「出し物は、八景で構成されています。最初に置歌(おきうた)といって長唄で“今回の都をどりはこんなふうですよ”、とプロローグ的に全景を予告する場面から始まります。そこから春、夏、秋、冬と季節が変わって、最後は桜で終わるのが、ひとつのパターンになっています」
今年の演目は、二景は恵美須神社の新春の福笹配り、三景は後白河上皇ゆかりの法住寺での白拍子の舞、四景は四条河原の出雲阿国、五景にはわらしべ長者の物語、六景は桂離宮の紅葉狩、七景は冬の祇園茶屋、そして最後は嵯峨野にある門跡寺院・大覚寺の桜が舞台となる。まるで京都の歴史、四季の名場面を旅しているかのよう。
「雨の日なら、“外では見られないけれど”という気持ちでしたり、以前訪れた景色を思い出しながら……など、さまざまな思いで見ていただいたらいいかな、と思います。長唄で音曲的に楽しむところもあれば、舞でしっとり魅せるところも。場面も座敷があったら次は屋外に、平安朝の次はぐっと時代の下ったものに、といった具合に“イキ”が変わるよう気をつけます。舞妓になったばかりの新人からベテランの芸妓さんの熟練した芸まで。扇や衣装、舞台装置など、常に美々しくありたいと作っております」
そもそもの始まりは明治5年。京都万博開催にあわせた余興として計画され、創始者のひとりが井上流三世八千代。その流れが今へと続く。
「もともと京舞はセリフもなくあまり派手でもない。どちらかというと単調なんです。女性ばかりでつないでまいりましたし、女性ならではのこまやかさのある、どちらかというとじっくりとした舞です。抽象的なものが多いですが、想像力を働かせて見るゆとりのあるもの。今回でいえば、第七景あたり。演目の中にひとりの女性の生き様であるとか、物語があり、命の手ざわりみたいなものを感じていただけたらと思います」