株式会社 和光 代表取締役社長 庭崎紀代子さん「日本には、まだ見ぬすばらしいものがある。 出会いを重ね、誇れる価値観を伝えていきたい」【エクラ トップリーダーズvol.07】

東京の中心から、世界へ。過去から現在へ、そして未来へ。先人から受け継いだ伝統の場と、選びぬかれたものに託して、美意識を発信しようとするリーダーがいる。姿勢は柔軟に、かつ、ときめきを忘れずに。日本が誇るエレガンスの殿堂には、常に革新の風が吹いている。

株式会社 和光 代表取締役社長

庭崎(にわさき)紀代子さん

庭崎紀代子さん

コーポレートブランディング担当だった’22年に、建物を「SEIKO HOUSE」に改称。「お客さまをお招きする『邸宅』のイメージです」

profile

庭崎紀代子

’86 日本女子大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現・セイコーグループ)に入社。宝飾部門に配属。
’01 ウオッチ部門(現・セイコーウオッチ株式会社)へ異動。商品開発、広報、PRなど幅広いジャンルを担当する。
’15 同社執行役員広報・PR部長を経て取締役・執行役員に就任。
’20 セイコーホールディングス株式会社(現・セイコーグループ株式会社)常務取締役、株式会社和光取締役、セイコーグループ株式会社常務執行役員などグループ企業要職を歴任。
’23 現職。

「楽しい」を積み重ねたらいつのまにかここまで来た

銀座はもちろん、東京、そして日本のランドマークともいえる和光本店。ウォッチ、ジュエリーからファッション、アート、食品まで粋を集めた品ぞろえとともに、足を踏み入れるだけで背すじが伸びるエレガンスと、包み込まれるようなホスピタリティを備えた唯一無二の空間だ。「昭和22年の設立から培ってきた和光独特のムードがあり、代々のお客さまが信頼を寄せてくださった。バトンを受けた私たちが今、それを伝統として預からせていただいているのだと感じています」

現在、社長を務める庭崎紀代子さんは、服部セイコーの宝飾部門からキャリアをスタートさせ、ウォッチの商品企画やマーケティング、グループ全体のブランディングなどで手腕を発揮。和光取締役時代にはコロナ禍を経験したが、一歩先を見つめる姿勢は当時も今も変わらない。「和光とは何者か、今後どうあるべきなのか……それを考えたとき、やはり和光は、和光というブランドでありたいと。生まれ変わるためには歴史や伝統を足かせにせず、危機も新しいチャレンジをしていくタイミングにしたいと思いました」

その象徴ともいえるのが、’24年にリニューアルした地下1階の「アーツアンドカルチャー」。コンテンポラリーな和の空間に選びぬかれたファッション、ライフスタイルアイテムがそろい、工芸やアートの企画展も行われるフロアには、外国人観光客やアーティスト、若い世代など、従来とは異なる顧客が訪れる。

「西洋文化が珍しかったころ、和光の地階には蓄音機が置かれ、音楽が聞けたりしたのだそうです。新しい価値に触れる場所、それを現代に置き換えるなら、銀座や日本を訪れる世界のかたがたに、日本のものづくりや美意識を発信することがふさわしいのではないかと。私自身も海外の素敵なものに憧れながら育ってきた世代ですが、今の年代になって、日本にはまだまだすばらしいものがたくさんあることに気づかされています。これからは、もっとそこに光を当てていきたくて」

人に会うのが好きで、常に新しいものに興味津々。海外、国内を含めて数多くの場所を訪れて発見を重ね、今も企画書を自ら書いて新たなコラボレーションを提案する。「楽しい、を積み重ねたらここまで来た」という庭崎さんだが、トップを引き受ける際には、不安も感じていた。「それまで小売りやBtoC(個人客とのビジネス)の経験はなかったので……。でも、女性経営者の先輩たちに相談したら、どのかたも『おもしろいから、やってみたら?』と。結果は、おっしゃるとおりでした。あまり性別でものを考えないのですが、女性のほうが肩の力を抜いて仕事を楽しむかたが多いのかもしれません」

就任から2年。「ブランドとは、自分たちのオリジナリティをいかに出すか」だと感じている庭崎さん。真の日本のラグジュアリーを追求する旅は、続く。

「海外のかたから教わることも多いのですが、日本のものづくりの正確性や繊細さ、伝統に対する考え方は、世界のどの国とも違うのだと。誇れるものや価値観を伝えていく場でありたいと思っています」

大谷翔平選手も愛用の「グランドセイコー」。庭崎さんはレディスの企画を担当。「シンプルに見えて、文字盤にも針にも複雑なカットが施されているので、視認性と輝きがあるんです」。実は大谷選手は庭崎さんの"推し"。デスクまわりにはグッズスペースが

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"眼"に通じる"丸"をデザインモチーフにした和光オリジナルの「MANACO」。収納力のある三つ折り財布とアップサイクルで作ったサステイナブルなポーチは常に携帯 

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創業者・服部金太郎の執務室だった応接室で。内装に昭和初期のエレガンスがにじむ

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motto

和光に来てから「出会う人や情報の幅がとても広がった」と庭崎さん。「だから、いつでも誰に対してもオープンでありたいし、考えるときにも視野を広くするよう心がけています」。

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