「あの作品で私は特別なヘアメイクはしていないんです。パーマでウェーブさえかけておけば、踊っているうちに髪の毛が勝手にいい感じで広がってくれるので。でも以前はいろいろ試行錯誤していたんですよ。前髪を固めてみようとか、後ろの部分だけまとめようとか。でもいつも汗で変に乱れてしまう。結局何もつけない、固めない、ありのままが一番いいということにたどりつきました」と微笑む。
日本が誇るバレエダンサー、44歳。東京バレエ団のプリンシパルとしてはもちろん、海外の多くの檜舞台でも活躍中。また日本人の女性ダンサーで唯一『ボレロ』を踊ることを許されている存在でもある。ファッション誌をはじめさまざまなメディアに登場し、バレエ少女向けに漫画化もされた。そんな上野さんのバレエ人生を決定づけたのは、若手ダンサーの登竜門、ローザンヌ国際バレエコンクール。スカラシップ賞を受賞し、16歳でモナコへバレエ留学した。
「毎朝、ああ今日も10時になればバレエのクラスが始まるんだと思うとそれだけでうれしい日々でした。小学生のころから授業中、ノートにシルヴィ・ギエムの脚のラインばかり描いているような子供でした。どうやったらあんな脚になれるのだろう、あんなふうに踊りたいと、お休みの日もひとりでレッスンしていたほど。それと私は成長期が人よりちょっと遅くて、ちょうどこの留学中に急激に身長が伸びたんです。体のコントロールには苦労した記憶がありますね」