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脚本家・大石静《前編》大河ドラマ「光る君へ」で1000年前のリアルを描く【エクラな美学 第8回】
強くしなやかで、どこまでも自由──。数々のテレビドラマで魅力あふれる女性像を提示してきた大石静さんもまた、独自の才能を開花させ、より奔放に今を生きて描き続ける人。50代からの人生を、私たちはどうサバイブすべきか? 前中後編の前編では、現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」で描かれる1000年前の女性像について語ってもらった。
脚本家・大石静《後編》小さな幸せを見出しながら生きていく【エクラな美学 第8回】
「50代からは、喪失の連続。まずは、その覚悟を決めること」
走り続けた40代50代。その間には、女性の欲望と挫折を正面から見つめた『セカンドバージン』(’10年放送)など、世の価値観を揺さぶるヒット作も生まれた。
「仕事人としては、人生のど真ん中。全盛期だったと思います。戻りたいって、ときどき思う。それから今までは、プライベートではあんまりいいことはなかった気がします。親が死に、身近な人が死に、自分も病気になったり……、さいわい仕事は次々とあったけど、ほかはもう失うことの連続だったかな」
『光る君へ』の執筆が始まっていた’22年には、20代半ばから連れ添った夫を自宅介護の末に見送った。8歳年上の夫と結婚したときから、それはいつか向き合う使命だと自覚していたという。
「だから、夫が倒れたときには『あ、来たな』と思いました。余命いくばくもないと聞かされたときも、動揺するというより、夫が恐れず、苦しまず旅立てるようにプロデュースすることが、私の人生の試練であり妻としての最後のミッションだと思いました。友人からは『プロデュースだなんて』といわれたりもしたけれど、きっと彼は感謝して逝(い)ったと思います。もちろん、今は寂しいですけど、私でなければああいう見送り方はできなかったと思うので、やるだけやったと感じています」
心身の衰え。家族や人間関係の変容。愛する者との永遠の別れ。見つめないようにしてきた諸々は、50 代から先、誰にも平等に、かつ確実にやってくるものだ。
「いちいちビビっていちゃいけない」と大石さん。伸びた背すじで、それを示す。
目標をクリアし、小さな幸せを見出しながら生きていく
「生と死の宿命は、すべての人が背負っているもの……。恐れても逃げても、喪失は必ず訪れるものなので、ときどき覚悟を決めて、あれこれシミュレーションしておくのもいいんじゃないでしょうか。人生って、たくさんの絶望やあきらめの中にときどきいいことがある、という感じだと思うんですよ。だから絶望が訪れても、あ、来た、くらいに思うようにしています。またそのうち素敵なこともあるだろうからって思って」
時に型破り。時にインモラル。それでも、逃れられない宿命に恐れず立ち向かい、道を切り開く──書き続けてきた女性像は、いつも時代の一歩先で私たちに光を放ってきた。大石さん自身を今、導くものとは? そうたずねると、うーん、と少し考えた末に、こう答えた。
「最後まで倒れないで『光る君へ』を書き上げること。それが、とりあえずの目標です。書き上げてパタッと死ねたらいいなとも思うけど、そんなわけにもいかないので(笑)。次の仕事が決まっているから、それもやりとげよう、で、もし次の仕事がきたら……、と短い間隔で目標を設定し、その中で小さな幸せを見つけながら生きていくんじゃないでしょうか」
「たくさんの絶望やあきらめの中に、ときどきいいことがある。それが人生だと思うんです」
年齢を重ねた先で起こる試練に備え、それらを新しい経験として受け止めながら、人生を味わいつくしていく覚悟。でも、自分にできるだろうか? これから先、そんなふうにタフに生きられるだろうか?──ふと不安を覚えたあなたのために、誰よりも強さをリスペクトしてきた大石さんが撮影中にふと発した言葉を、希望をこめて最後に書き添えておく。
「……不安な感じが残っている人って、見る人を安心させるんですよ。自信満々な人よりも、どこか不安そうな人のほうが、絶対にチャーミングだから」
大石 静の今の活動の現場から
’22年5月の制作・主演発表会見での2ショット。紫式部を誰に?と思った瞬間、「パッと吉高さんが浮かんだ」と大石さん。過去2本の大石作品でもヒロインを務めた人への信頼は終盤の今も揺るぎない。
大河ドラマ『光る君へ』、いよいよクライマックスへ!
道長の娘である中宮・彰子(見上愛)の女房となって内裏に上がったまひろは、最愛の人の依頼を受け、ついに『源氏物語』を書きはじめるが……。
「ふたりの距離が近づくことで、これから先、さらにさまざまなできごとが起こります」と大石さん。まひろの力によって覚醒していく彰子、そして、本作では道長との間の子である実娘・賢子(南沙良)との関係にも注目しつつ、雅な世界に浸ろう。
大河ドラマ『光る君へ』
NHK総合 毎週日曜20:00〜20:45ほか
NHKプラスにて同時配信・見逃し配信あり
大石 静
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