-
役者 板谷由夏《中編》役者という仕事はどちらかといえば苦しい【エクラな美学 第5回】
しなやかに時を重ね、どこまでも挑戦を続けるエクラな女性たち。役者でありファッションブランドのディレクターでもある板谷由夏さんもそのひとりだ。昨年はホームレス女性を演じ話題となった。自分ではない何者かになること。それは板谷さんに何をもたらしてきたのだろう。前中後編の中編では、“役者”という仕事について伺った。
役者 板谷由夏《後編》50代になったらやりたいこととは?【エクラな美学 第5回】
ゼロからものを作りたいからSINMEを立ち上げる
スタイリストの夫と、15歳と9歳のふたりの息子と郊外で暮らす。役者としてキャスターとして忙殺されていた30代、子育ての一番大変な時期が重なった。保育園に息子を送り届け、その泣き叫ぶ声に後ろ髪を引かれる思いで仕事に向かう日々。読者の中には共感するかたも多いはず。
「でもね、ヤツは私の姿が見えなくなるとあきらめてケロッと元気になってたらしいですよ(笑)。私もそのころはよく泣いてました。いやもうきつくて。運転しながら“え~~~ん眠たいよお”って。連ドラを続けて3~4本やっていた時期もあったけど、30代だからまだなんとかやれたんですね。いえ、42~43歳くらいまではできました。でも今は絶対無理(笑)」
そんな超多忙な時期に、板谷さんはファッションブランドを立ち上げることを考えはじめた。
「私たちの仕事は台本をいただいてから始まるという受け身の仕事じゃないですか。私自身の手でゼロから作って能動的に動ける仕事をやってみたいなと思ったんです。昔から洋服が好きだったのでアパレルがいいなと。しかしまあ一番大変な時期によくやったよなあ(笑)」

それがSINME(シンメ)。いくつになっても「新芽」が出るようにと名づけたという。
「十代のころからベーシックでトラッドなファッションが好きでした。それは今でも変わらないですね。自分が着たい服にしよう、その人のサイクルで着られるものにしよう、その人の個性の出るものにしようと。最初はジーンズとシャツから始めたんです。立ち上げのころに買ってくださったかたが今でも展示会にいい感じにクッタクタになったジーンズをはいて来てくださるんです。これってめっちゃうれしい。自分が作り出したものを、誰かがちゃんと育ててくれていた喜びって格別ですよ」
「人ってしょせんひとりきり。自分の人生なのだから自由に生きていきたい。まずはあちこち旅をしたい」
これまで蒔いてきたいくつもの種が、あちこちで芽吹き花を咲かせ、実を結んできた。子育てもそろそろ一段落するころ。このあと迎える50代を、板谷さんはどう過ごしたいのだろう。
「最近そればかり考えてます。まず旅は絶対したい。これまで行ったことのないところを徐々に攻めたい。こういうとき、港々に男がいるような人はよけいに楽しいんでしょうね(笑)。家には、“お母さんはいませんよ”という木札を作って下げておくの。温泉でよく見る“使用中”みたいなやつね。体力落ちるし目じりは下がるし、今こそ自分で自分の時間をつくり出さなくてどうするのって思うんです。だからお金で時間を買うのも全然ありだなって。プロにハウスクリーニング頼むのを後ろめたく思う必要なんてない。そのために働いているんだもの」とカラッと笑う。
「人ってしょせんひとりだな~って思うんです。家族や友だち、仕事仲間、互いにリスペクトしあいながらも、“あなたはあなた、私は私。自分の人生なのだからあとはもう自由に生きるのでよくない?”そう考えることで、少し肩の力が抜けるような気がしています」
板谷由夏の今の活動の現場から
役者としての顔と、ファッションブランドのディレクターとしての顔をもつ板谷さん。その活動の一端をご紹介する。
日本映画批評家大賞と全国映連賞で受賞
’20年11月、東京・幡ヶ谷のバス停に寝泊まりするホームレスの女性が近隣に住む男に「彼女がじゃまだった」という理由で殺害された。’22年10月に公開された『夜明けまでバス停で』(監督:高橋伴明)は、この事件をベースに、ひとりの女性の社会的孤立を描いてたちまち話題となった。板谷さんは主人公の北林三知子を体当たりで演じ日本映画批評家大賞主演女優賞、全国映連賞女優賞を受賞。今年の5月に行われた授賞式で「こんな賞をいただけるなんて本当にうれしい。選んでくださった映画人のかたがた、ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えた。


日本映画批評家大賞授賞式の様子
「SINME」のディレクターとして大人のベーシックを提案
読者モデルに応募するなど10代のころからファッションに強い関心をもっていた板谷さん。こだわったのはジーンズとシャツだ。「特にジーンズは、その人のおしりの形、はいたり洗ったりする頻度で、しわも色落ちも変わってくるんです。その人の人生がにじみ出る。そんなファッションってジーンズしかないなと」。ほかにも胸もとに細くU字型のスリットの入ったドレスなど、年を重ねた女性の体のラインや肌の質感がきれいに映るデザインが目をひく。


板谷由夏
-
役者 板谷由夏《前編》役を演じている瞬間はリアルでいたい【エクラな美学 第5回】
しなやかに時を重ね、どこまでも挑戦を続けるエクラな女性たち。役者でありファッションブランドのディレクターでもある板谷由夏さんもそのひとりだ。前中後編の前編では、ホームレス女性を演じて話題となった主演映画『夜明けまでバス停で』について語ってくれた。
What's New
-
空腹、聞く耳持たずーVentre affamé n'a point d'oreilles.【フランスの美しい言葉 vol.23】
読むだけで心が軽くなったり、気分がアガったり、ハッとさせられたり。そんな美しいフランスの言葉を毎週月曜日にお届けします。ページ下の音声ボタンをクリックして、ぜひ一緒にフランス語を声に出してみて。
カルチャー
2025年7月7日
-
終戦から80年、改めて平和について考えたい。戦争をテーマにした本5選
今年は第二次世界大戦の終結から80年。そんな節目の年となる今、改めて戦争や平和について考えたい。今回は、毎月お届けしている連載「今月のおすすめ本」でこれまで紹介してきた本の中から、戦争をテーマにした本をご紹介。
カルチャー
2025年7月6日
-
襟の開きが絶妙でほどよく抜けた印象に!夏ゴルフの帰りは「ポロニット」「スキッパーニット」【松井陽子の「エクラ ゴルフ部へようこそ!」vol.7】
ゴルフの行き帰り、皆さんはどんな装いですか。「正解に困る・・・」という声を多く聞いたので、今回は私のとある日のアフターゴルフの装いをご紹介します。
カルチャー
2025年7月3日
-
【市川團十郎インタビュー】市川團十郎47歳。今、絶対見ておくべき理由
團十郎の舞台が今、すごいことになっている。「5月の弁慶を見て自然に涙が出た」「今このときに向かってすべてを調整してきたと思わせる素晴らしい完成度」。歌舞伎座の内外ではもちろん、SNSでも最近こんな感想によく出会う。市川團十郎、47歳。キレッキレの鋭い印象はいつのまにか「頼もしさ」に、そして見たものを燃やし尽くすかのような勢いある目力にはいつしか温かさが宿っている。今や目じりのしわまでが優しげだ。かと思えば舞台から放たれるオーラは常に別格。にらまれたらそれだけでもうエネルギーがわいてくる。私たちにはマチュアな進化を遂げつつある團十郎さんの歌舞伎が必要だ!歌舞伎界の真ん中を生きる團十郎さんが、歌舞伎への思いを真摯に語ってくれた。
カルチャー
2025年7月1日
-
【雨宮塔子 大人を刺激するパリの今】洗練された甘さを味わえるアフタヌーンティーへ
雨宮塔子さんによる連載「大人を刺激するパリの今」。14回目のテーマは「洗練された甘さ」。仕事仲間に推薦されたアフタヌーンティーのお店をご紹介!
カルチャー
2025年6月30日
Magazine
-
一度は泊まりたい!高級ホテル・旅館
日常を忘れて至福のときが過ごせる極上の旅へ
-
大人のくすみ&しぼみ肌に必要なケアとは?
化粧水の代わりに毎日使える「化粧水フェイスマスク」で保湿!
-
50代が真似したいデニムスタイル
進化系“デニム・エレガント”でセンスアップ!
-
50代におすすめの夏アイテム
人気ファッションアイテムを厳選してご紹介
-
大人のためのヘアスタイル・髪型カタログ
髪のお悩み解決!若々しく見えるヘアスタイル
-
大人を魅了!ピエール アルディの名品バッグ
名品「アルファ」バッグは上品カラーのエクラ別注品も見逃せない
-
読者モデル 華組のZARAコーデ
50代はどう着こなす?ファッションブロガーコーデ集
-
エクラ公式通販の人気アイテムランキング
もう迷わない!50代が買うべき旬の服
-
読者モデル 華組のユニクロ・GUコーデ
真似したい!50代ファッションブロガーの着こなし集
-
カジュアルにもエレガントにも決まる「50代のボブヘア」59選
初夏は涼やかで、軽やかなヘアスタイルを楽しみたい。季節の変化に合わせた髪の扱いや、ファッションに馴染むアレンジができるボブヘアが人気。カジュアルからエレガントまで自在に楽しめる、洗練されたスタイル。
-
夏のおしゃれが楽しくなる!上品に映える50代の「ノースリーブ」6選
夏に着用したい「ノースリーブ」ですが、二の腕のムッチリやタプタプが気になってトライできないと感じる50代女性も多いもの。そこで、今回は二の腕が太く見えないノースリーブとおすすめコーディネートをご紹介♪
-
【50代の爽やかパンツコーデ10選】涼しげで軽い素材感と夏らしい色合いで暑い季節も快適に!
おしゃれな40代・50代読者モデル・エクラ華組のパンツコーデをご紹介。涼しげで軽い素材のパンツや、夏の明るい日差しに映えるカラーパンツなどを使って、夏らしい着こなしに。
-
爽やかで好印象!40代をおしゃれに見せるショートヘア24選
40代になると髪が細くなったり、パサついたり、ツヤがなくなったり、顔の印象も変わってきた...など、髪悩みは尽きない。そこで今回は、40代のお悩みを解決しながらおしゃれに見せるショートヘをお届けします。
-
【50代のノースリーブコーデ5選】 猛暑を少しでも快適に!腕回りを強調しすぎないナチュラルな着こなし
暑すぎるこの夏は「ノースリーブ」で快適に!今回は、おしゃれ好きな40代・50代読者モデル・エクラ華組&チームJマダムのノースリーブコーデをご紹介。