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キュレーター・長谷川祐子《前編》キュレーターの概念と価値を日本美術界に広める【エクラな美学 第9回】
彼女にとっては、世界中が美と発見の宝庫である。国内外で数々のビエンナーレや展覧会を成功させてきた現代アートのトップキュレーター・長谷川祐子は、極めて理知的ながら生きることの楽しみをのびやかに追求する魂の自由人。まだ誰も見ぬ美の姿を探し続ける人の、思索の原点とは。前中後編の前編では、キュレーターという仕事について語ってもらった。
キュレーター・長谷川祐子《後編》楽しそうにしていると人は必ずついてきてくれる【エクラな美学 第9回】
楽しそうにしていれば人は必ずついてきてくれる
岡山県北部の12市町村で開催された『森の芸術祭 晴れの国・岡山』は、長谷川さんが手がけた最新の国際芸術祭。山間部の豊かな自然と山陽・山陰を結んだ街道の宿場町の歴史、そこに集(つど)う人々が継承し生み出す人的風土を背景に、国内外から招聘した40人以上のアーティストの作品を展開。自然と人間の調和について新しいヒントを提示している。
「もともとお題は何もなく、『県北地域で何かやってください』というご依頼でした。これまでイベントがほとんど行われてこなかった地域ですが、明治時代以降につくられた和洋折衷型の洋館や自然史博物館があり、洞窟や鍾乳洞などおもしろくスペクタクルな体験ができる場所も存在する。アートを置く環境としてすばらしいのではないかと直感しました」
たとえ初めて訪れる場所だとしても「どこでも、なんでもできます」と長谷川さん。過酷な状態でも結果を出し、決して失敗しないのがプロであると明言する。
「ただ、最初からあれやこれやと条件をつけられた仕事をお受けすることはできません。残念ながら、日本ではいろんな拘束がありますね。それは、キュレーターがプロフェッショナル(専門家)として認められていないから。そして、展覧会をビジネスにしようという考えが強く、収益性がないとまず投資しないという傾向も強いです。例えばフランスには、美しいことが起こればそれでいいという懐の深さがある。そうしたスピリットの差が、東京、パリのオリンピックの開会式にも明らかだったのではないでしょうか」
それでも、長谷川さんはアートとの出会いの場をつくり続ける。ゴールは、ひとりでも多くの観客に届けること、そしてアーティストにも達成感をもってもらうこと。信条は「シンプルに語る」。その思いは、とみに強くなっているという。
「むずかしいことをむずかしくいうかたのことは、私はあまり信用していません。より深く考えていらっしゃるかたほど語る言葉はシンプルですので、自分でもそうしたいと」
「過酷な状態でも、必ず結果を出す。プロとは、失敗しない人のこと」

「内面から自分を、人生を美しく。アート鑑賞は、大人の今こそ最適な“感性のエステ”です」
今、考えているのは『楽しくてためになる』アートとの接点づくり。なるほど、非常にシンプルだ。でも、深い。
「自分の心が豊かになったり、新しい知識を得たり……。『ためになる』にはいろんな意味がありますが、楽しくてためになる場所があったら、皆さん、絶対に行きたくなりませんか? 楽しそうにしていると、人は必ずついてきてくれるはず。逆に、現代アートはハードルが高いと思われているのが、私には不思議です。こんなにわかりやすく、いいものなのに」
長谷川さんいわく、アート鑑賞は「感性のエステ」。思慮深さを意味する「Sensible」、感受性を示す「Sensibility」、趣味のよさを表す「Sense of taste」と感性には3つの側面があるが、アートに向き合い心を動かすことは、この3つのSを磨くのに最適だというのだ。
「ご自分がどういうものを好きなのか、どんなものに心を動かされるのか、あるいは、何が嫌いなのか。それを見極めるために、特化した美のサンプルである現代アートをご覧になるのは非常にいい方法ですし、手軽だと思います。それに……今はまだ考えなくてもいいことかもしれませんが、自分が死ぬときは何も持っていけず、体ひとつ、心ひとつでこの世界にお別れするわけですよね。そのとき、自分とは何なのか……きっと一生のうちに見てきたものを回顧して、あの絵画やあの作品に出会えてよかったと、改めて人生の豊かさを実感するはずです。ですから、子育てを終えてもう一度自分の時間をもつこれからの時期に、内面からさらに美しくなり、最期に美しい瞬間を迎える準備をしておかれるのもいいんじゃないでしょうか。大丈夫。50代からでも十分間に合いますよ」

長谷川祐子
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キュレーター・長谷川祐子《中編》世界で学ぶ。国内外のアーティストとかかわり見識を深める【エクラな美学 第9回】
彼女にとっては、世界中が美と発見の宝庫である。国内外で数々のビエンナーレや展覧会を成功させてきた現代アートのトップキュレーター・長谷川祐子は、極めて理知的ながら生きることの楽しみをのびやかに追求する魂の自由人。まだ誰も見ぬ美の姿を探し続ける人の、思索の原点とは。前中後編の中編では、アートやアーティストとの向き合い方について語ってもらった。
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