-
役者 板谷由夏《前編》役を演じている瞬間はリアルでいたい【エクラな美学 第5回】
しなやかに時を重ね、どこまでも挑戦を続けるエクラな女性たち。役者でありファッションブランドのディレクターでもある板谷由夏さんもそのひとりだ。前中後編の前編では、ホームレス女性を演じて話題となった主演映画『夜明けまでバス停で』について語ってくれた。
役者 板谷由夏《中編》役者という仕事はどちらかといえば苦しい【エクラな美学 第5回】
ノンフィクションで得た経験。役者として伝えられたら
板谷さん自身、’07年から11年間、報道番組『NEWS ZERO』のキャスターという仕事を通して、社会に目を向け続けてきた。
「問題を抱えている人やそれを突破しようとしている人など、とにかくいろいろな人々に会いにいって話を聞きました。今を生きる人々のリアルを、その時期山ほど浴びましたね。ひとりの人間としてすごく勉強になりました。ただその人たちの心の襞(ひだ)にまで分け入ろうとすると、時として自分のメンタルがダイレクトに影響を受けるんです」
ふっとひと呼吸間をおいて、こう続ける。
「東日本大震災で家族を亡くした悲しみの中にいる人にもずっと会い続けました。もうね、自分がどうかなるんじゃないかと思うほど苦しかった。テレビでは当事者が泣いているところだけが切り取られがちだけど、日常生活の中ではごはんを作り、食べ、おいしいねと笑うこともある。だって悲しみを抱えたまま明日も明後日も生きていかなきゃいけないじゃないですか。そういうリアリティのほうが私にはこたえました。脚本では書ききれない部分かもしれない。そのとき思ったんです。このノンフィクションをフィクションの中で大勢の人に伝える、自分のフィルターを通して出す、それが役者である私の仕事かもしれないと。あのときたっくさん浴びたリアリティや出会った人々の思いを、いつかどこかで作品の中に還元できたらと」

俳優、女優、役者……、と役を演じる職業を表す言葉のうち、板谷さんは「役者」が一番しっくりくるという。
「その役を演じることが、私の人生に求められた役目なのだと思いたいんですね、きっと。この仕事が向いているかどうかわからないけれどね」
映画『avec mon mari』(監督:大谷健太郎)で役者としてデビューしたのは23歳の時。チームで協力して作品を作る楽しさに夢中になった。『運命じゃない人』(監督:内田けんじ)、『サッドヴァケイション』(監督:青山真治)、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(監督:大根仁)と、その後も40代にかけて精力的に出演した。
「とにかくなんでも演じたいって思っていました。オファーは基本的にくるものは拒まず、ひとつひとつ積み重ねていこうと」
「役者という仕事、楽しいというよりどちらかといえば苦しいかな」
テレビドラマでもさまざまな姿を見せてくれている。あえていえば、雑誌の編集長、医者、弁護士など、その道のプロフェッショナルという役どころの印象が強い。
「役づくりというわけでもないけれど、まわりのいろいろな人を観察するのが好きですね。うわ! 今あの人やっばい転び方したなあとか、この人そこでそういう表情するんだとか、あのお母さん、子供のことこういう叱り方するんだとか。放っておけばいつまでも観察してますね」
人間観察は役者の性(さが)。役者という仕事のおもしろさをどう感じているのだろう。
「うーん、どんな役でもひとつひとつ淡々とやってきたけれど、おもしろいとか楽しいとか思ったことないかも。楽しいかなあ……、いや楽しくはない気がしますねえ。チームで何かを作る一体感は好きですし、いろいろな人と出会えるのも楽しい。でもひとりの女の人生や背景を背負って演じることは……、うん、やはりどちらかというと苦しいかなあ」と苦笑しつつ、こう続ける。
「苦しいから基本的にはその現場が終わると全部忘れちゃうんです。でもずっとあとになってから、演じた役が私にメッセージを送ってくることがあるんです。そうか、あの役ってこういうことだったのか、こういうことがいいたかったのかと。撮影中にリアルタイムに感じろよって思いますが。終わった役は引きずらないほうですが、ずっと付き合い続けているような気持ちになる役もありますね。ほんと、なんだか変な仕事ですよね(笑)」
(後編へつづく)

板谷由夏
-
【俳優・片岡愛之助さんインタビュー】映画『キングダム 運命の炎』で主人公の運命を脅かす敵役を熱演
映画『キングダム 運命の炎』で主人公の前に立ちはだかる敵軍の副将・馮忌(ふうき)を演じた片岡愛之助さん。圧倒的な強さを表現するために気をつけたこととは?
-
【高橋一生さんインタビュー】安全な道を選ぶよりどうせなら、やりきって後悔するほうがいい
癒し系から心に闇を抱えるサイコパスまで幅広い役柄を見事に演じきり、作品ごとにまったく異なる表情や世界観を見せてくれる高橋一生さん。その高橋さんが今月公開の映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』で演じるのは、人の心や記憶を本にして読むことができる漫画家・岸辺露伴。名作コミック『ジョジョの奇妙な冒険』から生まれたスピンオフ作品がドラマ化されて話題を呼んだ。そして今回、同じく露伴を主人公とする漫画、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が実写映画化に。露伴が人気を集める理由について高橋さんはこう語る。
What's New
-
空腹、聞く耳持たずーVentre affamé n'a point d'oreilles.【フランスの美しい言葉 vol.23】
読むだけで心が軽くなったり、気分がアガったり、ハッとさせられたり。そんな美しいフランスの言葉を毎週月曜日にお届けします。ページ下の音声ボタンをクリックして、ぜひ一緒にフランス語を声に出してみて。
カルチャー
2025年7月7日
-
終戦から80年、改めて平和について考えたい。戦争をテーマにした本5選
今年は第二次世界大戦の終結から80年。そんな節目の年となる今、改めて戦争や平和について考えたい。今回は、毎月お届けしている連載「今月のおすすめ本」でこれまで紹介してきた本の中から、戦争をテーマにした本をご紹介。
カルチャー
2025年7月6日
-
襟の開きが絶妙でほどよく抜けた印象に!夏ゴルフの帰りは「ポロニット」「スキッパーニット」【松井陽子の「エクラ ゴルフ部へようこそ!」vol.7】
ゴルフの行き帰り、皆さんはどんな装いですか。「正解に困る・・・」という声を多く聞いたので、今回は私のとある日のアフターゴルフの装いをご紹介します。
カルチャー
2025年7月3日
-
【市川團十郎インタビュー】市川團十郎47歳。今、絶対見ておくべき理由
團十郎の舞台が今、すごいことになっている。「5月の弁慶を見て自然に涙が出た」「今このときに向かってすべてを調整してきたと思わせる素晴らしい完成度」。歌舞伎座の内外ではもちろん、SNSでも最近こんな感想によく出会う。市川團十郎、47歳。キレッキレの鋭い印象はいつのまにか「頼もしさ」に、そして見たものを燃やし尽くすかのような勢いある目力にはいつしか温かさが宿っている。今や目じりのしわまでが優しげだ。かと思えば舞台から放たれるオーラは常に別格。にらまれたらそれだけでもうエネルギーがわいてくる。私たちにはマチュアな進化を遂げつつある團十郎さんの歌舞伎が必要だ!歌舞伎界の真ん中を生きる團十郎さんが、歌舞伎への思いを真摯に語ってくれた。
カルチャー
2025年7月1日
-
【雨宮塔子 大人を刺激するパリの今】洗練された甘さを味わえるアフタヌーンティーへ
雨宮塔子さんによる連載「大人を刺激するパリの今」。14回目のテーマは「洗練された甘さ」。仕事仲間に推薦されたアフタヌーンティーのお店をご紹介!
カルチャー
2025年6月30日
Magazine
-
一度は泊まりたい!高級ホテル・旅館
日常を忘れて至福のときが過ごせる極上の旅へ
-
大人のためのヘアスタイル・髪型カタログ
髪のお悩み解決!若々しく見えるヘアスタイル
-
50代が真似したいデニムスタイル
進化系“デニム・エレガント”でセンスアップ!
-
大人を魅了!ピエール アルディの名品バッグ
名品「アルファ」バッグは上品カラーのエクラ別注品も見逃せない
-
読者モデル 華組のZARAコーデ
50代はどう着こなす?ファッションブロガーコーデ集
-
エクラ公式通販の人気アイテムランキング
もう迷わない!50代が買うべき旬の服
-
大人のくすみ&しぼみ肌に必要なケアとは?
化粧水の代わりに毎日使える「化粧水フェイスマスク」で保湿!
-
50代におすすめの夏アイテム
人気ファッションアイテムを厳選してご紹介
-
読者モデル 華組のユニクロ・GUコーデ
真似したい!50代ファッションブロガーの着こなし集
-
カジュアルにもエレガントにも決まる「50代のボブヘア」59選
初夏は涼やかで、軽やかなヘアスタイルを楽しみたい。季節の変化に合わせた髪の扱いや、ファッションに馴染むアレンジができるボブヘアが人気。カジュアルからエレガントまで自在に楽しめる、洗練されたスタイル。
-
夏のおしゃれが楽しくなる!上品に映える50代の「ノースリーブ」6選
夏に着用したい「ノースリーブ」ですが、二の腕のムッチリやタプタプが気になってトライできないと感じる50代女性も多いもの。そこで、今回は二の腕が太く見えないノースリーブとおすすめコーディネートをご紹介♪
-
【50代の爽やかパンツコーデ10選】涼しげで軽い素材感と夏らしい色合いで暑い季節も快適に!
おしゃれな40代・50代読者モデル・エクラ華組のパンツコーデをご紹介。涼しげで軽い素材のパンツや、夏の明るい日差しに映えるカラーパンツなどを使って、夏らしい着こなしに。
-
爽やかで好印象!40代をおしゃれに見せるショートヘア24選
40代になると髪が細くなったり、パサついたり、ツヤがなくなったり、顔の印象も変わってきた...など、髪悩みは尽きない。そこで今回は、40代のお悩みを解決しながらおしゃれに見せるショートヘをお届けします。
-
【50代のノースリーブコーデ5選】 猛暑を少しでも快適に!腕回りを強調しすぎないナチュラルな着こなし
暑すぎるこの夏は「ノースリーブ」で快適に!今回は、おしゃれ好きな40代・50代読者モデル・エクラ華組&チームJマダムのノースリーブコーデをご紹介。