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モネが愛した庭と家を訪ねて、ジヴェルニーへ【この秋モネにひたる】
現在、国立西洋美術館にて開催中のクロード・モネの大回顧展『モネ 睡蓮のとき』。今回はモネが晩年を過ごしたジヴェルニーの家と庭にフォーカス。解説は担当学芸員の国立西洋美術館 研究員・山枡あおい氏。
日本を愛したモネと、モネの作品を愛する日本人。共鳴しあう理由とは【この秋モネにひたる】
モネと日本の相思相愛
モネの日本文化への憧れは、庭木や浮世絵のコレクションにとどまらない。作品の本質にも、日本文化の影響が宿っている。私たち日本人がモネをこんなにも愛しているのは作品に通底する共通点を感知し共鳴しているからなのかもしれない。
自然への温かいまなざしが日本人の心に響く
「水の庭」造成前に描かれた作品だが、自然への親しみのあるまなざしで光を反射する水面をとらえている点から、本展でも展示される。
2016年ルーヴル美術館の倉庫で発見され、ルーヴル美術館側が調査を行い、国立西洋美術館に情報を照会した結果、松方コレクションであることが判明した。上下逆さまに保存されていたため上部が欠損しているが、補填せずに修復され、2019年に初公開された。
オランジュリー美術館の「大装飾画」の習作として数多く描かれた縦横約2mの習作のうちのひとつ。睡蓮が浮かぶ水面に周辺の樹木と空が反映し、水中の水草のゆらめきも重ね合わせて表現されている。
マルモッタン・モネ美術館の展示室。世界有数のモネのコレクションを誇り、印象派の名の由来となった作品《印象、日の出》も所蔵。本展では、モネの息子ミシェルから遺贈された約50作品が来日している。
モネ本人から直接購入した東京展のみの展示作品
日本は、フランス国外では質・量ともにトップレベルに充実したモネのコレクションをもつ国のひとつだ。
「それは、当館のコレクションの礎(いしずえ)を築いた松方幸次郎をはじめ、生前のモネに会い、本人から直接作品を購入している日本人が何人もいたことが大きな理由のひとつだといえるでしょう」
モネがジヴェルニーで暮らした1883年から1926年は、日本の明治16年から大正15年(昭和元年)にあたる。政府要人や実業家、文化人が西洋文化を学ぶためヨーロッパに渡った時代。モネは、憧れの日本からやってきた人々をジヴェルニーに招き入れ、歓待した。
本展は京都と愛知県豊田を巡回するが、現在開催中の国立西洋美術館所蔵の作品の多くは、松方がモネから直接購入したものだ。特に「睡蓮」を描いた2作品は、ともに現在オランジュリー美術館に展示されている「大装飾画」の習作として描かれた大作。松方は、モネが存命中に唯一、《睡蓮》の装飾パネルを売ることを認めた相手でもあった。それが《睡蓮、柳の反映》だ。この大作は、数奇な運命をたどった。2016年、ルーヴル美術館の倉庫でカンヴァスを巻かれた状態で発見され、調査により松方コレクションだと判明した。上部が欠損した状態のままという前例のない修復を経て、2019年に初公開されている。
「このころの油絵は、通常、裏にワックスなどを塗って画面を安定させる裏打ちという処置がされていますが、当館所蔵の《睡蓮》には施されていません。裏打ちがされていないことにより、モネの筆致がなまなましく見て取れます」
堅牢度が低いこともあり、作品は門外不出。東京展のみの展示となるが、ほかの作品とディテールを比較しながら鑑賞できる絶好の機会となるだろう。
最後に、モネが日本を愛したように、私たち日本人もモネの作品に心を惹きつけられる理由をたずねてみた。
「モネは、日本文化における人と自然との交わり方に共感を抱いていました。自然に対して、個人の目を通した親密なまなざしを向けています。それが深いところで日本人の心に響いているのではないでしょうか」
日本を愛したモネと、そのモネの作品を愛する日本人。歴史を超え、長期間にわたって相思相愛の関係を結んできたからこそ実現した貴重な展覧会で、この秋、モネの「睡蓮」に浸りきりたい。
●山枡あおいさん
国立西洋美術館 研究員
’94年生まれ。国立西洋美術館 研究員。専門はフランス近代美術史。慶應義塾大学大学院前期博士課程修了後、’21年より現職。
クロード・モネ《Claude Monet》
Ⓒ musée Marmottan Monet
【information】
『モネ 睡蓮のとき』 国立西洋美術館【東京・上野公園】~’25年2月11日
〜’25年2月11日(火曜・祝日) 9:30〜17:30
(金・土曜は21:00まで。入館は閉館の30分前まで)
㊡月曜(11/4、’25年1/13、2/10〜11は開館。11/5、12/28〜1/1、14は閉館)
観覧料/当日一般¥2,300ほか
東京都台東区上野公園7の7 ☎050・5541・8600(ハローダイヤル)
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