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毒親からの解放がテーマの『ハピネスエンディング株式会社』ほか3冊【斎藤美奈子のオトナの文藝部】
「毒親」「親ガチャ」などの表現が流行し、親と子の関係を問い直す動きが広がっている。今回は、『ハピネスエンディング株式会社』ほか毒親をテーマに描いた3冊について、文芸評論家・斎藤美奈子さんが解説。
第6回「文芸エクラ大賞」大賞発表! アラフィーの心を揺さぶる1冊とは?
文芸評論家 斎藤美奈子
本の執筆だけでなく、新聞や雑誌などにも切れ味鋭い文芸評を寄せ、幅広く支持されている。
書評ライター 山本圭子
出版社勤務を経てライターに。女性誌ほかで、新刊書評や著者インタビュー、対談などを手がける。
書評ライター 細貝さやか
本誌書評欄をはじめ、文芸誌の著者インタビューなどを執筆。海外文学やノンフィクションに精通。
書評担当編集 K野
女性誌で書評欄&著者インタビュー担当歴20年以上。女性誌ならではの本の企画を常に思案中。
「文芸エクラ大賞」大賞発表!
『華ざかりの三重奏(テルツェット)』
坂井希久子 双葉社 ¥1,815
可南子は定年退職後に中学時代の親友・芳美と同居を開始。ヤギと散歩する不登校らしき少年や家に居場所をなくした女性がそこを訪れるようになり、さらにはあるプロジェクトまで始まって……。生き方は違っても、60歳になれば誰もが抱くのがお金や健康、孤独などへの不安。それらにさいなまれるのではなく、新たな一歩を踏み出す女性たちを描いた小説。

今までになかったタイプの女性の前向きさ! 第2の人生を探すときの指針がここに
━━文芸評論家 斎藤美奈子
少女漫画オタクは永遠! 楽しむ気持ちを知っている人は最強だと思った
━━書評ライター 山本圭子
ほどよい距離を保ちつつ、趣味できゃぴきゃぴ盛り上がる女性たちがいい!
━━書評ライター 細貝さやか

受賞コメントをいただきました! 作家・坂井希久子さん
女性の人生には独身、既婚、子供のあるなしや仕事の有無といった分岐点があり、長らく交わることがない。それらが一段落した60歳の節目に、かつての友人同士を再会させるとどうなるかなと考えました。老後の不安は多々あれど、とにかく楽しいお話にしたいと考えていたので、仲間を増やして思わぬ方向に突き進んでいく彼女たちを頼もしく感じました。私の血肉となってくれた少女漫画と、ヤギを出せたのも満足です。ありがとうございます。
文芸エクラ大賞とは?
私たちは人生のさまざまなことを本から学び、読書離れが叫ばれて久しいとはいえ、本への信頼度が高いという実感がある世代。エクラではそんな皆さんにふさわしい本を選んで、改めて読書の喜びと力を感じていただきたいという思いから、’18年にこの賞を創設。
選考基準は、’22年6月~’23年5月の1年間に刊行された文芸作品であり、エクラ読者に切実に響き、ぜひ今読んでほしいと本音でおすすめできる本。エクラ書評班&書店員がイチ押しする作品の中から、エクラ書評班が厳選した絶対に読んでほしい「大賞」、ほかにも注目したいエクラ世代の必読書「特別賞」、さらに「斎藤美奈子賞」「書店員賞」など各賞を選定。きっと、あなたの明日のヒントになる本が見つかるはず!
本音が楽しく飛び交う選考会。気になるその内容は?
K野 文芸エクラ大賞も6回目になりましたが、今年はいつにも増して個性豊かな作品が多かったですね。
山本 金原ひとみさんの『デクリネゾン』の主人公は2度の離婚歴がある女性作家。どんなに悩んでも、娘も仕事も若い恋人も手放そうとしない握力の強さに圧倒されました。
細貝 デビューのころとは違う作者の“生きづらさ”も見えた気がします。
K野 ここ数年介護小説が増えていますが、河﨑秋子さんの『介護者D』は主人公が推しの女性アイドルを心の支えにしているところがユニーク。
斎藤 娘30歳、父親66歳。介護が始まるには早いけれど、本作のように親が大病をするとこういうケースもありえますよね。父親は長年塾の先生をしていた地域社会のインテリ。そういう人が介護される側になると、プライドが本当に厄介!(笑)
細貝 家族でも恋人でもなく、ふだん触れ合うことのないアイドルの輝きに救われる主人公。こういう絆もあるんだなと思いました。
斎藤 『嘘つきジェンガ』は3作とも構成が秀逸。憧れの漫画家になりすましてオンラインサロンを開催する女性を描いた「あの人のサロン詐欺」は、落としどころをどうするのかなと思っていたら……。
細貝 意外だしせつなかったですね。
K野 西加奈子さんの乳がん闘病記『くもをさがす』は衝撃的でした。彼女は滞在先のバンクーバーで手術を受けますが、日本では考えられないことや不自由なことの連続で。
細貝 至れり尽くせりの日本の医療に慣れた私には無理そう。
山本 大変なときは信頼の置ける友人知人に「助けて!」ということが大事なんだなとつくづく思いました。
斎藤 バンクーバーは移民の街で、西さんの友人知人もそういう人たち。闘病記に彼女たちの歴史や背景まで織り込めたのは、西さんの中にいつも作家的好奇心があるからだと思います。彼女が病気を乗り越えられたのは、人間としての総合力があったからという気がしましたね。
山本 『華ざかりの三重奏』の主人公は、独身で定年まで勤め上げた可南子と子育てと介護を終え夫を亡くした芳美。同窓会での再会をきっかけに、かつての親友ふたりの人生は思いがけない方向へ……という話ですが、彼女たちをつなぐのは昔のめりこんだ少女漫画。名作を懐かしく思い出すエクラ読者も多そうです。
細貝 新たなことを始めちゃう彼女たちのはじけっぷりが楽しかった。
K野 気持ちよく読み終えた小説でした。
斎藤 可南子は男女雇用機会均等法第1世代。そういう人たちが老後を考える時期になったという感慨がありますね。まさに少女漫画みたいな展開ですが「老後は好きにしていいんだ!」という痛快さが二重マル。
山本 エッセイではジェーン・スーさんの『おつかれ、今日の私。』がイチ押し。自分に優しくしたくなりました。今年注目している作家は石田夏穂さん。『ケチる貴方』は女性の極端な冷え性を意外なドラマに仕立て上げている。クセになる味です。
K野 武田砂鉄さんの『父ではありませんが』も印象に残った本。彼の違和感は思考を広げてくれます。
斎藤 『家庭用安心坑夫』は廃坑テーマパークの坑夫マネキンが主人公の主婦を非現実へといざなう話。この強い個性は“買い”だと思います。
細貝 翻訳書では『私のペンは鳥の翼』を。戦火が絶えないアフガニスタンの現実がさまざまなかたちで描かれた、現代の必読書です。
斎藤 大賞の選考はいつもみんなで悩みますが、今年は全員の気分を大いに上げてくれた『華ざかりの三重奏』でいかがでしょうか。
K野 全員一致で賛成ですね。そのほかの本も自信をもっておすすめできるものばかり。納得のいくラインナップになったと思います!
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