「実際には『ハリネズミのくるりん』という絵本を『てれび絵本』で一冊読めただけであっという間に10年が過ぎていきました。結婚して長女が生まれたときに、今、この、子供を育てている母親の感覚を“モリモリ”生かした子供番組を作りたいなと思い、NHKをやめてフリーになったのが32歳のときです」
振り返ってみると、10年ごとに人生の転機を迎えているように見える久保さん。それは意図したものなのだろうか。
「10年後に何をしようと計画をたてることはないのですが、ぼんやりとビジョンはありました。モンテッソーリの先生の資格をとったときも、10年後くらいには先生になっていたいな、と」
そうやって目標をもって物事に取り組むのは、母親の影響が大きいという。
「母は常に目標をもっていて、やっているうちに次々と新たな夢が出てくる。退職後に英語教室を開いていたのですが、そこでも『子供たちを留学させたいけれど、イギリスは遠いからタイのサムイ島はどうだろう』と、どんどん新しい発想を私に語りかけ、有言実行していったんです。その母に引っぱられているのは多分にあると思います。イギリスの小学校では第2外国語がフランス語だったので、帰国してから『フランス語やりたいな』といったら『じゃあ行ってみよう』。当時はインターネットも発達していませんでしたから、『地球の歩き方』の最終ページにブルターニュ地方の語学学校が出ているのを見つけ、それを頼りに一緒に行ったんです。だけどホームステイ先を見つけたら、私はそこに1カ月半くらい置いていかれて、母はパリへ。すごいチャレンジャーで、これと思ったら猪突猛進なんです」