織り表された浄土を目指して、西へ西へ。

織り表された浄土を目指して、西へ西へ。_1_1
織り表された浄土を目指して、西へ西へ。_1_2
えー、この夏の青春がやっと始まりました。
7月初旬に買ったきりの青春18きっぷ(しかも2枚10日分)の使い初めです。

向かったのは奈良国立博物館で開催中の、織や刺繍による希少な仏画を集めた特別展『糸のみほとけ』。会期は8/26までですので、ピンと来た方はどうぞ新幹線でお急ぎください。

会場では、目玉作品のひとつである『綴織當麻曼荼羅』を前に、くれぐれも×何とぞ×是非に×そこを何とか等々、欣求浄土の思いを4×4mの隅々まで行き渡らせるように、褪色にも部分の剥落にも負けず、ほとんど念写半分で鑑賞しました。
「何だ、よく見えないのか~」と思ってはいけません。最後の展示室に江戸時代の刺繍ver.がありますので、そちらをご覧になってからまた引き返せば、見えてくるものがあるというもの。とはいえ、画面上部はどうしたって見えにくいのですが、ちょっとあおるように描かれた極楽の建物は、未来都市みたい。ハイパーでサイケな感じが素敵です。


さて、『當麻曼荼羅』の中身について。
「絵解き法話」に使われるほど情報量が多いので、少し予習しておかれるとよろしいかと思います。とりあえず我が家のドアに貼ってあるポスターを参考に。南無阿弥陀仏。

まず、中央は阿弥陀三尊を核とした極楽浄土の情景であります。周囲のコマ割りは、左列(下から上の順)が「王舎城の悲劇」。手塚治虫の『ブッダ』にも出てくる、阿闍世の父王幽閉のお話です。右側(上から下の順)は、「もうやだこんな人生」と苦悩する母・韋提希に対して釈迦が説かれた、阿弥陀仏のおわす極楽を思い浮かべるための16の観想法のうち13の方法。

下段(右から左の順)は、「九品往生(くほんおうじょう)」という、極楽往生のあり方のいろいろ。現世での行動に応じて往生には9つのグレードがあるとされ、中央の絵の中にもその人たちが見られます(「品」の上中下と「生」の上中下で9通り)。一番上等な「上品上生(じょうぼんじょうしょう)」の人は、いちオーディエンスではなく阿弥陀仏や菩薩と同じステージ上! 最高にいい席にいます。実にうらやましい…。

東京の方は、「九品」と聞けば、東急大井町線沿線の九品仏浄真寺を思い出されるはずですが、あちらの九体阿弥陀もこの往生観に基づいたもの。また、品格の良し悪しをいう「上品」「下品」という言葉もここから来ているとする説もあります。

最後に、インスタグラムでクイズにしました、奈良の鹿はどんなふうに水を飲んでいるかについて。ガブガブ、ペロペロ、ピチャピチャ、チューチュー、ゾズズー、それとも……?

答えは、「……」です。写真のようにきちんと水量のあるところでは、無音と言っていいほど音も立てずに水を吸い上げて飲んでいます。これは馬も同じで、実にスマートかつエレガント。ヤギやラクダなど、顔が細長く首の長い草食動物全般に共通なのかなと想像しますが、少し下品な水飲みラクダをyoutubeで見かけてしまいました。親のしつけの問題か、音を立てた方が美味しい主義なのか、とにかく個体差はあるのかもしれません。

私もここまで下品に生きてきましたが、往生に関してはできれば「下品上生」、悪くとも浄土からのお迎えのあるギリギリのライン「下品中生」を目指しております。
(編集B)
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