-
4人組の60年以上にわたる長い時間の物語『わたしたち』【斎藤美奈子のオトナの文藝部】
アラフィー女性に読んでほしいおすすめ本を、文芸評論家・斎藤美奈子さんがピックアップ。今回は仲よし4人組の半世紀を描いた『わたしたち』とほか2冊をご紹介。
【夏の文芸エクラ大賞2022】文芸評論家・斎藤美奈子さんが「この一年の本」を徹底解説
斎藤美奈子さん
この一年を象徴する本はなんといっても『同志少女よ、敵を撃て』ですね。刊行当初から史実に基づいたエンタメと評判でしたが、その後ロシアとウクライナの戦争が勃発。“小説に書かれていたことが本当に起きている!”と読んだかたみんなが感じたと思います。戦争による難民がクローズアップされたことで、入管問題について書かれた本も再注目されました」と斎藤さん。
コロナ関連本もさまざまなかたちで出たが、3年目の今年は医療現場の声を生々しく伝えるノンフィクションが多数登場。「興味深いのは、それらのタイトルに戦争や戦記という言葉が入っている点。コロナ発生以来、いかに現場がギリギリの状態で大変だったかを表していますね」
一方ここ数年の生活を描いた小説やエッセーには作家ならではの鋭い観察力が。「両方から感じられるのは本音をいいにくい社会の雰囲気。これらもコロナ禍の貴重な記録になっていると思います」
1.戦争を描いた話題作を支えたのは“女性の視点”
現実の戦争とリンクしていると話題の本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』。作者の逢坂冬馬さんが参考文献としてあげているのが’15年のノーベル文学賞受賞作家による証言集『戦争は女の顔をしていない』で、これを漫画化した作品もロングセラーになっている。
「これらに共通するのは女性の視点で戦争を描いていること。“戦争中の女性の役割は銃後の守り”と考えがちですが、実際には銃を手に戦闘に参加した女性たちもいた。戦場での性暴力も告発されています。開高健ノンフィクション賞を受賞した平井美帆さんの『ソ連兵へ差し出された娘たち』には満州からの引き揚げ途中に起きた悲劇が書かれていますが、戦時には、生き延びるために、味方でさえも女性を犠牲にする。3冊あわせて読むと、今起きている戦争への考え方が変わってくると思います」
『同志少女よ、敵を撃て』
逢坂冬馬
早川書房 ¥2,090
『戦争は女の顔をしていない』
小梅けいと/作画 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/原作 速水螺旋人/監修
KADOKAWA 1~3巻 各¥1,100
『ソ連兵へ差し出された娘たち』
平井美帆 集英社 ¥1,980
2.疑問だらけの“入管問題”再浮上で関連本に注目が
入国管理局問題の深刻さを明らかにしたのが、’21年3月にスリランカ人女性が入管施設収容中に死亡した事件。一方今年4月から日本でもウクライナ避難民の積極的な受け入れが始まったが、「いいことだけれど疑問の声も」と斎藤さん。
「“ウクライナ避難民に比べてアジアからの難民が受け入れられにくいのはなぜ?”との声が出てきた。中島京子さんの小説『やさしい猫』や平野雄吾さんの『ルポ入管』からは入管への強い危機意識が感じられます。こういうことは本などを通じてちゃんと知っておきたいですね」
(右)『やさしい猫』
中島京子 中央公論新社 ¥2,090
(左)『ルポ 入管─ 絶望の外国人収容施設』
平野雄吾 ちくま新書 ¥1,034
3.現場の声を伝えたい!“コロナノンフィクション”が次々に
「コロナ禍で新たに起きたのが、ツイッターなどでたくさんの人が意見や体験を発信する現象。とはいえやはり現場を知る専門家が書いたものは切実で、同じ過ちを繰り返してはいけないという使命感を感じます」と斎藤さんは語る。
「一時期テレビに出ずっぱりだった岡田晴恵さんの本は、医療関係者と厚労省とのやりとりがリアル。突っ込んだ内容で緊張感が伝わってきます。早期診断を訴え続けた医師の倉持仁さんの本も、政府への批判が痛烈ですね。保健所の壮絶な記録を書いた関なおみさんは、公衆衛生の専門医。人手不足など役所の問題点の多さにがく然とします。ノンフィクション作家の山岡淳一郎さんは、コロナ1年目の報道を検証。初期のクラスターの真実に迫っていて驚かされます」
『倉持 仁の「コロナ戦記」早期診断で重症化させない医療で患者を救い続けた闘う臨床医の記録』
倉持 仁 泉町書房 ¥1,980
『秘闘 私の「コロナ戦争」全記録』
岡田晴恵 新潮社 ¥1,760
『保健所の「コロナ戦記」TOKYO2020 - 2021』
関なおみ 光文社新書 ¥1,210
『コロナ戦記 医療現場と政治の700日』
山岡淳一郎 岩波書店 ¥1,980
4.作家のエッセーもコロナ禍の“貴重な記録”
「コロナ初期に作家が書いたエッセーには、本音をいいにくかった当時の雰囲気が表れている。職業や立場によってさまざまな困難があったことがわかる記録ですね」と斎藤さん。
「’20年の1年間のできごとをつづったのが綿矢りささんのエッセー。これからの恋愛小説とソーシャル・ディスタンスの関係など、作家ならではの悩みが率直に書かれています。山崎ナオコーラさんと白岩玄さんのリレーエッセーの主なテーマは子育て。子供を保育園に行かせられなかったふたりの大変さがよくわかるし、この世代の感覚や価値観も伝わってくる。次世代との人間関係を円滑にするためにも、読む意味があると思います」
(右)『あのころなにしてた?』
綿矢りさ 新潮社 ¥1,430
(左)『ミルクとコロナ』
白岩 玄 山崎ナオコーラ 河出書房新社 ¥1,562
5.多彩でリアル!“地方の人間関係”を描いた秀作多し
地方にも都市化が進んでいるとはいえ、やはりその土地ならではの雰囲気や人間関係は残っているもの。コロナ禍はそれらをより濃密にしたのか、ここ数年の地方を舞台にした小説に読み応えのあるものが目立った。
「桜庭一樹さんの『少女を埋める』は自伝的小説ですが、桜庭さんが“故郷の因習に抗っていくぞ”と自分を鼓舞しているところが現代的。木村紅美さんの『あなたに安全な人』には、誰もがその地方での感染者第1号を恐れていた雰囲気が色濃く漂っています。絲山秋子さんの『まっとうな人生』は富山が舞台。コロナ前からコロナ禍にかけての地方のムードがよく表れているし、土地柄への興味もわいてきます。自分や夫の実家がある地方には、離れて暮らしていても行かざるをえないことがあるし、生活の場になることもある。そこで生じるさまざまな現実が、執筆意欲をかきたてるのかも」
『少女を埋める』
桜庭一樹 文藝春秋 ¥1,650
『あなたに安全な人』
木村紅美 河出書房新社 ¥1,837
『まっとうな人生』
絲山秋子 河出書房新社 ¥1,892
-
涼しい場所でのんびり読みたい!宇佐見りんの芥川賞受賞後第1作『くるまの娘』ほか、アラフィーにおすすめの本4選
宇佐見りんの芥川賞受賞後第1作『くるまの娘』、THE BOOMのボーカリスト・宮沢和史のエッセー『沖縄のことを聞かせてください』など、アラフィー女性に読んで欲しい4冊をピックアップ。
What's New
-
【雨宮塔子 大人を刺激するパリの今】私の家づくり〈前編〉雨宮さんの自宅を拝見!
雨宮塔子さんによる連載「大人を刺激するパリの今」。9回目のテーマは「私の家づくり」。25年目のパリ住まいを迎えた雨宮さん。現在のお住まいについて、今回はリビングを中心に紹介してくれました。
ライフスタイルNEWS
2024年12月11日
-
キュレーター・長谷川祐子《後編》楽しそうにしていると人は必ずついてきてくれる【エクラな美学 第9回】
彼女にとっては、世界中が美と発見の宝庫である。国内外で数々のビエンナーレや展覧会を成功させてきた現代アートのトップキュレーター・長谷川祐子は、極めて理知的ながら生きることの楽しみをのびやかに追求する魂の自由人。まだ誰も見ぬ美の姿を探し続ける人の、思索の原点とは。前中後編の後編では、長谷川さんが今後めざす世界について語ってもらった。
ライフスタイルNEWS
2024年12月4日
-
【今月のおすすめ本】日本を代表する詩人たちの対談集『対談集 ららら星のかなた』ほか3冊
エクラ世代におすすめしたい書籍を厳選! 日本を代表する詩人・谷川俊太郎さんと伊藤比呂美さんの対談集のほか、元科学者が描く人間ドラマなど計3冊を紹介。
ライフスタイルNEWS
2024年12月3日
-
キュレーター・長谷川祐子《中編》世界で学ぶ。国内外のアーティストとかかわり見識を深める【エクラな美学 第9回】
彼女にとっては、世界中が美と発見の宝庫である。国内外で数々のビエンナーレや展覧会を成功させてきた現代アートのトップキュレーター・長谷川祐子は、極めて理知的ながら生きることの楽しみをのびやかに追求する魂の自由人。まだ誰も見ぬ美の姿を探し続ける人の、思索の原点とは。前中後編の中編では、アートやアーティストとの向き合い方について語ってもらった。
ライフスタイルNEWS
2024年12月2日
-
【2025年カレンダー特別インタビュー 山本容子と世界文学】最新作『哀しいカフェのバラード』の原画たちの魅力を語る〈後編〉
エクラ1月号特別付録の2025年カレンダーを彩るのは、山本容子さんの『クリスマスの思い出』。長いキャリアの入口で、カポーティとの出会いが、その後の創作活動の羅針盤となった。世界の文学は彼女に何を与え、何をかたちづくったのか。’24年10月1日から、50年にわたる創作活動が展示された『山本容子版画展』が早稲田の図書館にて開催。山本さんに最新作の見どころを聞いた。
ライフスタイルNEWS
2024年12月1日
-
-
-
-
冬のスカートはどう着こなす?50代が華やぐスカートスタイル
50代のおしゃれに華を添える「冬のスカート」。この冬はどんな風に着こなす?冬映えするカラーのトップスを合わせたり、柄をレイヤードしてセンスよく着映えたい。
-
抜群にこなれたスニーカースタイル
おしゃれな50代はスニーカーをどう履く?
-
一度は泊まりたい!高級ホテル・旅館
日常を忘れて至福のときが過ごせる極上の旅へ
-
イヴルルド遙華の12星座占い
毎月更新の12星座占い。大注目の開運ランキングも必見!
-
【ZARA】トレンドおしゃれコーデ
50代はどう着こなす?読者モデル 華組コーデ集
-
50代に必要なのは即効性のあるコスメ
閉経してからキレイになる人は何が違う?
-
シワ・たるみケアは毎日のお手入れから
ドモホルンリンクルの[基本4点]無料お試しセットはこちらから
-
50代におすすめのファッションアイテム
人気ファッションアイテムを厳選してご紹介
-
大人のためのヘアスタイル・髪型カタログ
髪のお悩み解決!若々しく見えるヘアスタイル
-
エクラ公式通販の人気アイテムランキング
もう迷わない!50代が買うべき旬の服
-
【ユニクロ・GU】プチプラ高見えコーデ
真似したい!読者モデル 華組の着こなし集
-
コラーゲンを贅沢配合!大人肌に潤いとハリを
再春館製薬所の最新クリーム、美活肌エキスでエイジングケアを体感
-
50代を若々しく、あか抜けて見せる「冬のショートヘア」24選
おしゃれで若々しく見せたい!50代のショートヘアは前髪ありでもなしでも「生え際」が見えると老けて見えるから気をつけたい。冬のおしゃれは顔回りにボリュームが出るからショートヘアはすっきり見えて小顔効果も。
-
2025年初詣ならここへ行こう!全国パワースポット神社8選&知っておくべき参拝のルール【水晶玉子の開運!パワースポット案内 vol.4】
「初詣をただの習慣だとか思わないでくださいね」と水晶玉子さん。年の最初に厳かな気持ちで祈るのは大切なことだそう。2025年、パワーをもらえるすごい開運神社をご紹介。吉方位にある神社なら、パワーも倍増!
-
「おしゃれな人!」と思われる50代に似合うショートヘアのヘアレンジ
50代に人気のショートヘアは、スタイリング次第で自由自在に印象を変えられる!前髪の分け方やアイロンで毛先をアレンジしたり、パーマ風に巻き髪にするだけで気分や服装に合わせてアレンジして。
-
【気温12度の服装】日中の気温が12度の時の最適な服装は?40代50代におすすめのコーディネート6選
日中の気温が12度の日は何を着ればいい?服装のポイントや40代50代におすすめのコーディネートをご紹介。今回は、気温12度に最適なニットとワンピースのおすすめコーディネートをご紹介します。
-
【気温13度の服装】日中の気温が13度の時の最適な服装は?40代50代におすすめのコーディネート6選
日中の気温が13度の日は何を着ればいい?服装のポイントや40代50代におすすめのコーディネートをご紹介。今回は、気温13度に最適なアウターとブーツのおすすめコーディネートをご紹介します。