欠落していてまともに見えていなかった仏像がありました。それは11世紀の作の『地蔵菩薩立像』(写真2枚目)。会場に入った瞬間、その穏やかさと円満な表情に定朝を感じ、「こっ、これは救われたい」と心が震えました。
この仏像にまつわる奇譚が『今昔物語集』に出ています。死して閻魔庁に召し出された丹波国の前司・源国挙が、そこで出会った地蔵の化身に対し、もし蘇ることができたなら三宝を奉り地蔵菩薩に帰依すると誓った結果、ならばやってみせよということになって、息を吹き返します。国挙は果たして入道し、大仏師・定朝に金色の地蔵菩薩像を造らせて六波羅蜜寺で法会を行い、そこに立ち会った人々は地蔵菩薩への信仰を深めたのだとか。
私は、「今の世に定朝作と見なせる出来栄えの仏像は、平等院鳳凰堂にしか残っていないんじゃないか」とばかり思っていましたが、本作(の特に上半身)は明らかに「定朝様」の中で頭ひとつ抜けています。伝説をただの伝説で済ませられないところに、六波羅蜜寺の凄みを感じました。
伝説は境外にもありまして、松原通の「幽霊子育飴」(写真3枚目)のお話は有名ですね。土葬された女性の遺骸から数日後に赤子が産まれ、泣き声に気づいた人々によって救われた。そういえば赤子が助けられるまでの間、夜な夜な飴屋に現れる婦人がいたが、それは我が子のために幽霊となり飴を買いに来ていた母の姿だったのであろう……、と。
「ほんまかいな」な由来譚ですが、生死の往還にまつわる伝承が多いのは、かつて六原が「鳥辺野」という葬送地の入口で、あの世とこの世の境界とされたからでしょう。篤い信仰心、母の深い愛といった強い思いがあれば、その境界も越えられるというわけですね。先ほどの『地蔵菩薩立像』には「鬘掛地蔵」という逸話もあり、こちらも"亡き母"が関係しています。
さて、話を空也上人に戻しますと、上人が六波羅蜜寺の前身・西光寺を開いたのは、都に疫病が蔓延した時代でした。上人が世の安寧を願って手自ら彫り上げ、ともに市中を廻ったという『十一面観音立像』が、六波羅蜜寺の秘仏本尊として守り伝えられています。御開帳は辰年なので、次の機会は2024年の予定。それまでに新型コロナウィルスの不安が消え去って、平穏な参拝が叶いますように。
(編集B)
この仏像にまつわる奇譚が『今昔物語集』に出ています。死して閻魔庁に召し出された丹波国の前司・源国挙が、そこで出会った地蔵の化身に対し、もし蘇ることができたなら三宝を奉り地蔵菩薩に帰依すると誓った結果、ならばやってみせよということになって、息を吹き返します。国挙は果たして入道し、大仏師・定朝に金色の地蔵菩薩像を造らせて六波羅蜜寺で法会を行い、そこに立ち会った人々は地蔵菩薩への信仰を深めたのだとか。
私は、「今の世に定朝作と見なせる出来栄えの仏像は、平等院鳳凰堂にしか残っていないんじゃないか」とばかり思っていましたが、本作(の特に上半身)は明らかに「定朝様」の中で頭ひとつ抜けています。伝説をただの伝説で済ませられないところに、六波羅蜜寺の凄みを感じました。
伝説は境外にもありまして、松原通の「幽霊子育飴」(写真3枚目)のお話は有名ですね。土葬された女性の遺骸から数日後に赤子が産まれ、泣き声に気づいた人々によって救われた。そういえば赤子が助けられるまでの間、夜な夜な飴屋に現れる婦人がいたが、それは我が子のために幽霊となり飴を買いに来ていた母の姿だったのであろう……、と。
「ほんまかいな」な由来譚ですが、生死の往還にまつわる伝承が多いのは、かつて六原が「鳥辺野」という葬送地の入口で、あの世とこの世の境界とされたからでしょう。篤い信仰心、母の深い愛といった強い思いがあれば、その境界も越えられるというわけですね。先ほどの『地蔵菩薩立像』には「鬘掛地蔵」という逸話もあり、こちらも"亡き母"が関係しています。
さて、話を空也上人に戻しますと、上人が六波羅蜜寺の前身・西光寺を開いたのは、都に疫病が蔓延した時代でした。上人が世の安寧を願って手自ら彫り上げ、ともに市中を廻ったという『十一面観音立像』が、六波羅蜜寺の秘仏本尊として守り伝えられています。御開帳は辰年なので、次の機会は2024年の予定。それまでに新型コロナウィルスの不安が消え去って、平穏な参拝が叶いますように。
(編集B)
What's New
Feature
-
読者モデル 華組のユニクロ・GUコーデ
真似したい!50代ファッションブロガーの着こなし集
-
日常を刷新する「レキップ」の洗練シャツ
この春、ワンランク上のシャツの着こなしで日常をアップデート
-
一度は泊まりたい!高級ホテル・旅館
日常を忘れて至福のときが過ごせる極上の旅へ
-
大人の上品さが漂うデニムスタイル
ほどよくカジュアルで上品にあかぬける大人のデニムコーデ
-
50代から行いたい早めの「フレイル対策」
「ペットボトルが開けられないことがある」なら要注意!
-
「ペダラ」の新作スニーカーとサンダル登場
歩きやすくデザイン性に優れた新作シューズで寄り道を楽しもう!
-
エクラ公式通販の人気アイテムランキング
もう迷わない!50代が買うべき旬の服
-
50代におすすめのトレンドアイテム
人気ファッションアイテムを厳選してご紹介
-
大人のためのヘアスタイル・髪型カタログ
髪のお悩み解決!若々しく見えるヘアスタイル
-
2つの「リファ」で理想のヘアスタイルに
大人髪のために開発されたドライヤーとストレートアイロンが登場
-
読者モデル 華組のZARAコーデ
50代はどう着こなす?ファッションブロガーコーデ集
-
「華リュクス」な装いでおしゃれ心ときめく
“マッキントッシュ ロンドン”の新作服で軽やかに街へ
Ranking
-
【50代に人気のヘアスタイル・髪型カタログ】おばさんぽくならずに若見えが叶う!ショート・ボブ・ミディアム・ロング別
白髪や髪のボリューム不足、薄毛、パサつきなど40代、50代の髪悩みを解消するおすすめヘアスタイルを提案。ショート、ボブ、ミディアム、ロング別ヘアスタイルから知っておきたい最新ヘアケア事情まで、おばさんぽ…
-
春は何を買うべき?50代に似合う服が見つかる!最新ファッションコーデ・アイテム見本帖
50代女性におすすめの最新ファッションアイテムや話題の美容アイテム、毎日が楽しくなる生活雑貨など、今買うべきアイテムを厳選してご紹介。トレンドを上手に取り入れ、自分らしく上品なスタイルを叶えるファッシ…
-
春に穿きたいデニムも充実!おしゃれな40代・50代の「ZARAコーデ」
大人のデイリーユースに欠かせないZARA。おしゃれな40代・50代はZARAで何を買い、どう着こなしているの?春の陽気にふさわしいデニムやTシャツのほか、バッグやシューズなど小物アイテムも上手に活用した40代・50代…
-
春は何を着るのがおしゃれ?着るものに迷わない「50代の春コーデ」7選
春の訪れとともに、何を着ればいいか迷う季節。春のトレンドアイテムを取り入れつつ大人の上品さと華やかさのある50代のための春コーデ。
-
50代必見のデニムコーデ。爽やかなブルーで春らしさアップ!【ファッション人気ランキングTOP10】
ウェブエクラ週間(2025/3/16~3/22)ランキングトップ10にランクインした人気ファッションをピックアップ。暑すぎず寒すぎない今の季節にぴったりの「デニム」で、爽やかさをアピール!
Keywords