【50代 癒しの宿&ホテル】文化財に寄り添う宿で歴史に浸り、自分を見つめる『柳川藩主立花邸 御花』

福岡県の南西、水郷として知られる柳川に、江戸時代の大名家の末裔が今もその歴史を受け継ぐ庭園と宿がある。『御花』は、国指定名勝の中に泊まれる日本で唯一の宿。料理旅館ならではの行き届いたしつらえにくつろぎ、遥かな時間に思いを馳せる、心穏やかなる休日を。

柳川藩主立花邸 御花

柳川藩主立花邸  御花

18畳、18畳、12畳の和室が並ぶ「大広間」。昼は一般客が見学するが、夕方以降は宿泊者限定のラウンジに。ロビーから好きな飲み物を持参して、ライトアップされた庭を眺め、ぼーっと空白の時間を過ごせるのも宿泊者の特権

400年続く伝統の価値と未来への思いに心潤う

柳川は、水の町。市内には網の目のように掘割がめぐらされ、「どんこ舟」に乗ってしだれ柳や季節の花々、静かな街並みを眺める「川下り」観光が有名だ。その川下りのハイライトが『柳川藩主立花邸 御花』。柳川藩5代藩主が1738年に設けた邸宅が、現在の『御花』となった。掘割に囲まれた約7千坪の広い敷地は、国の名勝に指定された文化財施設。敷地内には、明治時代の近代和風建築が立ち並び、柳川藩主、そして伯爵家と400年にわたって連綿と続いた立花家の歴史を今に伝えている。

その『御花』の宿泊施設が、今年1月にリニューアルされて話題となっている。経営と運営を手がけるのは、立花家18代にあたる立花千月香さん。

「文化財になじむ宿としての価値を見出し、次の100年も魅力的な宿であることをテーマに、スタッフ全員でリニューアルを進めました」と立花さん。

チェックインは地元の家具を配したシックなロビーで。ウエルカムドリンクは、伯爵家農場「橘香園」でとれた柑橘のジュース。客室に向かうと、廊下には、かつて伯爵家が深川製磁に特注した家紋入りカップが飾られている。

8タイプある客室は、庭園と建物を見渡す文化財ビューの客室が人気。備品には、歴史を踏まえて深川製磁の茶器を取り入れる一方、バスアメニティには100%自然由来のNEMOHAMOを採用したりと、伝統と未来とのバランス感が心地よい。

夕方は、宿泊者に向けて、屋敷内を案内するツアーにぜひ参加してみたい。夕食に登場するのは、地元出身の料理長が手がける美しい会席料理の数々。土地の物語とともに味わうと、おいしさもひときわだ。お約束の柳川名物「うなぎのせいろ蒸し」もほどよい大きさで提供される。食後は、宿泊者専用ラウンジの「大広間」へ。藩主や伯爵が眺めていた同じ庭と月を眺めていると、遥かな時間が心にしみる。

ぐっすりと眠って、目覚めた朝は、朝食も楽しみ。炊きたての土鍋ごはんに、炭酸豆腐や全型1枚まるごと出てくる有明のりなど、地場のおかずが見事な合の手を務めている。前もってプランで予約すれば、「どんこ舟」の上でゆったりと朝食をいただく体験も可能だ。

『御花』で過ごす時間は、立花家が柳川とともに紡いできた歴史の深さに出会い、静かに流れる時間の中で、自分を見つめ直す旅となるはずだ。

特別室「黒松」は、87.71㎡の広さ。照明は「八女提灯」、壁のアートピースは、佐賀の「名尾手すき和紙」。椅子は「フリッツ・ハンセン」。

特別室「黒松」は、87.71㎡の広さ。照明は「八女提灯」、壁のアートピースは、佐賀の「名尾手すき和紙」。椅子は「フリッツ・ハンセン」。ベッドルームに加えて、ヒバ材の丸い浴槽があるバスルームとくつろげる和室もある

『御花』のロゴマークは、立花家の家紋「祇園守紋」から。

『御花』のロゴマークは、立花家の家紋「祇園守紋」から。

ライブラリーから、柳川生まれの詩人・北原白秋の詩集や立花家の先代が著した本などを借りて、部屋でゆっくり読んでみたい。

ライブラリーから、柳川生まれの詩人・北原白秋の詩集や立花家の先代が著した本などを借りて、部屋でゆっくり読んでみたい。

「黒松」の客室からは、立派な黒松が植わる「松濤園」や黒い瓦屋根が美しい「大広間」、明治時代に建てられた白亜の迎賓館「西洋館」を見渡せる

「黒松」の客室からは、立派な黒松が植わる「松濤園」や黒い瓦屋根が美しい「大広間」、明治時代に建てられた白亜の迎賓館「西洋館」を見渡せる

特別室のゲストは、伯爵家が居室としていた、庭に面した個室で夕食をいただける。

特別室のゲストは、伯爵家が居室としていた、庭に面した個室で夕食をいただける。

特別室のゲストは、伯爵家が居室としていた、庭に面した個室で夕食をいただける。前菜盛りは、有明海産の食材と地元野菜を用いて新緑の川下りをイメージ。ワタリガニの昆布巻き寿司やわけ(イソギンチャク)の唐揚げなど、珍味も楽しい。

前菜盛りは、有明海産の食材と地元野菜を用いて新緑の川下りをイメージ。ワタリガニの昆布巻き寿司やわけ(イソギンチャク)の唐揚げなど、珍味も楽しい。

伯爵家農場の柑橘類を使用したクラフトビール「伯爵AL E」を合わせたい。奥は「うなぎのせいろ蒸し」

メインは、豊作和牛のヒレステーキと柳川美豚の伯爵エール煮込みをひと皿に盛り込んで。

ロビーには、立花家の家族写真や14代が農事試験場で品種改良に携わった柑橘類の絵などの資料が展示されていて、興味深い

ロビーには、立花家の家族写真や14代が農事試験場で品種改良に携わった柑橘類の絵などの資料が展示されていて、興味深い

「松濤園」は、座敷から眺める鑑賞式の庭園。

「松濤園」は、座敷から眺める鑑賞式の庭園。

池には季節の鳥が遊び、ぼーっと眺めているだけで、不思議と心が落ち着いてくる。

池には季節の鳥が遊び、ぼーっと眺めているだけで、不思議と心が落ち着いてくる。

「西洋館」正面の立派な門とは別に、掘割に面して『御花』専用の船着場もある。

「西洋館」正面の立派な門とは別に、掘割に面して『御花』専用の船着場もある。 宿泊客は、予約のうえでこの船着場からチェックインすることもできる。 家紋を背中に入れたスタッフの長ハッピ姿も、粋だ

Data
福岡県柳川市新外町1
0120・336・092
全20室 スタンダードルーム¥38,700〜、特別室「黒松」¥83,200〜(2名1室利用の1泊1名料金、2食つき、サ・宿泊税込)
九州佐賀国際空港からリムジンタクシーで約30分。または、西鉄柳川駅からタクシーで10分。
https://ohana.co.jp/

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