エクラ世代の「コレステロール値」を専門医が解説【アラフィーのコレステロール値】

更年期を迎えるとともに、急に高くなるコレステロール値。でも、慌てるべからず。アラフィー世代の正しいコレステロール値のとらえ方を、女性医療に詳しい天野恵子先生に教えていただきました。
お話をうかがったのは
静風荘病院特別顧問 天野惠子先生

静風荘病院特別顧問 天野惠子先生

同病院の女性内科・女性外来担当。性差医療研究の第一人者。著書は『女性の「コレステロール」「中性脂肪」はこうして落とす!』(PHP研究所)など。

女性ホルモンが減ると、悪玉コレステロールが増加

50歳を過ぎたころから女性に起こるのが、コレステロール値の急な上昇。すると“命にかかわる病気になるのでは……”と不安になってしまいがちだが、慌てる必要はないと話すのが、天野惠子先生。

「なぜなら、これは女性の自然な体の変化だからです。男性の場合は40〜50歳をピークに総コレステロール値が下がっていくのに対し、女性の場合は閉経後の50代から数値が急上昇して男性より高くなります(下グラフ参照)」

総コレステロールの年齢・男女比較(平成18年)

総コレステロールの年齢・男女比較
出典:天野惠子総合検診2013年40巻6号
その理由は、女性ホルモンの減少にあるとか。

「悪玉と呼ばれるLDLコレステロールは肝臓でつくられ、血中に放出されたリポタンパク“LDL”に含まれるコレステロールです。全身の組織や細胞は、主にこのLDLからコレステロールを取り込みます。女性ホルモンのエストロゲンは、肝臓から血中へのLDLの放出や、取り込みをつかさどるほか、LDLを肝臓に取り込むLDL受容体が減らないように保つ働きもあります。でも、閉経とともにエストロゲンが減るとLDL女性ホルモンが減ると、悪玉コレステロールが増加受容体が減り、LDLコレステロールが肝臓に取り込まれず血中にたまります。ですから女性は更年期以降にコレステロール値が急に高くなるのです」

つまり、コレステロール値のとらえ方は、男女で異なるということ。

「近年までの医療では、このような体の男女差が考慮されておらず、コレステロール値についても、日本動脈硬化学会が定める基準値は男女ともに、総コレステロール値が140〜199㎎/dL、LDLコレステロール値が60〜119㎎/dLで、この範囲を超えると脂質異常症と診断されていました。そのため更年期以降の女性の多くが脂質異常症と診断され、コレステロール値を下げる薬が投与されていました。しかしながら、男性は140㎎/dL以上の“高LDLコレステロール血症”だと心筋梗塞のリスクが1.5倍高まることがわかっていますが、女性はリスクの差が確認されておらず、心筋梗塞の危険因子とされていません。ですから更年期以降にコレステロール値が高くなっても、過剰に気にする必要はないのです」

男女別の新しい基準値の発表により正常の範囲が広がる

その後、’14年に日本人間ドック学会から男女別の基準値が発表され、こちらでは女性は年齢別の基準値も設けられ、全体的に基準値が高めの設定に。

「日本人間ドック学会の新基準だと、今まで脂質異常症と診断されていた人の多くが、正常の範囲内となり、薬を飲まなくてもよくなりました。ただ、どちらの学会の数値を適用するかは医療機関によって違い、診断結果や治療方針が異なってしまうという問題がありました。しかし、’17年に日本動脈硬化学会から、自分のコレステロール値や血圧などから、心筋梗塞などの冠動脈疾患にかかるリスクを割り出す方法が発表され、自分の病気のリスクをよりパーソナルに診断できるようになりました。この方法でチェックするのがおすすめです」

たとえ基準値を超えたとしても、コレステロール値は基本的に生活習慣によって改善が可能。次の記事で、コレステロールについてさらに詳しく解説するので、正しい知識をもって向き合って。

エストロゲンが減るとLDL受容体が減り、LDLコレステロールが増える

エストロゲンが減るとLDL受容体が減り、LDLコレステロールが増える
肝臓内でLDLコレステロールとくっつき、細胞に取り込む働きをするのがLDL受容体。肝臓にエストロゲンが作用しているとLDL受容体が増え、LDLコレステロールは細胞内に取り込まれる。しかしエストロゲンが減るとLDL受容体が減少し、LDLコレステロールが細胞に取り込まれず血液中にあふれ、コレステロール値が上昇。

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