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脚本家・大石静《中編》書いてきたのは常に「強い女」だった【エクラな美学 第8回】
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脚本家・大石静《前編》大河ドラマ「光る君へ」で1000年前のリアルを描く【エクラな美学 第8回】
1000年前のリアルを描く 勝算のない「賭け」に出た
「大御所風に撮らないでくださいね。私、まだ発展途上なので」
カメラを向けられた大石静さんは、そういって笑顔を見せた。ニットコートに包まれた体を軽やかに揺らし、時には足もとでステップを踏む。かつてタップダンスを学び、先生の代稽古をしていたこともあるというエピソードは、この日、初耳だった。
「雑誌で見る年配のかたの写真って、貫禄が強調されているように感じることがあるので……。もちろん私は発展途上の年齢じゃないけど、『どうだ!』って感じのおばあさんを見せられても『あ、そうなの』で終わっちゃうじゃないですか。ふだんは裏方として人をどう素敵に見せるかを考える立場だから、撮っていただくのはすごく新鮮。うれしいです」
衣装に合わせた私物のジュエリーやメガネからも、似合うものを熟知したおしゃれ上級者の趣(おもむき)が漂う。完成した大人であることは、職業人としても同様。テレビドラマの脚本家として38年、数多くのヒット作を放ってきた創作力は、70代に入った現在も衰えを知らない。現在は毎週日曜夜に放送されている大河ドラマ『光る君へ』で、多くの視聴者を、初めて目にする平安絵巻の世界へ誘(いざな)っている。
「最初に依頼があったとき、思わず『そんな時代、誰が見るんですか』といってしまいました。紫式部はともかく、藤原道長にいたっては、その人偉い人?というくらい無知だったし。でも、チーフ演出は『絶対にいける』と感じていたみたい。その自信の根拠はなんだろう、と不思議でした。でも、私を指名してくれた人に応えないのは罰が当たりそうな気し……、勝算は全然ないけどやってみようと思いました」
こうして、大河ドラマ史上2番目に古い時代を舞台にした物語への取り組みが始まった。のちに『源氏物語』の作者となる紫式部(作中では「まひろ」)と、宮廷の頂点に君臨した権力者・藤原道長の絆を軸に描き出される愛と政治の物語。大河ドラマの執筆は’06年の『功名が辻』に続いて2度目だが、生活習慣や文化の違いに加え、厳然たる身分制度下の階層社会に生きる人々の家族観や人間観を踏まえての作劇は、テレビドラマ、特にラブストーリーの名手と称される大石さんをもってしても未知の領域だった。
「まひろは、とにかく気むずかしい偏屈な女。せっかく道長が愛するまひろと一緒にいるために一生懸命具体的な提案をするのに、妾(めかけ)はいやだとかなんだとか、いちいち文句をつけて……、自分で書いていても『何いってんだ!』『道長、そりゃあ怒るよね。わかるよ』という気持ちがわきました(笑)。だけど、偏屈ななりになかなか人をよく見ているし、なにより吉高由里子さんが偏屈なヒロインの角をうまく丸めて演じてくれるので、ヒロインたりえています。道長役の柄本佑さんは才能あふれる人で、とにかく色っぽい。以前にもこのふたりを主役にしてドラマを書いたことがありましたが、今回のまひろ、道長も彼らでなければならなかったんだ、という宿命を感じます(笑)。ふたりの身長差もポイントなんですよ。まひろを抱いたとき、道長のあごの下にすっぽりと入ってしまう、そこに夢があるじゃないですか。ドラマはリアルを描くものだけど、夢も大事。だから今回、男性のキャスティングは高身長・面長にこだわりました」

屈託のない語り口からも、筆のノリがうかがえる。手探りで紡ぎはじめた物語は、『源氏物語』を書きはじめたまひろが作家として、宮廷女房として手腕を発揮するタームに入り、いよいよ佳境を迎えた。
「今は、現代劇とさして変わらないと思って書いています。もちろん、明らかな史実ははずせないし、時代特有の決まり事や文化など、むずかしさもありますが、それでも、人の気持ちは今も昔も変わらないと感じます。1000年たっても人間は成長していないし、誰もが愚かで愛(いと)おしい。人間って、そういうものなんだなと思います」
人間とは──それは、大石さん自身が少女時代からずっと心の奥にもち続けてきたテーマでもあった。
(中編へつづく)

大石 静
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