【阿部サダヲさん×松たか子さんスペシャル対談】また夫婦、ですけど、前のは忘れていただいて(笑)

最強のふたりがタッグを組む。映画やドラマで夫婦として名演技を重ねてきたふたりが、今回は舞台で、またもや夫婦を演じる。しかも作・演出は宮藤官九郎さん。それだけでもう、ワクワクだ。意味深だけど意味不明なタイトルを前に、ふたりは何を思うのか?

歌って踊って演奏して、着替えてメイクを変えて……。大変なことになりそうです(阿部さん)

松たか子さん、阿部サダヲさん
(松さん)ブラウス¥29,700・パンツ¥29,700/ル フィル ニュウマン 新宿店(ル フィル) イヤリング、靴/スタイリスト私物

――11月から始まるこの舞台、なんと、“法廷ロックオペラ”だという。ミュージカル俳優の阿部サダヲさんと演歌歌手の松たか子さんの夫婦が、離婚調停を求めて争うらしい。

阿部サダヲ(以下 阿部)離婚したいって言ってるんですけどね、なんか、不思議な夫婦です。ずーっと裁判しているんで。そんなに妻を嫌いじゃないと思うんですけど。

松たか子(以下 松)でも観客の皆さんに楽しんでいただくためには、本気でこう、罵り合うというか、バトルをしないと。それがどんどんぐちゃぐちゃになっていくんですよね。

阿部 裁判している最中にいろんなことが、いろんなところで起きているので、きっと演じる人間はあっちに行ったりこっちに行ったり、歌ったり踊ったり演奏したり着替えたりメイクを変えたり、大変なことになるんじゃないかと。

 宮藤官九郎さんの台詞のスピード感がすごくて、最初に読んだとき圧倒されてしまいました。でも、これを演じる阿部さんをすぐそばで目撃できるんだと思うと、それが楽しみなんですよね!

阿部サダヲさん

――宮藤官九郎さんがオリジナルで作るロックオペラ・シリーズの、第5作目。今回は『親バカ』をテーマに、親権をかけて歌ったり踊ったり生演奏したりの、ハイカロリーな舞台になりそうだ。

 私は演歌歌手、なんですけど。『津軽海峡冬景色』を昔、カラオケで歌ったことがあるくらいで、演歌はこれから、練習します!

阿部 僕はミュージカルの舞台ってあまり見たことがないんです。松さんが出ているから『ラ・マンチャの男』を見に行ったことがあるくらいで。どうするんだろう? 発声とか、フツウの歌とは違いますものね。ちょっと調べておかなくちゃ。

 天才かもしれない上の息子が峯田和伸さんで、凡人の弟を黒崎煌代さんが演じるんですけど、このふたりのシーンがすごく良いんですよ。息子たちは良い子で、私たちがバカ親なんです。

阿部 本当にダメ。

 阿部さんは、俳優になるのをご両親に反対されたり、しなかったんですか?

阿部 何も言われないから始めたっていうか。自由に育てられました。こういうのやめろとか、言われたことないし、だから自分も(子どもたちに)あまり言わない。

 私も、誰にもやれと言われなくて、勝手にお芝居が好きになったんです。自分でやりたくて始めてしまったので、この舞台みたいに、過剰に期待されることもなく(笑)。

舞台の上の、“解き放たれた阿部さん”はすごいんです(松さん)

松たか子さん

――それにしてもこのふたり、ずいぶん前から映画やドラマで夫婦を演じることが多い。相性の良さはもちろんのこと、互いに俳優として、リスペクトしているのがよくわかる。

 映画でもドラマでも素敵ですけど、舞台の阿部さんは、本当にすごいんです。以前、『ふくすけ』という舞台でタイトルロールを演じる阿部さんを拝見したとき、ああ、男だったら絶対にこの役、演じたいなって。切なくて切なくて、衝撃でした。舞台の上ではまた、解き放たれた阿部さんになるんでしょうね。

阿部 松さんは声、ですよね。声の通り方、滑舌、表現力、もう、素晴らしい。以前、稽古場で、松さんの第一声を聴いただけで感動しちゃって、その日の稽古は終わりにしようって思ったくらいです(笑)。なにしろ本場のアカデミー賞で歌った人ですからね、それを忘れちゃいけない。

 いやいやいや、忘れていいです(笑)。

松たか子さん、阿部サダヲさん

――舞台上の法廷シーンは相手の不適切な行為の暴き合いになり、結局のところ……。

 奧さんのほうがいろいろ、港港に愛人がいたりして。

阿部 僕はどっちかっていうと、多様性のほうになっていく(笑)。

――と、ここから先は、舞台を見てのお楽しみ。

阿部 『しあわせな結婚』(’25年7~9月放送)というドラマは、いったん忘れていただいたほうがいいかと。

 そうですね。

阿部 あのドラマを見ていた人は、びっくりするね。

 そういうふうに人を裏切るのは、最高に気持ちいいですね(笑)

阿部 全然違うじゃん、て。

 だから言ったじゃん、と(笑)。

――大変そうな舞台なのに、ふたりはとっても、リラックス。脂の乗りきった役者がふたり、この芝居をフルに楽しもうとしている。

阿部 宮藤さんも僕も55才でおない歳なんですけど、なんかまだ若いっていうか。

 なんか20代って感じですよね。がちゃがちゃしてる(笑)。

阿部 昔だったら55にもなったら、もう大人のね、落ち着いた芝居をするのかと思っていたけど、そうはいかないぞって感じです。

 大変だけど、その分、楽しまなくちゃ。そう思ってます!

阿部サダヲ

阿部サダヲ

あべ さだを●’70年、千葉県生まれ。’92年より、『大人計画』に参加。パンクコントバンド『グループ魂』のヴォーカルとしても活動。12月26日にLINE CUBE SHIBUYAにてワンマンライブを開催。’26年1月4日、スペシャルドラマ『新年早々 不適切にもほどがある! ~真面目な話、しちゃダメですか?~』が放送予定。
松たか子

松たか子

まつ たかこ●’77年、東京都生まれ。’93年、歌舞伎座で初舞台を踏み、翌’94年にテレビドラマに初出演。’97年、歌手デビュー。ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫 』『しあわせな結婚』、映画『ラストレター』『ファーストキス 1ST KISS』など、数々の話題作に出演。

大パルコ人⑤オカタイロックオペラ『雨の傍聴席、おんなは裸足…』

大パルコ人⑤オカタイロックオペラ『雨の傍聴席、おんなは裸足…』
離婚を決意しているミュージカル俳優(阿部サダヲ)と演歌歌手(松たか子)の夫婦。二人は長男(峯田和伸)の親権を巡り、法廷で泥沼の争いを繰り広げる。子供に過度の期待をする両親の間で、その重圧を感じながら成長していく2人の息子たち。この家族の行く末とは……?作・演出:宮藤官九郎、出演:阿部サダヲ、松たか子、峯田和伸、三宅弘城、荒川良々、黒崎煌代、少路勇介、よーかいくん、中井千聖、宮藤官九郎、藤井隆。
11/6~30、PARCO劇場 問☎03・3477・5858(パルコステージ) ※大阪、仙台公演あり
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