【50代の金沢旅】アラフィーの感性を豊かにしてくれる!とっておき「金沢」観光スポット
「大人の旅に必要なもの、それは風情、人情、そしておいしいもの。金沢にはそれがすべてつまっています」とは金沢屈指の老舗バー『倫敦屋酒場(ロンドンヤバー)』の主人の言葉。観光旅行とはひと味違う、心と感性を刺激する、成熟した大人だから楽しめるとっておきの金沢をご案内。人や自然との出会い、器や美味から得られるインスピレーションが、あなたの毎日をさらに輝かせてくれるはず。
魯山人の足跡をたどる
すべては自然が教えてくれる。生きた美が息づく奥深い土地
何歳(いくつ)になっても感性は磨けるだろうか――そんな問いの糸口になりそうなのが三十代後半に陶芸を始めた北大路魯山人の生き方だ。美しい暮らしの細部まで苦心した魯山人の心は、ステイホームが長く続き日常を見つめ直すきっかけになった今また、私たちに響く。
魯山人が魯山人になる前。まだ福田大観と名乗り刻字看板屋だったころ、加賀の地に一年足らず滞在し、感性を磨き、才能を開花させた。その才を見出したのは、金沢最後の文人と呼ばれる細野燕台(えんたい)だ。
「燕台さんは10代の若者だった私にも、お香とお抹茶でもてなしてくれる、そんな風雅なかたでした」と語るのは現代陶芸を展開してきた中村錦平さん。金沢市尾張町に居を構えていた燕台は、魯山人に金沢の伝統文化を伝え、旦那衆や陶芸家と引き合わせる。
錦平さんの父・中村梅山の「梅山窯」でも魯山人は制作したという。「彼は窯道具の筒型鉢を逆さにし、その外底に粘土板を押し当て肌と形を移しとる。四方鉢へ纏(まと)めてゆく。プロたちが見つけられなかった同時代的表情。父が大樋焼飴釉(おおひやきあめゆう)で焼き上げた」と錦平さん。
“使うアート”のおもしろさや可能性を教えてくれたのも魯山人の作品だったという。私たちも魯山人の足跡をたどることで、日常に生きる美をアップデートしてみたい。
『あらや滔々庵(とうとうあん)』の特別室「御陣(おちん)の間」は、魯山人が好んで逗留した部屋を移築したもの。漆が施された柱と朱壁は、鉛色の空の日が多い土地ならではの心を美しく整える 配慮か――想像力をかき立てられる
魯山人作『染付福字平向付』にノドグロの焼き物とカラスミをのせて。この“福”の文字はバカラ社グラスデザインなどにも取り入れられる人気の意匠。『あらや滔々庵』の特別コースで出されるひと皿から
800年の歴史とモダンな魅力をあわせもつ、山代温泉屈指の宿
あらや滔々庵(とうとうあん)
前田家歴代の湯番頭として命を受けて以来十八代を数える老舗旅館。湯元ならではの豊富な湯量で、大浴場・露天風呂のほか、客室の半露天風呂でも源泉かけ流しの良質な源泉を味わえる。
刻字看板制作を生業(なりわい)としていた魯山人。あらやの看板は昔は屋外で使われており、今はフロントに飾られている
暖流と寒流が交わり栄養豊富な加賀沖の中でも、身の入りや質ともに最上とされる橋立漁港で水揚げされたズワイガニ。魯山人作の『志野焼四方皿』に香箱ガニを撮影用に特別に盛っていただいた
1階ロビーに飾られた魯山人作『網代漆額(あじろしつがく)』。「泉質が一番いい」との評判を聞き逗留したという
こまやかな気くばりと穏やかな笑顔が素敵な女将の永井朝子さん。ここには格式のあるお宿にふさわしい本物のおもてなしの心がある
朝食は永平寺でも使われている山中塗・応量器で。湯豆腐とともに。朝食、夕食ともに食事は個室が用意されている
代々の大聖寺藩主ゆかりの特別室「御陣の間」の二段式の半露天風呂。壁には魯山人好みのタイルを使用
伝統を守りながらも進化する魯山人ゆかりの宿で静けさを楽しむ
離れの扉には今注目の現代画家、眞壁陸二さんの松林図が大胆に描かれている。眞壁さんの作品は露天風呂や個室食事処など、館内に多く飾られている
苔むしたスダジイを囲むように建てられた離れ
離れへと続く渡り廊下。ともる明かりが別世界へと誘ってくれる
寝室はモダンなローベッド。館内には現代アートがさりげなく飾られており、老舗の風格とモダンさのバランスが絶妙
100年以上たった主室は静かでゆったりとした時間が流れる
樹齢数百年の杉の木肌を眺めながら入る半露天風呂は唯一無二の存在感
魯山人も愛した静けさと湯が心と体をときほぐしてくれる
三十代の無名芸術家だった魯山人はこの山代の地で旦那衆と山海の珍味を味わいながら、芸術や美食、骨董の話を聞き過ごした。旦那衆が注文して支えた作品が多く残り、そのひとつが『あらや滔々庵』だ。
入口の山代温泉起源にゆかりのある八咫烏(やたがらす)の衝立(ついたて)から始まり、ロビーや廊下には書、器、篆刻(てんこく)などが日常の一部のように自然に置かれている。期間限定にはなるが、実際に魯山人の器でいただける特別なコースもあるという。それ以外にも、九谷焼や山中塗の地元作家の器を中心に、代々伝わる骨董や魯山人の器の写しなど、現代に生きる器をとりそろえ、恵まれた食材を目と舌、両方で楽しませてくれる。
明治天皇御幸行予定の際、釘一本も使わずに数年がかりで造られた離れを2022年に客室にリニューアル。部屋にいながらにして山代温泉の守神・服部神社の裏山の自然を感じることができる。魯山人作の額に「聞楽」(静けさを楽しむ)とあるように、この宿では「静けさ」がなによりの贅沢。心穏やかになると、美しいものもより敏感に響いてくるはず。
Data
石川県加賀市山代温泉18の119
☎0761・77・0010
全17室(露天風呂つき11室、数寄屋風和室・ツインなど)
チェックイン14:00 チェックアウト11:00
JR加賀温泉駅から送迎バス・タクシーで10分
おいしく見せる本物の器。現地でその醍醐味を
九谷焼窯元 須田菁華
日本の美意識の結晶ともいえる用の美にあふれる作品を生み続ける、須田菁華。華やかなのに、奢りがなく謙虚……そんな可憐な女性のような作品たちが、旅の思い出とともに日常を輝かせてくれるに違いない。
人や自然との情緒ある出会い。 この土地は「生きた美術館」
「私ハ先代菁華に教へられた」――魯山人晩年金沢での講演の折に演題としてかかげた書がある。吉野屋の別荘で過ごす間、魯山人はさまざまな人と出会い、人生を変えた地ともいえる。初代・須田菁華に出会い、作陶の手ほどきを受け初めて絵付けをしたのに始まり、焼きものの何たるか、見どころ、勘どころ、味わいどころを教わった。現在の工房には、実際に手にとり購入できる空間もある。
「こだわりすぎず、自由さが大切だと思っています。心に余裕をもたせて、一見むだだと思うこともやってみる。日常の遊び心からなんでも生まれるような気がします」とは当代・須田菁華さん。山中、山代、金沢……と魯山人の足跡をめぐって、私たちもその心とセンスの学びを実感したい。
晩年までたびたび訪れ、旦那衆と交流を深めた魯山人にとって、この地は学びと癒しの故郷
おおらかでのびやかな椿の大鉢。お正月やおもてなしにはもちろんのこと、ただ飾っても絵になる作品
魯山人が初代菁華のもとで制作した器と印。初めて絵付けをした作品が、この鉄線図と赤絵の鉢といわれている
赤絵篆書(てんしょ)『長宜子孫』鉢。福田大観時代の作
色絵鉄仙図鉢
魯山人の柘植印『菁華』、陶印『菁華』、陶印『起遅新』
店内では四代目の作品を実際に手にとって選ぶことができる
魯山人作の看板が今も店の軒先に。雨風にさらされて胡粉がハゲてきたころ、魯山人が「いい色になった」といっていたとか
目利きに人気だという土瓶。 蔓の取っ手の野性味と使い勝手のよさも魅力。
極々小体な香合。お香はもちろんのことピアスなどを入れても。どちらも四代目の作
四代目須田菁華に器の使い方を問うと「なんでもいいんや。自由にその場で自分が思ったものを盛ればいい」
Data
石川県加賀市山代温泉 東山町4
☎︎0761・76・0008
9:00~17:00 不定休
魯山人が1年間逗留した山代の文化サロン
魯山人寓居跡 いろは草庵
大正時代の旦那衆は美術談義や茶会、謡(うたい)を楽しむために別荘を建てる人が多かった。旅館『吉野屋』の主人は、無名の魯山人に自らの別荘を提供、その母屋が現在は一般公開されている。
この土地特有の紅殻壁の母屋
2階は旦那衆が好んだ謡の本なども展示
四季折々の様子が楽しめるロビー
刻字看板を彫るために使用した仕事部屋。山代に来て初めて制作したのが、この『吉野屋』の看板だった
魯山人ゆかりの品も多く展示
Data
石川県加賀市山代温泉18の5
☎0761・77・7111
9:00~17:00(入館は16:30まで)
定休日 火曜、年末年始(11〜3月、5月GW明け〜7月20日、9月は土・日曜、祝日のみ開館)
入場料¥560
山中温泉の名塗師。二代目石斎と魯山人との出会い
辻石斎
開湯1300年の歴史をもつ山中温泉で、五代にわたり茶道具を中心に山中漆器を制作。二代目とは魯山人が寝泊まりするほどの交流があり、共同制作した作品も数多い。
かの有名な『一閑張日月椀』も魯山人がデザインし二代目が制作したもの
『朱瓢膳』
辻石斎の妻が作る田舎料理がお気に入りで、特に贅沢煮といわれるたくあんの煮物が好物だったよう
Data
石川県加賀市山中温泉本町2のナの6
☎0761・78・0166
11:00~19:00
作品を購入することも可能
魯山人を見出した細野燕台も暮らした尾張町
尾張町商店街
金沢最後の文人といわれる細野燕台が暮らした尾張町。旦那衆も多く、現在は金沢らしい建築が数多く残る商店街に。提灯屋やギャラリーなど散策を楽しんで。
商店街の中心にある『尾張町町民文化会館』。明治期に建てられた和洋折衷の様式美の銀行をそのまま生かした造り
町民文化会館内の優雅なたたずまいの頭取室。
センスのいいギャラリー『Cazahana』。家具、雑貨やヴィンテージものなど独特のセレクト
Data
『尾張町町民文化会館』
石川県尾張町1の11の8
☎076・222・7670
9:00~17:00
定休日 火曜 ※11〜3月は土・日曜、祝日のみ開館 入場無料
『Cazahana』
石川県尾張町1の8の1 BNFN 1F
☎076・225・8807
11:00~19:00(日曜、祝日は〜18:00)
定休日 木曜
この一軒のために行く美味
気品あふれる和の空間と熟練の技が光る料理を
つづら
住宅街にたたずむ知る人ぞ知る、噂の日本料理店。正統派ながら、遊び心も満載の料理は、ここでしか味わえないものばかり。ご主人がこだわりぬいた数寄屋造りの一軒家で北陸の幸を心ゆくまで味わって。
正統な中にモダンさもある気品あふれる料理と空間で
金沢市内から車で小1時間。小松市の閑静な住宅街を走れば、竹林の向かい、お店の前の石畳に水が打たれている。こざっぱりした暖簾(のれん)の奥は別世界だ。数寄屋造りの名人・河合徳治氏による建築に、ご主人・池田茂さんのこだわりをつめ込んだ、洗練された空間。小松の和風建築の名工房による欄間、地元の土と泥で造られた本壁、網代天井、北山杉の面取り柱。
もともと、小松市内で日本料理店を18年間営み、「とにかく日本家屋が好きで、自然が残るこちらへ引っ越し、本物にこだわって造っていただきました」。贅をつくしているが、華美ではなく、楚々とした空気の流れる空間と同様、料理もむだな飾りはなく、端正でシンプル。「地元の食材そのものの味を、料理人として引き出すことを最も大切にしています。華美な盛りつけなど必要ないと思いいたりました」。
コースの最初に出る「甘海老の握り」。凝縮されたうま味とねっとりした食感。ほどよい鮨めしの酸味が重なり、深い余韻が残る。お椀の気品ある味わいや、ひと塩して水分を抜いたノドグロのうま味……。正統派の力強さを堪能していたら、ホワイトソースに包まれたたっぷりのカニ入りあつあつグラタンも登場。遊び心も取り入れた北陸の美味ざんまいコース。料理と空間に通じる粋な器使いも目のごちそうだ。
小松空港から20分、小松駅からも15分ほど。高台の住宅街にたたずむ。建物は2年がかりで建てられたそう。駐車場あり
どの部屋にもテーブル席が設けられている。庭が眺められ、昼は自然光が入り、雪見障子からの光の陰影が美しいテーブル席
8畳の茶室は、次の間と水屋つき。杉の天井、繊細な細工の欄間、本壁など、材料からこだわりぬいた造作の美も楽しめる
ご主人のお母さまの帯を地袋の扉に仕立てて。ほかに、4畳半の茶室、10畳間、ご主人との会話が楽しめるカウンター席がある
直球のおいしさを引き出した熟練の技と遊び心を、こだわりぬいた空間で。品格ある本物の日本の文化がここに
「のどぐろ 若狭焼」。塩をして2日おいているので、余分な水分が抜けて味が凝縮。厚焼き卵、くるみ豆腐を添えて。器は越前焼の武澤信雄作
「のどぐろ 若狭焼」。塩をして2日おいているので、余分な水分が抜けて味が凝縮。厚焼き卵、くるみ豆腐を添えて。器は越前焼の武澤信雄作
「蟹グラタン」。カニの味が生きたシンプルグラタン。手前は「蟹の酢の物」。カニ肉を白板昆布で巻いて
「お椀 蒸しあわび」。加賀れんこんをすりおろして葛でまとめた蓮餅が隠れている。器は輪島塗
おしのぎの定番「甘海老」。昆布で締めた甘エビをお鮨に。上には吉野酢がひかれて。添えた卵も昆布締めに。すべて¥25,000のコースより
Data
石川県小松市千木野町3の81
☎0761・23・3389
11:30〜14:00、17:00〜22:00
不定休
昼¥7,500〜、夜¥12,000〜 完全予約制
料理人のセンスが光る金沢発のイノベーティブ
respiración
2017年にオープン、’21年にミシュラン二ツ星を獲得。持続可能な未来へ向けたレストランの取り組みに光を当てるミシュラングリーンスターにも輝く、モダンスパニッシュ。
明治期の古民家でくつろぎ、五感を研ぎすまして過ごす時間
今、金沢で最も勢いのあるモダンスパニッシュレストラン。スペインの星つきレストランで修業し、さまざまな経験を積んだ地元の料理人3名が2018年に集結。さらにソムリエも加わり、彼らの創造性をお皿の上に、空間に開花させている。料理を口にしてみれば、スペイン料理という枠に、すでにはまっていないことがわかる。地元産の食材に特化し、その素材がどのように育ったかを学び、一番おいしいポイントを伝えるべく調理。そのためのアプローチは多彩であって意外にシンプル。例えば、甘エビは塩麴と柚子でマリネされ、あわびは10時間ほど蒸して肝のソースと。ただし、お皿の上では、思いもかけない食材や調味料との取り合わせの妙を楽しめる。明治時代の古民家を心地よく改装し、金沢でしか出会えないクリエーションを演出。遠方から足を運ぶゲストが絶えないと聞いて、納得だ。
ウェイティングルームには、山をイメージしたテーブルが。加賀棒茶と紅茶をブレンドしたお茶を一服。白山の香りがディフューザーから漂い、石川県の山や海の音が流れてきて、気持ちがリセットされる時間。
築150年ほどの古民家を改装。吹き抜けのある土間を通り、ダイニングへ
店名はスペイン語で「呼吸」という意味
金沢&スペインのアバンギャルドな組み合わせ。ひと皿ごとに驚きと感嘆に包まれる
始まりのお皿「インパクト甘海老」。甘エビは塩麴と柚子でマリネ。味噌をシート状にしてのせ、下には尾、殻、卵を練り込んだタルト生地。甘エビの濃縮された風味とねっとりした食感
能登・舳倉島産あわびを10時間蒸し、アサリのだし、蒸しあわびの蒸し汁などを乳化させて。あわびの肝のソースとかぶのソテー
七尾湾のカキに、魚のだしとミルクのシートをのせ、玉ねぎとホエーのピュレと。山椒の香りのオリーブオイルをかけて。ライムの皮を削り、さわやかな余韻に
3日間寝かせて冷凍したアオリイカもしくはアカイカの軟らかい部分のみ使い、能登のウニ、能登のトマトのソース、下にはしょうがを効かせたクリームチーズが。上は金時草
Data
石川県金沢市博労町67
☎076・225・8681
12:00、18:00ともに一斉スタート(ドアオープンは30分前)
定休日 月曜日を中心に月6回
コース¥22,000
古九谷を学ぶ&買う
器をめぐる旅の第一歩は、九谷焼の聖地・加賀へ
石川県九谷焼美術館
日本が世界に誇る九谷焼。この類(たぐい)まれなる存在は、前田藩の支藩、大聖寺藩で花開いた。その繊細でありながらおおらかで、気品あるスタイルに触れて、器感度をアップしてほしい。
緑豊かな公園内の美術館で光と風を感じ、古九谷を愛(め)でる
豪放で華麗。繊細で緻密。さまざまな顔を見せてくれる九谷焼は、360年余り前、九谷村(現在の加賀市)で大聖寺藩営の窯として始まった。それから約50年後、窯は突然途絶えたが、理由は謎。江戸後期に復興したが、初めの50年間に作られたものは「古九谷」と呼ばれ、その後の「九谷焼」と区別される。そんな物語も魅力となり、今も特別な存在として光を放ち続けている。
器をめぐる旅の始まりは美術館から。ここで歴史に触れ、先人が丹精こめた作品を鑑賞する。そんな体験を経て自分の好みを発見し、使いこなせるひと品を見つけられるかもしれない。「石川県九谷焼美術館」は、加賀市の中央図書館に隣接した「古九谷の杜親水公園」内にある。館内に木や土、石などの自然の素材をあしらい、展示室ごとに窓を設けてあるので、緑豊かな公園の中で作品を眺めているよう。自然の光の中で作品を見れば、作者の筆のタッチや色合い、質感……すべてが手にとるようにわかる。展示室は、九谷焼の歴史や手法などが体系的に説明されている。「古九谷」をはじめとする江戸期から現代作家の作品までが一堂に会する貴重な場所。本物に触れる旅はまずここから始めよう。
自然光の入る館内。飾られているのは、『鶴丸文大香炉』松山窯、江戸末期。古九谷の窯が断絶したあとに再興された、大聖寺藩御用達の窯。青を基調とする「青手」。
安藤忠雄の弟子・富田玲子による設計。1階に展示室、2階には茶房や茶室、ホールなどが
器の裏にも色彩があり、模様が施され、銘が入っているのが九谷焼の特徴。作り手の遊び心あふれる、珍しい人物柄入り
『赤絵金彩龍図花瓶』竹内吟秋 明治期。精緻な「赤絵・金襴手」
「青手」「色絵・五彩手」「赤絵・金襴手」。華麗なる九谷焼の美を求めて
古九谷の「青手」の意匠は、躍動的かつ感覚的な構成で、絵画性も強く、「日本の油絵」とも称される。その特徴がよくわかる作品。『青手土坡牡丹図大平鉢』古九谷、江戸前期
『赤絵金彩群馬図水注』浅井一毫。明治に入り、元大聖寺藩士の竹内吟秋、浅井一毫によって生み出された「赤絵・金襴手」
九谷焼で色彩といえば一般に「五彩手」をさす。五彩とは、赤・緑・紫・紺青・黄。『色絵百花手唐人物図大平鉢』古九谷
『赤絵金彩鳳凰人物図鉦鉢』宮本屋窯、江戸後期。赤絵細描を得意としていた窯の作品
『色絵梅に鶯図輪花中皿』3客 古九谷、江戸前期。「五彩手」の絵付けの特徴は、器の中央に山水、花鳥風月、人物等の一幅の絵画を描く
Data
石川県加賀市大聖寺地方町1の10の13
☎0761・72・7466
9:00〜17:00
定休日 月曜
http://www.kutani-mus.jp/ja/
九谷焼を買うなら古九谷から現代ものまでそろう骨董店へ
伊藤尚友堂
金沢で九谷焼を実際に手にとって選びたいなら、古九谷から昭和のものまでそろう骨董店へ。「伊藤尚友堂」は、希少な作品から日々の生活に取り入れやすい生活骨董まで、見やすく展示されている。
家庭の食卓になじむ骨董を広々とした店内で選ぶ
金沢で九谷焼の骨董品を探すならここと、定評のある『伊藤尚友堂』。骨董店として明治元年に創業し、現在四代目のご主人・伊藤俊幸さんが目利きしたものだけを店頭に置く。「10代のころから父について骨董を学んできた私にとっても、古九谷は特別な存在です。手にとったときの緊張感が違う。九谷村の山でとれた陶石の風合いなのでしょう。遊び心満載の絵付けも格別です」。そんな古九谷や、江戸後期の九谷焼、お茶道具も扱うが、主力は昭和初期からの九谷焼と輪島塗。この時期のものはお値段が手ごろなので、ふだんの食卓にもなじみそう。広々とした店内には、「使う」という視点で集められた骨董がずらりと並ぶ。古九谷の写しや、大正ロマンの雰囲気漂う染付碗、加賀伊万里など、器の背景をご主人にたずねながら選ぶ楽しみも。兼六園からもほど近い。立ち寄れば、お気に入りがきっと見つかる。
『青手九谷 松山窯 大鉢』¥70,000。大聖寺藩の作った窯で作られた江戸末期のもの。この窯の特色である「花紺青」と呼ばれる紺青が使われている
貴重な灯籠や苔むした庭を眺めながら、古九谷や茶道具を見られる2階エリア
『九谷絞り染碗』1客¥1,300。大正浪漫な雰囲気が漂う。お茶にも茶碗蒸しにも、蓋をはずせば、そば猪口にも使える
小皿も豊富。右上から時計回りに。『扇面赤絵皿』¥2,000。大正から昭和初期。古九谷の写し。「端正な美しさから、当時一番の職人が作ったものと思われます」。『加賀伊万里』¥3,800。大聖寺藩で作られたもの。『古九谷写し 鳥図皿』¥2,000。大正期。ぽってりした風合いの雲龍模様。
『藍九谷皿 入角』¥1,800
地下1階に生活骨董がそろう
「秋の扇」江戸後期 5枚組¥32,000。乳白色の地に色彩が映える。秋の花と扇子がうちわの中に描かれている。秋に必要のないものをわざわざ描いた遊び心あるデザイン。共箱あり
金沢市の中心部を走る百万石通りに面した外観は古美術店の雰囲気が漂うが、間口が広く入りやすい
Data
石川県金沢市広坂1の1の52
☎076・231・6631
当面は9:30~15:00
定休日 水曜、12月29日~翌1月3日
3つの花街をホッピング
金沢の真価は夜にあり。贅沢な大人の遊び場へようこそ
日が落ち明かりがともるころ、金沢らしい風情がぐっと増す。特に花街は、茶屋から三味線や太鼓の音がこぼれ、芸の街・金沢の粋な夜を演出する。
浅野川のそばに、ひがし茶屋、主計(かずえ)町、犀川近くのにし茶屋街の3つの花街がある。いずれも木虫籠(きむすこ)と呼ばれる出格子に石畳の古い街並みが残る。
洗練された所作や振る舞い、きものの着こなし、お客さまを楽しませる会話や最高のおもてなし……成熟した芸妓さんとの出会いは私たちの第三の目を開かせてくれ、大人の女性にこそ足を踏み入れてほしい。最近は芸妓さんが営むバーもお目見えしているので、まずは入口に。そしていつかはお座敷遊びを体験してみたい。目の前で繰り広げられる芸には、一瞬、一瞬、金沢ならではの生きた本当の美が宿るから。
夕暮れどきのにし茶屋街。雨が多い土地柄、しっとりとした石畳が心地よい
ひがし茶屋
品格と優しさにあふれる芸妓・福太郎さんにうっとり
八の福金沢文化を代表するひがし茶屋。なかでも大人の品格と美にあふれる芸妓・福太郎さんが営むバーは格別。東京でも京都でも味わえないしっとり、うっとりする時間がここにはある。
「国立工芸館あたりを散策するのが好きです。冬は雪の兼六園もおすすめ」と福太郎さん。2階にはお座敷も
風情のある中庭を眺めながら、カウンターでゆっくり杯を傾ける。おひとりでも楽しめる一軒
和洋折衷のセンスと気の効いたおつまみ。漆のお盆は能作のもの
Data
石川県金沢市東山1の13の21
☎︎076・252・7898
20:30~22:30(入店)
定休日 土・日曜、祝日 完全予約制
にし茶屋街
おばんざいと美酒でこのうえなく楽しい夜を約束
はなれ
『明月』の芸妓・結さんが2022年に開いた茶屋バー。おばんざいやおでん、温かく明るくチャーミングな人柄に心がほだされる。
1階はカウンター席のみ。2階の座敷では月2回お寺の住職による説法も。「コロナ渦で困っているかたを助けたくて」と心優しい結さん
結さんお手製のおでん。締めにはお餅も!
お茶屋『明月』の向かいにあり、離れ的に存在
Data
石川県金沢市野町2の24の2
☎090・1637・1775
20:00~23:00
不定休 完全予約制
主計町
名所暗がり坂の先にある情緒あふれるカフェ&バー
まゆ月 くらがり坂
路地が広がる主計町で最も雰囲気のある暗がり坂下で、お茶屋まゆ月女将が営む姉妹店。昼はカフェ、夜はバーで、“おんぼらと(ゆっくり)”過ごせる。
「明かりがともるころ、中の橋から見る主計町が好き」と女将さん。この日はカーフさんが描いたきものを粋に着こなして
旦那衆がこの坂を下りて花街へ
カフェメニュー「抹茶パフェ」¥600
木版画家、故クリフトン・カーフ氏の自宅兼ギャラリーを改装。2階には作品も飾られている
Data
石川県金沢市主計町3の19
☎︎076・210・6022
カフェ11:00~16:00、バー19:30~24:30
不定休
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トレンド感のあるおしゃれな秋服が欲しい!どんなアイテムを選んで、どう着こなす?おしゃれな50代の秋のスタイルを拝見!秋のアイテム選びや着こなしを参考にして。
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