浄土を夢見るお年頃。

阿弥陀如来 根津美術館 極楽往生 極楽浄土 来迎図
右は14世紀に高麗で描かれた『阿弥陀三尊像』、左は14世紀、鎌倉時代の『阿弥陀三尊来迎図』。中世以降、日本の阿弥陀如来像は皆金色で描かれることが多い。
阿弥陀如来 極楽往生 極楽浄土
夫の追善のため、その妻が阿弥陀如来を造像したと記された『光背』(飛鳥時代・658年)。生々世々、浄土に生まれることを願うとあり、写真の左から2行目に「浄土」の文字が。
阿弥陀如来 極楽往生 極楽浄土 曼荼羅 
会場風景より、奥は『金剛界八十一尊曼荼羅』(13世紀・鎌倉時代)、右は『菩薩立像』(12世紀・平安時代)。
阿弥陀如来 極楽往生 極楽浄土 曼荼羅
『金剛界八十一尊曼荼羅』(13世紀・鎌倉時代)で阿弥陀仏(写真中央)が描かれる部分。密教図像らしく、エキゾチックで宝冠を被る姿。
阿弥陀如来 極楽往生 極楽浄土
善光寺式阿弥陀三尊の脇侍、『観音菩薩立像』(13世紀・鎌倉時代、神奈川県立歴史博物館蔵)、『勢至菩薩立像』(13世紀・鎌倉時代)。善光寺式阿弥陀三尊像は鎌倉時代からさかんに造られた。
阿弥陀如来 根津美術館 極楽往生 極楽浄土 来迎図
阿弥陀如来 極楽往生 極楽浄土
阿弥陀如来 極楽往生 極楽浄土 曼荼羅 
阿弥陀如来 極楽往生 極楽浄土 曼荼羅
阿弥陀如来 極楽往生 極楽浄土

影の薄い生涯を送ってきました。自動ドアにも感知されないときなど、地味に堪えます。過酷な現世を耐え忍びつつ、待ち望んでいるものは極楽往生――。そんな私に降りてきた蜘蛛の糸のような展覧会が、東京・根津美術館の『阿弥陀如来 浄土への憧れ』(日時指定予約制、~7/3)です。

「南無阿弥陀仏」でおなじみの阿弥陀様は、日本における仏教信仰のメインストリームであると言えるかもしれません。飛鳥の昔より尊ばれましたが、写真2枚目の光背銘文にあるように、当初は追善の性格が強かったようです。その後、平安時代に天台浄土教が興り、称名念仏の空也上人が諸国行脚し、『往生要集』を著した源信が出て、そこに末法も重なって、僧侶や貴族らが熱心に阿弥陀信仰に向かったのがひとつのピークといえましょう。11世紀以降、各地に阿弥陀堂、九体阿弥陀堂が建立されました。その信仰が民衆にも広まり、鎌倉期に専修念仏の浄土宗や浄土真宗という宗派をなしていく流れは、鎮護国家的なものだった仏教がひとりひとりの心に浸透していく過程とも映ります。「救われたい」という、私的で誰にとっても切実な願望。今よりずっと不安の多い人生を歩んでいた当時の人々は、さまざまに表された極楽に安寧を見たことでしょう。
 

阿弥陀如来 極楽浄土 極楽往生 印仏 浄瑠璃寺
十二体一版で繰り返し押された『阿弥陀如来像印仏(浄瑠璃寺印仏)』(平安時代・11~12世紀、植村和堂氏寄贈)。九体阿弥陀の中尊の胎内に収められていたと伝わる。
見返し絵 中尊寺経 阿弥陀如来 極楽浄土 極楽往生
『広弘明集巻第十四(中尊寺経/清衡願経)』(平安時代・12世紀)の美麗な見返し絵。紺紙に金銀泥で阿弥陀三尊像が描かれる。経文が一行ごとに金と銀で書写された「金銀交書経」としても有名。
融通念仏縁起絵巻 阿弥陀如来 来迎 極楽浄土
良忍の事績と念仏の功徳を説いた説話に基づく『融通念仏縁起絵巻 巻下』(南北朝時代・1381年)。念仏勧進のため肉筆で量産された絵巻のひとつ。軒先に浮かぶ仏の、何という愛らしさ。
山越阿弥陀 阿弥陀如来 来迎 極楽浄土
『山越阿弥陀図』(南北朝時代・14世紀、栃木・現聲寺蔵)では、文字通り、山の向こうから巨大な阿弥陀が来迎する。シンメトリーで安定感のある阿弥陀如来の描写はその慈悲と包容力を示唆するよう。
阿弥陀如来 極楽浄土 極楽往生 印仏 浄瑠璃寺
見返し絵 中尊寺経 阿弥陀如来 極楽浄土 極楽往生
融通念仏縁起絵巻 阿弥陀如来 来迎 極楽浄土
山越阿弥陀 阿弥陀如来 来迎 極楽浄土

とはいえ、現代人だって救われたい気持ちさえあれば、シンパシーが湧いてくるというもの。仏像彫刻のほかにも、その胎内に収めたかわいい「印仏」、當麻曼荼羅をはじめとするステキな極楽の様子を描いた各種の「浄土図」、死者を迎えにお出ましになる「来迎図」(阿弥陀様と二十五菩薩のグループ、三尊形式のトリオ、単身などバリエーション豊富)など、気になるものがきっと見つかるはず。救済サービスの多様化には目覚ましいものがあり、「山越阿弥陀図」の、阿弥陀様の御手より五色の糸をのばして往生者とリアルに結縁させるアイデアは秀逸の一言。この展覧会を見ることで、「素敵な来迎図を手に入れるまではおちおち死ねない」という、逆説的な活力が湧いた方がいらっしゃったら幸甚です。

ちなみに、御前立本尊御開帳中(~6/29)の「善光寺参り」は今に残る阿弥陀信仰ですので、「結縁したいかも!」となりましたら、ぜひ長野まで。マニアックなところでは、當麻寺の「裏板曼荼羅御開帳」(7/16~8/28)もあります。同じ期間、奈良国立博物館では貞享本當麻曼陀羅修理完成記念特別展『中将姫と當麻曼荼羅』が開催予定。旅という点では、中尊寺金色堂から富貴寺まで、全国の阿弥陀堂めぐりもおすすめです。

出来れば行きたい極楽浄土。早めのイメトレも悪くないのでは、と思います。
(編集B)

※特記しないものはすべて根津美術館の所蔵です。

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