健康寿命を縮める原因にも!?「50代の座りすぎ」対策法
自粛期間中の運動不足で体のあちこちに不調が出やすい時期。家での仕事や読書、DVD鑑賞など座っている時間がいつもに比べて長かったという人も多いのではないでしょうか。近年、座りすぎの状態が生活習慣病の発症リスクを高めることが明らかに。正しい知識を学んで、健康を取り戻しましょう!
教えてくれたのは……

早稲田大学 スポーツ科学学術院教授 岡浩一朗先生
専門は健康行動科学、行動疫学。運動不足の弊害およびその解消方法を研究テーマとする。欧米で盛んな「座りすぎ」による健康リスク研究の第一人者で、什器開発やオフィス環境のプロデュースでも活躍。著書に『長生きしたければ座りすぎをやめなさい』など。
①「座りすぎ」が体の不調を招く⁉
生活習慣病につながる座りっぱなしの生活
アラフィー世代には、移動中の列車の中でも、街での買い物途中でも、座れるものなら座りたいという人、意外に多いのでは? 「なぜ座りたいか? そこに椅子があるからよ」というのは、哲学ではなくてほとんど現代人の病。そんな「座りすぎ」こそが健康リスクを高めていると警鐘を鳴らすのが、岡浩一朗先生。「健康行動科学では、かつては運動不足の人にどれだけエクササイズをさせるか、どうやってモチベーションを高めるかといった、人をアクティブにする方向での研究が中心でした。しかし近年、運動以外の時間の多くを占める座りっぱなしの状態が、さまざまな健康リスクをもたらすということが明らかになっています」
私たちは座る生活、座位行動に慣れてしまっているけれど、その姿勢は人間にとってベストではない。
「皆さん、体は動かしていないのに、デスクワークで疲れたり、肩や腰が凝ったりしますよね。そもそも座位の姿勢は立っている状態よりも脊柱への負担が大きい。さらに、ほぼ直角に曲げた状態の股関節、脚の状態は、血流悪化を招き、代謝も低下させます。実際、座位行動の多い人は、そうでない人よりも糖尿病や心血管疾患の発症率が高いのです」
そんなに悪影響が? でも、立っているより楽だからと思って、つい長々と座ってしまっているかも。「ご自身が一日にどのくらいの時間座っているか、書き出してみましょう。座りすぎの度合いは人によって変わりますが、オーストラリアの45歳以上の男女を3年間追跡した研究で、一日に11時間以上座る人は、4時間未満の人よりも死亡リスクが4割も増すことが明らかになっています。長く座れば座るほど、寿命は縮むものと認識してください」
長時間座るのは、とても体に悪かった!
社会生活の基本は座る姿勢にあり、しかも続けて座る機会も少なくない。実は、そこにはいろんな健康リスクの落とし穴が……!?

あなたの「座りすぎ」度をCHECK!
何か作業するときも、たいてい座っているのが現代人。実際に書き出すことで、想像以上に長時間、座っていることがわかるはず。11時間以上になる人は要注意!

例えばAさんは…
活動時間の17時間半のうち、仕事がデスクワークなら7時間近くは確実に座位。
テレビ視聴や食事、仮に通勤が車なら、ほとんどは座り姿勢。14時間以上は座ってます!

運動の前に行うべきは、まず「座りすぎ」の対策
ここまでで、「私はわりとジムに行ってるから大丈夫」と思ったかた、残念。岡先生によれば、安心してはいけないとのこと。
「最初にも触れましたが、アクティブな活動と、座りすぎの問題は切り離してとらえてください。積極的に運動をしていても、習慣化した座りすぎによる健康リスクを相殺できるわけではない。まずは、長時間の座位行動をやめること。適度にブレイクを入れるようにしてください」
ちゃんとした運動でなくて、ブレイク程度でいいもの?「座りすぎの解消にはその程度でOK。左上のグラフのように、食後血糖値を下げるなどの効果は、ブレイク時の運動強度によって大きな差は生じません。座り続けるのをやめて、立って少し動く。まずはそれだけ。座りすぎを解消したうえで、運動を取り入れられれば最高です」
まず、“座りすぎず”、ありきだと。「はい。かつては立って行う低強度の活動がもっと身近にありました。しかし、今は家電や照明の操作は手元のリモコン、電話を別の部屋までとりにいくことはなく、連絡も携帯電話やメールですみます。ふき掃除もできるロボットが登場する時代なので、立って動く機会を意識的につくる必要があります。そのひと手間を習慣化していただければ、座りすぎの問題は解消可能。それによって、かえって集中力が高まり、作業効率が上がるメリットも期待できますよ」
平日の座りすぎが週末のジム通いを相殺!?
誰しも「運動しなくちゃ」という意識はあるはず。でも、多忙のあまり、週末に集中して運動し、平日はだらりという人もけっこう多いのでは?アメリカでは、運動もするけれどそれ以外はほとんど座っている人を「アクティブカウチポテト」と呼ぶのだそう。「このタイプの人を追跡調査した研究で、座りすぎによるマイナスは運動によって相殺できないことが明らかになっています。運動効果を得るには、座りすぎ解消が必須です」。

日中は座りっぱなしのデスクワーク→疲れて帰宅→疲れているからだらりと座る、という悪循環が、一番怖い状態

週末にジムで汗を流すのは、もはや一般化した生活スタイル。しかし、この運動が座りすぎをチャラにしてくれるわけではない
実は、立って動くだけでも健康への影響は大!
座りすぎによる健康リスクを減らすには、まず立って活動する時間をはさむこと。「それだけでも食後血糖値低下への影響は大。さらに中性脂肪を減らすには運動を」。

A:一日7時間ずっと座る
B:2時間座ったあとの5時間は、20分ごとに2分ずつ立って、ゆっくり歩くなどの低強度活動でブレイクを入れる
C:Bのブレイクを通常歩行以上の速度で歩くなどの中高強度活動にする
BとCで糖尿病にかかわる数値の改善に、大きな差はなし!
(Dunstann et al. Diabetes Care, 2012より)
健康寿命を延ばすには?
1. 座りすぎない生活を送る
→社会生活はどうしても座位が基本。こまめに姿勢を変える意識をもって。
2.今より10分程度、歩いたり体を動かす時間を増やす
→1を心がけたうえで、適切な運動量を確保。通勤に取り入れるなど、継続できる工夫を。
②「座りすぎ」の気になるアレコレ
電車で席が空いていると数分でも座ってしまう、立ち話が始まるとすぐ座る場所を探す……それって私?と思った方は要注意。座りすぎ以外に気になる日頃のアレコレが及ぼす体の影響をお教えします。
Q.座るのと寝転がるのは、同じくらいダメなの?
A.寝転がるよりは座りましょう。

実証研究がされていないので推測でしかいえませんが、リハビリが「寝たきり→座る→立つ→歩く」と進むことを考えると、寝そべるほうが明らかに体は弛緩しています。「寝転がりすぎ」は「座りすぎ」よりも危険と考えてください。
Q.座ると必ず貧乏ゆすりを始める夫。健康的には、いいの?
A.おすすめはしませんが、しないよりはよいと思われます。

ストレスなどの心理的欲求から貧乏ゆすりをするケースが多いですが、筋肉に刺激を与えていることは確か。脚を動かさず、ずっと座っているよりよいでしょう。しかし、お行儀の問題があるので、もっと穏やかな方法をP.209でお教えします。
Q.立っているほうが冷えそうなんですけど…。
A.大事なのは、同じ姿勢を長時間とり続けないこと。

座りすぎが悪い一方で、立ちっぱなしにも相応の問題があります。立つほうが血流改善などにメリットがありますが、肝心なのは同じ姿勢をとり続けないこと。座る→立つ+少し動くという一連のアクションが健康に有益と覚えてください。
③「座りすぎ」を解消する日常生活の心がけ
“座りすぎ”に陥りやすいのは、生活が便利になったことの裏返し。座りすぎを解消する日常生活の心がけを7つをご紹介。
【鉄則1】長時間座る際は、30分おき(または1時間おき)にブレイクを入れる

簡単なようだが、座ることに慣れた身には、意外にむずかしい。まずは、自身の生活環境で、立つきっかけにできることをリストアップ。最低でも1時間おきくらいに実行しよう。あまりにも忘れてしまうなら、タイマーを利用するのも手。Apple Watchのアクティビティ機能の「スタンド」は、50分おきに立つことを促してくれる。
座る・立つを取り入れるアイデア

モノの配置は少し不便なくらいが◎
危険なのは、ソファに座ったまますべてがまかなえる状態。よく使うものほど、少し不便なくらいの位置に。

家電はできるだけ本体操作を心がけて
細かい操作はリモコン頼みの時代だが、立ち上がる回数を増やすなら、昔のように本体での操作を取り入れて。

見ているテレビ番組がCMに入ったら立つ
テレビの前に座る時間が長い人向き。録画視聴派も、「飛ばす!」のではなく、立ち上がる機会として有効活用を。

ブレイクの相棒として犬を飼う
家で過ごす時間が長く、座りがちな人におすすめ。かわいいワンコは、立つ、歩くのモチベーションとしては最強クラス。

ひとつ違う階のお手洗いを利用する
どうせ立つ機会なら、少し負荷を多めに。脚をしっかり使う、階段の上り下りが入るのがミソ。観劇の休憩などでも有効。

かかってきた電話を受けるときは必ず立つ
長時間の座りっぱなし解消のきっかけとして取り入れやすい。在席かどうかや、行動予定表の確認もしやすくなるかも。

岡先生は、どうしてますか?
聞いてみると、「実は通勤中、座れれば座ってます」と驚きの答えが。「駅から大学まではちょっと遠いのですが、そこは歩いています。出勤後は立っている時間が多いですね。研究室もスタンディングデスクを導入しています」。電車内は“ひとりの時間”として有効活用し、集中して論文や本などを読む時間にあてているそう。要は、電車なら必ず立つというのではなく、個々の生活に合わせてメリハリをつけることが大事なのだ。
【鉄則2】血流を支える、下肢を鍛える!
座り続けることで弱りやすいのは、当然、脚。長時間、筋肉を使わないことで、血流が悪くなるのを防げば、座りすぎによる健康リスクも大きく減少する。鍛えどころは、人間の体で最大といわれる太ももの筋肉と、血を押し返すポンプの役割をするふくらはぎ。立てないときのお助け簡易版もあるので、忘れずにトライ!

太もも
歩行だけでなく、姿勢維持にも重要な筋肉群。 必要なのは瞬発力ではなく、ゆっくり膝を曲げ伸ばしする筋力。適度に刺激して、血流改善を。それにより代謝アップも見込める。
ふくらはぎ
直立二足歩行を行う人間に特有の筋肉。脚まで送られてきた血液を心臓に送り返す役割があり、「第2の心臓」ともいわれる。適度に動かして、筋力とその機能を維持したい。
「かかと上げ運動」

❶まっすぐ立って、背伸びをするようにかかとをそろえてゆっくり上げる。1・2・3・4カウントで2秒かけるスピード(以下、2秒4カウント)で。
❷同じく2秒4カウントで、かかとをゆっくり下ろす。これを5回以上行う。
「スロースクワット」

❶まっすぐ立った姿勢から、2秒4カウントでゆっくり膝を曲げ、軽くしゃがんだ格好になる。膝がつま先より前に出ないように。
❷同じく2秒4カウントでゆっくり膝を伸ばしながら、もとの姿勢に戻る。これを5回以上繰り返す。
座ったままでも「こそトレ」!
会議や長時間の移動など、脚を動かしにくいときにも気軽にできる脚の筋力トレーニング。これだけです!

脚の血流改善に!女性もやりやすい「座ったままかかと上げ」
❶椅子に座った状態で脚をそろえ、手は太ももの上に。つま先に体重をかけながら、2秒4カウントで、ゆっくりとかかとを上げる。
❷上げた状態から、同じく2秒4カウントでかかとをゆっくりと床に下ろす。5回以上行う。

座りすぎの太ももに刺激を。「片足上げ運動」
❶片方の脚を伸ばした状態で、2秒4カウントでゆっくりと持ち上げる。このとき、つま先を垂直に起こすことによって太ももが鍛えられる。
❷上げた状態から、同じく2秒4カウントでゆっくりと下ろす。左右交互に5回以上行う。
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