本物の桜以上の高揚感! 京の春の風物詩“都をどり”を【「京都」桜にまつわる10の愉しみ】

今年67年ぶりに南座で上演される、京の春の風物詩「都をどり」は、本物の桜以上の高揚感と華やかさが! 第一回から「都をどり」に携わる京舞・井上流五世の井上八千代さんに、その歴史と魅力を語っていただきました。
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フィナーレは満開の桜の下。夢のような京の舞台

「都をどりは」「ヨーイヤサー」このかけ声とともに、肩には枝垂れ桜が咲き誇り、そろいの藍地のきものに、柳桜のうちわを持ち華やかに登場する芸舞妓たち。毎年4月に祇園甲部で開催される「都をどり」には、ほかのエンターテインメントにはない独特の魅力があり、京の春はここからと、毎年通う人も多い。いったん幕が上がると決して幕を下ろすことなく、1時間の公演の中で京都の四季、名所旧跡が走馬灯のように展開する、まさに夢の中にいるような舞台。

「出し物は、八景で構成されています。最初に置歌(おきうた)といって長唄で“今回の都をどりはこんなふうですよ”、とプロローグ的に全景を予告する場面から始まります。そこから春、夏、秋、冬と季節が変わって、最後は桜で終わるのが、ひとつのパターンになっています」 

今年の演目は、二景は恵美須神社の新春の福笹配り、三景は後白河上皇ゆかりの法住寺での白拍子の舞、四景は四条河原の出雲阿国、五景にはわらしべ長者の物語、六景は桂離宮の紅葉狩、七景は冬の祇園茶屋、そして最後は嵯峨野にある門跡寺院・大覚寺の桜が舞台となる。まるで京都の歴史、四季の名場面を旅しているかのよう。

「雨の日なら、“外では見られないけれど”という気持ちでしたり、以前訪れた景色を思い出しながら……など、さまざまな思いで見ていただいたらいいかな、と思います。長唄で音曲的に楽しむところもあれば、舞でしっとり魅せるところも。場面も座敷があったら次は屋外に、平安朝の次はぐっと時代の下ったものに、といった具合に“イキ”が変わるよう気をつけます。舞妓になったばかりの新人からベテランの芸妓さんの熟練した芸まで。扇や衣装、舞台装置など、常に美々しくありたいと作っております」

そもそもの始まりは明治5年。京都万博開催にあわせた余興として計画され、創始者のひとりが井上流三世八千代。その流れが今へと続く。

「もともと京舞はセリフもなくあまり派手でもない。どちらかというと単調なんです。女性ばかりでつないでまいりましたし、女性ならではのこまやかさのある、どちらかというとじっくりとした舞です。抽象的なものが多いですが、想像力を働かせて見るゆとりのあるもの。今回でいえば、第七景あたり。演目の中にひとりの女性の生き様であるとか、物語があり、命の手ざわりみたいなものを感じていただけたらと思います」
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毎年、祇園甲部の舞妓をモデルにした日本画で描かれる公演ポスター。祇園甲部歌舞練場が耐震工事のために一時休館になってから、過去2回は京都造形芸術大学の春秋座で、今年は新装になった南座で開催する。左は今年のポスター(画:堀泰明氏)
歌詞や舞はすべて、「都をどり」のために毎年新しく作られたもの。今年は南座にちなんで歌舞伎を意識した演目や、新天皇即位への祝賀をこめた演目構成になっている
三味線や唱、太鼓や笛などの鳴りものを奏でるのも芸舞妓たち。今年の芸裏の緞帳は、京都造形芸術大学の学生が制作したもの。衣装や扇は、毎年新調される
4月1日(月)~27日(土)
一日3回公演(1回目 12:30〜、2回目 14:30〜、3回目 16:30〜)南座 

京都市東山区四条通大和大路西入る中之町198 
一等(1階・2階指定席)¥5,500、二等(3階指定席)¥4,000 
問075・541・3391
教えてくれたのは…
井上流五世 人間国宝 井上八千代さん

’56年生まれ。3歳で井上流に入門、’77年に八坂女紅場学園の教師となり、以後「都をどり」「温習会」などの指導に当たる。’00年に五世・井上八千代を襲名。’15年には、重要無形文化財保持者に認定された。

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