変わることを恐れなければ、どんなタイミングでも新たな自分を発見するチャンスは、そこここにある。株式会社スタイリングライフ・ホールディングス 代表取締役 執行役員社長 長岡杏子さんにインタビュー。自分を信じ、周囲の導きを信じた人は、大人世代で大胆なキャリアチェンジを行い、組織のトップになった。培った「聞く」「伝える」力と、相手への敬意。開かれたその心は、新鮮な喜びを求め、とらえ続ける。
株式会社スタイリングライフ・ホールディングス 代表取締役 執行役員社長 長岡杏子さん
西新宿の本社会議室にて。ヘアドネーションを目ざして伸ばしていた髪は、近々切る予定だという
profile
’94 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京放送(現・TBSホールディングス)にアナウンサーとして入社。『ブロードキャスター』『サンデーモーニング』などの報道・情報番組を担当。
’18 アナウンスセンター部次長。'20年からアナウンスセンター担当部長に。
’21 TBSホールディングス 事業投資戦略局ライフスタイル事業戦略部部長としてスタイリングライフ・ホールディングス(以下SLH)を担当。翌年より同社非常勤取締役を務める。
’24 TBSテレビ営業局営業推進部長。
’26~ SLH執行役員に出向。6月末より現職。
培ったコミュニケーション力は大人の今だから発揮できるもの
「アナウンサー時代は、天気のよくない日は在宅率が上がるので視聴率アップを期待していましたが、今は雨が降ると『お店に来られるお客さまが減ってしまう…』と心配になったりする。そんな変化も含めて、毎日が新しい体験です」
テレビで見たままのたおやかな笑みをたたえ、長岡杏子さんはそういった。TBSにアナウンサーとして入社し、数々の報道番組を担当。円熟期を迎えた27年目、そのキャリアを大きく転換する。
雑貨店「PLAZA」を運営する「プラザスタイル」をはじめ、コスメティック、アパレルなどライフスタイルにまつわる幅広い事業を統括するスタイリングライフ・ホールディングスに経営幹部として赴任。TBSの営業局を経たのち、今年6月末、同社トップに就任した。
「定年までプレイヤーでいることを目標にしてきましたが、43歳で出産を経験し、24時間どこへでも取材に赴く仕事のスタイルが変わることになりました。ちょうどそのタイミングで管理職になって、『意外にマネジメントも性に合うんだ』という発見もありましたね。やがて社内でビジネスマネジメント研修を受けることになったあたりで、会社はアナウンサー以外の仕事をさせたいのかな?と」
専門職から経営者へ。50歳でのキャリアチェンジはたやすいものではなく、学びと実践の日々は「まるで洗濯機の中にいるようだった」と長岡さん。しかし、自然な流れのようにも感じていたという。
「ビジネス会計を学ぶところから始めて、異分野でさまざまな経験をしてきた人たちと出会って……。立場はリーダーでも、わからないことだらけなので、とにかく『教えてください!』と。もともと取材現場で専門家から教えを請う経験をしてきたので、あまり抵抗は感じませんでした。
キャリアチェンジしてよかったのは、若い人たちを対等な目で見て、尊敬できるようになったこと。そして、仕事人として完璧でありたいという思いを、早めに手放せたことでしょうか」
現在は6つの事業部と2つのブランドを統括し、事業計画と戦略を策定しマネジメントを行うのが長岡さんのミッション。それまで月1回だった各部門長との会議を週1回にして課題を共有し、風通しのよい組織づくりを心がけている。
「今、それぞれに何を課題としているのか、原材料費高騰などの社会的課題にどう向き合うか……リアルな思いを共有し、皆でアイデアを出し合います。コミュニケーションを重ねることで次のステップに進める。そう信じられるのも、今の年齢だからかもしれませんね。これまでの経験が糧になっていると思います」
少しでもいい世の中になるように──報道に携わっていたころの志は、日常に喜びをもたらすものを届けるという、より身近なものへと変化した。そして、後に続く世代へ注ぐまなざしも深く、優しい。
「女性の多い会社でもあるので、キャリアアップを目ざす人がいれば専門性を高めたい人もいて、時には家族を優先する時期もある。いつ、どんな選択をしても誰もが輝ける職場づくりが目標です」
「ひとりで社長室にいるのが耐えられないんです(笑)」と、たびたびフロアへ。会議室への移動には、自社で扱うキャス・キッドソンのトートバッグが活躍
家事は土曜の朝に、講談師・神田伯山氏のラジオをポッドキャストで聞きながら
次世代の働きやすさのために、あえて“やらない”選択も。「『前の部長はやってたよ』が負担にならないように、営業局での週末ゴルフはパスしました」
motto
「慈善活動にも注力したオードリー・ヘップバーンを評して誰かが語った言葉が印象に残っています」と長岡さん。力で引っぱるのではなく、そっと背中を押すリーダーを目ざす。
photography:Tomoko Meguro hair& make-up:Miho Kanesawa(MAKEUPBOX) text:Michiko Otani ※エクラ2026年11月号掲載
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