テニスプレイヤー伊達公子《後編》今の活動の現場から。引退後のテニスへの思い【エクラな美学 第2回】

時の積み重ねをポジティブにとらえ、しなやかに生きているエクラ世代の女性たち。世界を舞台に戦ってきたテニスプレイヤーの伊達公子さんもそのひとりだ。前中後編の後編では、引退後のテニスへの思いについてうかがった。

若い世代を育成するために起こしたアクション

1度目の引退と違って、2度目の引退では「テニスとは縁をつないでいたいという思いがあった」という伊達さん。昨年、元世界ランキング50位以内を経験した女子テニス選手8人に呼びかけて、「一般社団法人「Japan Women’s Tennis Top50 Club」(JWT50)を発足した。

実は’22年の時点でランキング50位に入っている日本人は大坂なおみさんただひとり。伊達さん以外にも杉山愛さんや長塚京子さんなど、グランドスラムの本戦に多くの日本人が名を連ねていた’90年代の栄光からはかなり遠ざかってしまっている。そんな状況に危機感を抱いた伊達さんが、ジュニア世代に豊富な経験を還元するべく立ち上げたのがJWT50だ。
「時代も変化し、テニス自体も昔よりもタフになっていることは間違いない。その中でもっと日本選手はやれるはずという歯がゆさはみんな感じていて、だからこそ私たちにできることがあるのではないかと。自分を成長させてくれたテニスに対して強い思いをもっているからこそ、明るい未来にしたいと思っています」

一方で、伊達さんはいずれテニスができなくなる日がくることを見据え、その準備として新たな趣味を見つけている。
「最近は山に登っているんです。山の魅力はなんといっても達成感。今の夫も学生時代からスキーをしていて山が好きなので、一緒に楽しんでます。去年は富士山に登ったので、今年は北海道の旭岳に行きたい。いずれは立山も登りたいですね」

1回だけの自分の人生だから、生きたいように生きたほうがいい。『自分らしく』という軸はぶれずに

伊達公子の今の活動の現場から

スッパリとテニスと縁を切った1度目と違い、2度目の引退後は、自らの経験をジュニア世代に伝えるべくさまざまなアクションを起こしている。

テニスを通して世界とつなぎ、女性のセカンドキャリアを応援する「Japan Women’s Tennis Top50 Club」設立

  • ⓒ JWT50

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伊達さんが声をかけ、世界ランキング50位内を経験し、現在は引退している元女子テニス選手9人の会員で構成。世界トップを本気で目ざすジュニア世代に向け、技術や知識だけでなく人間性も備わったプレイヤーの育成を目ざし、セカンドキャリアの選択肢を増やすことも視野に入れて設立された。メンバーは杉山愛さん(8位)や浅越しのぶさん(21位)など錚々(そうそう)たるもの。上の写真は、昨年12月に行われたトークセッションの様子。「現役の選手だったころはみんなライバルだったこともあってあまり交流がなかった。今だからこそこれができたんだなという思いがあります」(伊達)。

世界で活躍するジュニアを日本で育てたい

  • ⓒYONEX

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ハードコート、レッドクレーが世界基準とされているのに対し、日本では砂入り人工芝コートの普及率が50%を超える。世界で戦える選手を国内で育てるためには、世界基準のコートへの改修が必要だと伊達さんは以前から提唱し、アクションを起こしてきた。「そういった環境整備も含め、若手育成のためにアカデミーをつくりたいという思いがあります。私自身日本の環境の中で練習を積んで世界に行けたので、日本から世界に行く子たちが生まれるような場所を提供できれば」(伊達)。
伊達公子

伊達公子

だて きみこ●70年、京都府生まれ。6歳からテニスを始め、高校卒業と同時にプロテニスプレイヤーに。’94年のNSWオープン(シドニー)で海外ツアー初優勝。’95年にはWTAランキング4位に。’96年にランキング8位のまま引退。’08年に37歳で11年半ぶりに現役復帰。’09年の韓国オープンで優勝。’17年に2度目の引退。
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